神経障害性疼痛は皮膚レベルでも起きているのか|交感神経線維の発芽と疼痛維持

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神経障害性疼痛は皮膚レベルでも起きているのか|交感神経線維の発芽と疼痛維持

神経障害性疼痛の研究では、これまで神経損傷、中枢性感作、DRG(後根神経節)などが主な焦点でした。

しかし近年、神経障害性疼痛の維持には、皮膚レベルで起こる神経再編成も関与している可能性が示されています。

その一つが、異所性交感神経線維の発芽です。これは通常存在しない場所に交感神経線維が新たに伸びてくる現象を指します。

とくに真皮上部への交感神経線維の発芽が、疼痛行動の維持に関与する可能性が報告されています。

▶︎ 神経障害性疼痛とは何か

神経障害性疼痛を皮膚レベルからみる視点

神経障害性疼痛モデルとして広く用いられているのが、カフモデルとSNIモデルです。

カフモデルは神経を圧迫するモデルであり、SNIモデルは神経の一部を損傷するモデルです。

これらのモデルでは、神経損傷後にさまざまな神経変化が生じますが、この研究が注目したのは神経幹そのものではなく、足底皮膚で起こる交感神経支配の変化でした。

その結果、通常は真皮上部にほとんどみられない交感神経線維が、神経損傷後4週間から6週間でこの領域に発芽していることが確認されました。

しかもこの変化は、SNIモデルでは寒冷痛覚過敏、カフモデルでは機械的アロディニアの維持と関連していました。

さらに、カフモデルでは交感神経遮断薬であるグアネチジンによって機械的アロディニアが消失しており、皮膚での交感神経再編成が疼痛維持に関与している可能性が示されました。重要なのは、この交感神経線維の発芽がDRGでは確認されなかった点です。

つまりこの研究は、神経障害性疼痛の維持をDRGや中枢神経だけで説明するのではなく、皮膚レベルで起こる神経線維の再編成も含めて考える必要があることを示しています。

また、発芽した線維は真皮下部の血管周囲を走行する交感神経線維に由来する可能性があり、除神経領域で増加する神経成長因子がこの変化を後押ししている可能性も考えられます。

少なくともこの結果からは、神経障害性疼痛は神経損傷そのものだけで完結するのではなく、その後に皮膚で起こる神経環境の再構成によって維持される側面があると理解できます。

「これらの繊維はSNIモデルにおける寒冷痛覚過敏、およびカフモデルにおける機械的アロディニアの維持に寄与するように思われた。」

「交感神経線維はどちらのモデルでもDRGには発生しなかった。」

Sympathetic fibre sprouting in the skin contributes to pain-related behaviour in spared nerve injury and cuff models of neuropathic pain.
Nascimento PF, et al.

▶︎ 慢性疼痛とは何か

▶︎ ペインサイエンスとは何か

結論|神経障害性疼痛は皮膚の神経再編成も含めて考える必要がある

今回の研究から示唆されるのは、神経損傷後に真皮上部へ交感神経線維が発芽し、それがアロディニアや寒冷痛覚過敏の維持に関与する可能性があるという点です。

しかも、その変化はDRGではなく皮膚レベルで確認されており、交感神経遮断で機械的アロディニアが消失したことからも、末梢の神経再編成が疼痛維持に関与している可能性が考えられます。

このことは、神経障害性疼痛が中枢神経の感作だけで説明できる現象ではなく、皮膚の神経線維、血管、神経成長因子などを含む末梢レベルの変化も含めて理解する必要があることを示しています。

慢性疼痛や神経障害性疼痛を理解するには、中枢神経と末梢神経の両方の視点が必要です。


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