脊柱MRIの異常は腰痛の原因なのか|無症状研究とシステマティックレビュー

画像初見と痛み
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脊柱の画像異常は痛みの原因なのか

腰痛や頚部痛の臨床では、MRIやCTなどの画像検査が原因特定の根拠として用いられることがあります。

椎間板膨隆、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄、椎間関節変性などの所見は、痛みの原因として説明されることが少なくありません。

しかし近年の研究では、脊柱の画像異常は無症状の人にも非常に多く存在することが報告されています。

本記事では、腰痛や頚部痛の臨床で議論されることの多い脊柱画像所見について、代表的な研究をもとに検討します。

無症状者でも脊柱画像所見は広くみられる

加齢変化としての脊柱変性をみた研究

まず重要なのは、脊柱の変性所見が症状の有無とは別に、年齢とともに増えていく一般的な変化として観察されることです。

このシステマティックレビューでは、無症状の成人3,110人を対象に腰椎画像所見が検討され、椎間板変性、膨隆、突出などが年齢とともに増加することが示されました。

具体的には、椎間板変性は無症状の20歳代でも約37%、40歳代で約68%、60歳代で約88%に認められていました。

この結果からは、脊柱の画像変化はそれだけで病的異常を意味するのではなく、年齢とともにみられる一般的な所見として理解する必要があります。

「脊椎変性の画像所見は無症状の割合が高く、年齢とともに増加する。このような画像による所見は一般的で通常のことであり、加齢に関係しているものであると結論付けた。」

Systematic Literature Review of Imaging Features of Spinal Degeneration in Asymptomatic Populations.

Brinjikji, et al.

頚椎MRIでの無症状所見をみた研究

別の研究では、無症状の1,211人を対象に頚椎MRIが分析され、椎間板膨隆の頻度や脊髄圧迫の出現率が調べられました。

その結果、椎間板膨隆は全体で約88%にみられ、20歳代でも男性約73%、女性約78%に認められていました。

一方で、脊髄圧迫は約5%、信号変化は約2%で、これらは主に50歳以降で増加していました。

つまり、軽度の膨隆そのものは無症状でもきわめて一般的であり、MRIで膨隆が見つかったという事実だけで症状の原因と判断することはできません。

「結論: 20代を含む無症状の被験者では、椎間板の膨隆が頻繁に観察された。軽度の椎間板膨隆を有する患者の数は、20歳から50歳に増加した。

対照的に、脊髄圧迫の頻度および信号強度の増加は50歳以降に増加し、椎間板の膨隆の重症度の増加を伴った。」

Abnormal findings on magnetic resonance images of the cervical spines in 1211 asymptomatic subjects.

Nakashima, et al.

腰椎MRIでの膨隆・突出をみた研究

また別の研究では、腰痛のない98人に腰椎MRIを行い、椎間板の膨隆や突出がどの程度みられるかが検討されました。

その結果、少なくとも1レベルで膨隆をもつ人は約52%、突出は約27%、脱出は約1%でした。

さらに、1つ以上の椎間板異常は約38%に認められ、膨隆の頻度は年齢とともに増加していました。

少なくとも、腰痛のない人にも膨隆や突出は珍しくなく、腰痛患者で同じ所見が見つかったとしても、それだけで原因と決めることはできません。

「腰椎のMRI検査では、腰痛のない多くの人々は、椎間板の膨隆または突出を有するが、脱出はない。

これらの知見と腰痛の罹患率が高いことを考えると、腰痛のある人の膨隆または突起のMRIによる発見はしばしば偶然である。」

Magnetic resonance imaging of the lumbar spine in people without back pain.

Jensen, et al.

高齢の無症状者を対象にした研究

高齢者ではどうかをみた研究でも、同じ傾向が示されています。

腰痛未経験で無症状の67人にMRIを行った研究では、60歳以上の群で髄核ヘルニアが約36%、脊柱管狭窄が約21%に認められ、あわせて約57%に何らかの異常が確認されました。

この結果は、高齢者で画像異常が見つかっても、それだけで今ある痛みの原因を説明できるわけではないことを示しています。

「MRI画像上の異常は手術が計画される前に、年齢、あらゆる臨床的徴候、症状が厳密に相関しなければならないと結論した。」

Abnormal magnetic-resonance scans of the lumbar spine in asymptomatic subjects. A prospective investigation.

Boden, et al.

椎間板以外の異常も無症状でみられる研究

さらに同じ無症状者98人の腰仙椎MRIでは、椎間板だけでなく、線維輪欠損、椎間関節症、脊椎分離症、脊椎すべり症、脊柱管狭窄、神経孔狭窄なども確認されました。

具体的には、線維輪欠損は約14%、椎間関節症は約8%、分離症・すべり症・脊柱管狭窄・神経孔狭窄はいずれも約7%で、全レベルの椎間板が正常だったのは約36%でした。

つまり、脊柱にはさまざまな構造変化が症状なしに存在しうるため、画像所見をみつけたこと自体と、痛みの原因を特定したことは同じではありません。

「これらの知見と腰痛の罹患率が高いことを考えると、腰痛患者の膨隆や突出のMRIによる発見はしばしば偶然である。」

Magnetic resonance imaging of the lumbar spine in people without back pain.

Jensen, et al.

画像所見の強さと症状の強さは一致しない

脊柱管狭窄と症状を比較した研究

画像所見が症状と一致するとは限らないことは、狭窄を対象にした研究でも示されています。

腰痛のある人、狭窄が疑われる人、無症状の人を含む150人を比較した研究では、MRIでみられる狭窄の程度と症状の重症度の間に明確な関係は認められませんでした。

また、画像所見は手術成績とも明確には関連していませんでした。

この結果からは、構造的な狭窄の存在だけでは、今ある痛みやしびれ、生活上の困難さを十分に説明できないことが分かります。

「MRIスキャンから得られた印象は、腰椎狭窄が痛みの原因であるかどうかを決められるものではない。

症状の重症度、画像、狭窄の程度との間に明確な関係は存在しない。外科手術の結果は画像の結果とは明らかに関連していない。MRIは脊柱管狭窄がある人に対して腰痛があるか全く症状がないかを区別できない。」

Spinal stenosis, back pain, or no symptoms at all? A masked study comparing radiologic and electrodiagnostic diagnoses to the clinical impression.

Haig, et al.

特定の所見が痛みを直接説明するとは限らない

アスリートの腰椎MRIをみた研究

身体機能が高く、症状のない集団でも画像異常は確認されます。

無症状の青年エリートテニス選手33人を対象にした腰椎MRI研究では、33人中28人に椎間関節変性、滑膜嚢胞、椎間板変性、椎間板ヘルニア、腰椎分離症など、少なくとも1つの異常がみられました。

つまり、競技レベルが高く症状のない若年者でも、画像上の異常は珍しくありません。

「33人中28人は椎間関節変性、滑膜嚢胞、椎間板変性、椎間板ヘルニア、腰椎分離症など少なくとも1つの異常が見られた。」

MRI findings in the lumbar spines of asymptomatic, adolescent, elite tennis players.

Rajeswaran, et al.

脊椎分離症・すべり症と腰痛の関連をみた研究

また、脊椎分離症や脊椎分離すべり症のように、臨床で原因として説明されやすい所見についても慎重な検討が必要です。

観察研究をまとめたシステマティックレビューでは、一般成人集団において、これらの所見と腰痛との間に強い、あるいは一貫した関連は確認されませんでした。

少なくとも、分離症やすべり症が存在するという理由だけで、腰痛の原因が特定できたとはいえません。

「一般的な成人集団の疫学研究において、脊椎分離症/脊椎分離すべり症と腰痛との間には、因果関係の仮説を支持するような強いあるいは一貫した関連性はない。

脊椎分離症/脊椎分離すべり症が腰痛と同時に存在する可能性があり、観察された手術やその他治療法の影響は主に害のない自然経過と非特異的な治療効果によるものである。」

Systematic review of observational studies reveals no association between low back pain and lumbar spondylolysis with or without isthmic spondylolisthesis.

Ravindra, et al.

結論|脊柱画像と痛みの関係

ここまでの研究から、脊柱の画像異常は無症状の人にも非常に多く存在し、年齢とともに増加することが分かります。

また、画像所見の有無や強さと、症状の重症度が明確に一致しない場合も少なくありません。

したがって、MRIやCTで異常が見つかったとしても、それだけで今ある痛みの原因が特定されたとはいえません。

臨床では画像所見だけで判断するのではなく、症状の分布、神経学的所見、生活背景、末梢神経の状態と入力、さらに中枢神経の情報処理まで含めて評価する視点が重要です。


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