トリガーポイントは67年前の理論であり末梢神経の二次痛覚過敏によるもの

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トリガーポイントは67年前の理論であり、末梢神経の二次痛覚過敏によるもの。

トリガーポイント(TrP)理論は、Travell医師が1952年に生みだした、67年前の理論です。 トリガーポイントに起因されるという、筋筋膜性疼痛症候群/MPS(myofascial pain syndrome)も同じ著者らによって発表された概念です。

トリガーポイントとは、圧痛点(×印)を押すと、予測出来る領域(赤いエリア)に痛みが広がるという現象のことです。基本的には筋肉が原因とされています。 このトリガーポイント現象は、明確な根拠となる研究はありません。

しかし、最近の研究では、末梢神経由来の二次性痛覚過敏の領域として理解できる、解剖学的および生理学的根拠があると示唆されています。

末梢神経には、神経由来の侵害受容性C線維である「神経の神経/神経幹神経」が分布しています。

末梢神経が絞扼されたり圧迫されると、この自由神経終末が感作して痛みを感じます。 この神経幹痛は、トリガーポイントの圧痛点の痛みの種類と共通していますし、末梢神経のコースとも重なるエリアです。

また、他にも中枢性の感作や、同じ脊髄分節による反射性の筋攣縮もトリガーポイントと同じ現象を起こします。

 

◆論文1

「末梢神経障害を有する患者には、単独でまたは組み合わせて存在する2種類の疼痛、「神経幹痛」および「異常感覚痛」が記載されている。

前者の痛みは、疼くような、ナイフのような、圧痛と表現されているのに対し、後者は灼熱感、チクチクする、焼けるような、蟻走感、引っ張られるような、または電気のような痛みと表現されている。

したがって、神経幹痛は筋筋膜痛として説明される痛みと区別がつかない。 神経管の痛みは、神経鞘内の機械的または化学的に感作された侵害受容器の活動の増加に起因しているが、一方、感覚異常痛は侵害受容求心性神経の軸索自体の損傷に起因している。」

「…しかし、神経由来の痛みがひどいとき、それは特定の神経の感覚分布の外側領域で感じられることがあります。」

「肩帯領域のMPSは、TrPの関連痛領域がこれらの神経のコースに従うので、肩甲上神経、長胸神経、腋窩神経、肩甲背神経の絞扼を表している可能性がある。 下肢では、坐骨神経、脛骨神経、浅腓骨神経、深腓骨神経に近いTrPに起因するとされています。」

「この痛覚過敏は、逆行性の活性化、侵害受容求心性神経の感作などの末梢のメカニズムによるもの、またはおそらく自発発火と侵害受容後角ニューロンの受容野の拡大を含む中枢性感作の状態によるものであり得る。」

「TrPを含む筋肉に描かれた索状硬結は、同じ脊髄分節によって神経支配された構造における、侵害受容に続いて起こる反射性スパズムを表す可能性があります。」

A critical evaluation of the trigger point phenomenon John L. Quintner Geoffrey M. Bove Milton L. Cohen

次の研究も、末梢神経の二次的な過敏状態は、遠くの領域にも広がることを示しています。

◆論文2

「二次痛覚過敏の最も顕著な特徴の1つは、接触誘発性疼痛、すなわち、元の損傷に隣接または遠隔の領域に適用される動的触覚刺激によって引き起こされる痛みである。」

「この感覚変化の神経生物学的メカニズムは、中枢神経系(CNS)に関与しているため、二次痛覚過敏の領域からの低閾値の機械受容体における信号は、接触の代わりに痛みを伴う感覚を引き起こし得る。」

Secondary hyperalgesia and presynaptic inhibition: an update. Cervero F, et al. Eur J Pain. 2003.

神経の神経の活性化は、筋肉に痛みがあるように感じられることがあり、神経の炎症は同じ軸索の深い神経にも影響を及ぼす事を示しています。その遠い部位の痛みは脳の受容野の拡大によることもあり、原因は広がった痛みエリアではないというトリガーポイント理論と同じ現象も起こっています。

◆ロリマーモズリーの意見

「神経鞘内に枝分かれし、他の深部組織に広がる複数の受容野を持つ侵害受容器の存在を確認した。(神経の神経)」

「この知見の意味は、神経鞘などの1つの構造における受容体における活性が、筋肉のような別の部位で知覚され得ることである。」

「神経の炎症が深い構造の侵害受容器であるこれらの同じ軸索に深刻な影響を及ぼすことを示した。これらの影響には、進行中の活性化および異常な機械的感受性が含まれる。」

「この知見の意味は、この活性が、深い構造の侵害受容器のためにマッピングされた受容野領域の脳によって知覚されることであり、問​​題の領域では認識されないことである。」

http://www.bodyinmind.org/trigger-point-evaluation/ Posted by Lorimer Moseley

次の研究は専門家による圧痛点の検査を調べたものです。結果、潜在的なトリガーポイントはまれであり、トリガーポイントも18%の患者にしか見つからなかった。さらに索上硬結や筋攣縮は一般の健康な人にも見つかりました。

◆論文3

「4人の筋筋膜痛症候群の専門家がトリガーポイント検査を行い、そして4人の線維筋痛症の専門家が3グループの被験者(7人の線維筋痛症患者、8人の筋筋膜痛症候群患者、8人の健康な人)について圧痛点検査を行った。」

「線維筋痛症および筋筋膜痛症候群を有する患者の検査の約18%において活性化しているトリガーポイントが見出されたが、潜在的なトリガーポイントはすべての群においてまれであった。」

「索上硬結および筋攣縮は一般的(それぞれ50および30%)であり、3つの診断グループすべてに等しく認められた。索上硬結、筋攣縮、活動的なトリガーポイントについて、信頼性に関する問題が確認されました。」

The fibromyalgia and myofascial pain syndromes: a preliminary study of tender points and trigger points in persons with fibromyalgia, myofascial pain syndrome and no disease. Wolfe F, et al. J Rheumatol. 1992.

◆まとめ

これらの研究結果からわかることは、トリガーポイントは末梢神経の感作による二次的な疼痛現象だということが分かります。そしてトリガーポイントの診断で重視される索上硬結や筋攣縮は健康な人にも存在します。

・末梢性の感作

・中枢性の感作(脳、脊髄、後根神経節)

これらによる疼痛現象がトリガーポイントです。

◆考察

ですので、圧痛点を強く押すことは末梢神経の感作を増幅させ、余計に脊髄反射による筋緊張や筋攣縮を増やしてしまいます。末梢神経の感作状態を徒手で鎮め、中枢神経を警戒させないようにする必要があります。

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