筋肉の悪循環仮説は最新のサイエンスから否定されている。

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筋肉の悪循環仮説は
最新のサイエンスから否定?

有名な「痛みの悪循環」という仮説があります。

おそらくほとんどの方が聞いたことがあるかと思います。

持続的な筋緊張または収縮によって誘発された虚血は、代謝産物の蓄積をもたらし、侵害受容器を刺激するという「悪循環」を引き起こし、さらに筋肉痛と筋緊張を悪化させ、慢性的な筋の痛みを生じさせると言われています。

筋の反射活性化の結果として起こるという説もあります。

しかし、本当でしょうか?

下記の論文や研究を見ていくと常識は非常識ということが分かります。

目次

◆論文1

この論文では、持続的な筋骨格痛は主動筋の筋緊張を増加させず、逆に減少させると言っています。

また、指圧や強い刺激のアプローチによって、痛み刺激を与えることで筋が緩むという理論を説明できるとしています。

「ヒトの筋痛誘発の最近の研究では、紡錘運動駆動と紡錘体放電の反射的な増加の証拠を提供していなかった。

実際、持続的な筋骨格痛は、主動筋の筋緊張低下と関連している。

つまり、指圧や痛みを誘発する他の刺激は、刺激された筋肉の緊張を低下させるだろう。

A critical evaluation of the trigger point phenomenon John L. Quintner, Geoffrey M. Bove and Milton L. Cohen

 

◆研究2

筋の痛みで主動筋の活動が減少し、拮抗筋はわずかに上昇する。

また、慢性的な筋骨格痛における機能障害は原因ではなく結果であるとの結論がでています。

痛みで動きが変化する原因として、逃避反射の特徴である屈筋の活性化と伸筋の抑制が起こることが示されています。

そこから体幹筋の低下は、痛みの原因ではなく、これも結果だと言われています。

そして悪循環仮説や似たような仮説は否定されています。

あと筋組織以外の組織、関節などからの侵害受容刺激が筋の侵害刺激と同じような反応が起こりうることを示唆しています。

「…これらの条件では、筋自体から生じていなくても、主動筋の活動が痛みによってしばしば減少することが明らかであるように思われる。

一方、痛みは拮抗筋の活性レベルをわずかに上昇させる。

これらの変化の結果として、力の発生と患部の動きの範囲や速度が低下することが多い。

いくつかのタイプの慢性的な筋骨格性疼痛に特徴的な「機能障害」は、正常な保護適応であり、痛みの原因ではないことを示唆している。

痛みは姿勢活動にほとんど変化を与えないが、主動筋の筋出力を低下させ、拮抗筋の共収縮レベルを高めることでパフォーマンスを変化させるというエビデンスを提示する。

これらの変化は、いくつかの慢性疼痛状態で起こり、それらは保護的適応であり、分節介在ニューロンへの疼痛作用によって説明できると考えている。

筋肉の痛みが局所的な姿勢の亢進によるものであれば、痛みのある側の筋肉は、対側の筋肉よりも安静時の筋電図活性が高いはずですが、そうではありません。

それらは、初期の筋機能のレベルとその後の慢性腰痛の発症との間には関連性がないことを発見し、体幹の筋力低下は、慢性腰痛の原因ではなく、むしろその結果であるという結論を導き出した。

我々は、一般的に慢性疼痛が主動筋で作用すると筋出力が低下し、拮抗筋の出力は増加すると結論付けた。

慢性的な筋肉の痛み状態で起こる運動出力の変化についての記述を検討した我々の結果は、「悪循環」モデルと、痛みと亢進がお互いを強化し合うという原理に基づく、他の類似したモデルは間違っていると確信した。

痛みによって筋肉が緊張性亢進になることは無いという証拠がある。

それらを強制的に収縮させる能力は、痛みによって増加するのではなく、減少する。

慢性疼痛の存在下で、筋電図活動が通常よりも高く見える唯一の状況は、筋肉が拮抗筋として作用するときに発生する。

痛みの原因としての亢進の支持者は、この発見を悪循環仮説の証拠としてとらえるかもしれないが、これは動きの範囲と速度を制限し、おそらくさらなる損傷と痛みを軽減する有用な反射的適応であると主張する。

我々が提案するモデルは、関節、歯、非筋組織から生じる痛みが、筋肉の痛みと同じような機能障害の兆候を引き起こすことがある理由を説明するものである。

なぜなら介在ニューロンが異なる組織から収斂した興奮性入力を受けるためである。

The pain-adaptation model: a discussion of the relationship between chronic musculoskeletal pain and motor activity
JAMES P.LUND AND REVERS DONGA

 

◆研究3

筋が痛いときに筋紡錘からの入力信号は増加せず、痛みのレベルとの相関性もない。また筋な痛みだと放電率が減り、皮膚の痛みだと変わらなかったという結論です。この研究も痛みの悪循環説を否定しています。

「筋肉の痛みの間、求心性神経は放電活動を増加させなかった。

平均して、筋肉の痛みでは全体の放電率は6.1%減少したが、皮膚の痛みでは実質的に変わらなかった。

主観的な痛みのレベルと、筋紡錘の放電率の小さな変化との間には検出可能な相関関係はなかった。

我々は「悪循環」仮説に反して、筋肉または皮膚侵害受容器の急性的な活性化は、人間の紡錘運動駆動の反射増加を引き起こさないと結論付ける。

The effects of experimental muscle and skin pain on the static stretch sensitivity of human muscle spindles in relaxed leg muscles

Ingvars Birznieks, Alexander R. Burton and Vaughan G. Macefield

 

◆研究4

この研究でも痛みで筋紡錘の活動が増加し、痛みの原因になっているという悪循環説を否定しています。

…侵害受容器による紡錘運動駆動の増加が、筋肉痛と慢性筋肉痛の発症に関与しているという概念を支持するものではない。

Tonic muscle pain does not increase fusimotor drive to human leg muscles: implications for chronic muscle pain

Azharuddin Fazalbhoy, Vaughan G. Macefield and Ingvars Birznieks

 

◆結論

これらのことから、筋の悪循環説は否定されています。

筋肉に痛みがあると、主動筋は収縮ではなく弛緩します。そして拮抗筋が少し収縮します。皮膚の場合はそこまで大きな筋の反応はないようです。

もちろん単純に主動筋と拮抗筋だけの関係にはならないとは思いますが、考慮すべき大切な事柄だと思います。

また、これは逃避反射から考えることもできます。しかし逃避反射は屈筋だけとは限らず、伸筋が収縮する場合もある複雑な多シナプス性反射です。

硬くて痛い場合もあれば、硬くなくて痛い場合もある、また硬くて痛くない場合もあるという現実における説明として有用性が高い実験だと思います。

そして1番重要なこと。

当たり前に言われてきた、痛みの悪循環仮説は、間違った説だということは言えるでしょう。

強いマッサージや太い鍼による鎮痛はDNICから説明できますが、そのときに起こる筋の弛緩も、これらの論文から説明できます。

つまり、痛みを与えるマッサージや指圧などの徒手や痛い鍼で、筋が一時的に弛緩する機序がここにあります。

筋に痛みを与えるので、そこの筋が一時的に弛緩する。またDNICによる下行性疼痛抑制調節でさらに全身の筋が一時的に弛緩する。

しかし、逃避反射は侵害受容刺激で余計に起こるので、少し経ち徒手の効果がなくなると、筋が余計複雑に緊張する可能性もあります。

また中枢性感作や末梢性感作にもつながり、クライアントの警戒状態が増えて慢性化する可能性があります。

とある著名な理学療法士の先生がおっしゃっていましたが、

「痛みを与える治療は二流である」

という言葉を思い出しました。

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