はじめに|画像診断と痛みの関係
整形外科や医療機関では、痛みの原因を調べるためにMRIやレントゲンなどの画像検査が行われることがあります。
椎間板ヘルニア、椎間板膨隆、脊柱管狭窄、半月板損傷、腱板断裂などの構造変化が見つかると、それが症状の原因として説明されることが少なくありません。
しかし近年の研究では、これらの画像所見は無症状の人にも多く存在することが報告されています。
そのため画像検査の結果だけで痛みの原因を判断することには注意が必要です。
本記事では、画像所見と痛みの関係について研究を整理し、臨床的な理解をまとめます。
無症状でも見つかる構造異常|椎間板ヘルニア・半月板損傷などの画像所見
画像研究では、症状がない人にも構造変化が存在することが確認されています。
例えば椎間板変性や椎間板ヘルニア、半月板損傷、腱板断裂などは、無症状の人でも一定の頻度で見つかります。
この事実は、画像で確認された構造変化がそのまま痛みの原因であるとは限らない可能性を示しています。
臨床では画像所見が強調されることが多いですが、研究結果を見ると構造変化と症状の関係は必ずしも単純ではありません。
構造モデルの限界|構造異常は必ずしも痛みの原因ではない
従来の整形外科モデルでは、身体の構造変化が痛みの原因であるという考え方が広く用いられてきました。
この考え方では
構造異常 → 痛み
という因果関係が想定されます。
しかし臨床研究では、構造異常が存在しても痛みがない場合や、明確な構造異常が確認できないにもかかわらず痛みが生じる場合が報告されています。
このような結果は、痛みが単純な組織損傷だけで説明できる現象ではない可能性を示しています。
例えば
- 頸椎椎間板の変性
- 頸椎アライメントの変化
- ストレートネック
- 肩回旋筋腱板断裂
- 肩鎖関節の変形性関節症
- 肩峰下骨棘
- 肩関節唇損傷
- 腰椎椎間板変性
- 脊柱管狭窄症
- すべり症
- 股関節唇損傷
- 変形性股関節症
- 半月板損傷
- 変形性膝関節症
などは、加齢に伴う変性として広く認められる所見です。
したがって、重度の変性を除けば「構造の変性=疼痛」とは限らないと考えられます。
さらに近年の研究では、構造異常を過度に強調する説明が患者の認知や行動に影響する可能性も指摘されています。
ある研究では次のように述べられています。
「構造的な弱さ、異常、不安定さなど、根拠のない病理解剖学的説明モデルは、症状の可逆性に対する人の認識を損ない、動きに関する恐怖を助長する可能性がある。」
さらに研究者は次のように指摘しています。
「否定的な信念を明示的にまたは暗黙的に強化しないようにすることは、現代の臨床診療の課題であり義務でもある。」
Changing the Narrative in Diagnosis and Management of Pain in the Sacroiliac Joint Area
この研究は、痛みを説明する際に構造異常だけを強調することが、患者の認知や行動に影響する可能性があることを示しています。
神経科学からみた痛み|ペインサイエンスと神経系の情報処理
近年のペインサイエンスでは、痛みは単純な組織損傷の信号ではなく、神経系によって生成される体験と理解されています。
痛みの形成には
- 末梢神経入力
- 中枢神経の情報処理
- 情動
- 認知
など複数の要素が関与します。
そのため、身体構造の変化だけで痛みを説明することには限界があります。
画像所見と症状が一致しないケースが存在する理由の一つは、この神経科学的メカニズムによって説明されます。
画画像所見と痛みの研究|MRIや画像診断と症状の関係
画像所見と痛みの関係については、MRIなどの画像診断を用いた研究が身体のさまざまな部位で行われています。
特に議論されているのは、肩、膝、脊椎などの運動器領域です。
これらの研究では、画像で確認される構造変化と実際の症状が必ずしも一致しない可能性が示されています。
このような結果は、構造変化だけでは痛みを十分に説明できない可能性を示しています。
部位別研究|画像所見と痛み(首・肩・股関節・膝・脊椎)
画像所見と痛みの関係は、身体の各部位で研究されています。
以下の記事では、部位ごとの研究結果を整理しています。
首
肩
股関節
膝
脊椎
結論|MRIや画像所見だけでは痛みの原因は判断できない
画像検査は、身体構造を理解するための重要な情報を提供します。
しかし近年の研究では、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄などの画像所見があっても症状のない人が存在することや、画像所見と症状が一致しないケースが少なくないことが報告されています。
このことは、構造異常だけで痛みを説明することには限界がある可能性を示しています。
痛みの理解には、身体構造だけでなく、末梢神経の状態と入力、そして中枢神経での情報処理を含めた視点が重要になります。
したがって、MRIやレントゲンで確認される画像所見は臨床情報の一部であり、痛みの原因を単独で決定するものではありません。
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