皮膚運動学とは
皮膚運動学は、文京学院大学の 福井勉先生(理学療法士) が提唱している皮膚アプローチ理論です。
福井先生は、日本の理学療法分野で広く知られている 研究者・実践者・指導者 であり、皮膚へのアプローチを臨床に応用する研究と教育を長年行っています。
皮膚運動学では、皮膚の方向性や張力に着目し、主にテーピングによって皮膚の状態を変化させることで関節運動を行いやすくすることを目的としています。
関節が動くとき、皮膚組織には特定の方向へ集まったり離れたりする動きが生じます。
皮膚運動学ではこの皮膚の動きを観察しながらテーピングを行い、皮膚の張力や方向性を調整することで関節可動域や運動のしやすさが変化すると考えられています。
書籍では、この現象について皮膚組織や浅筋膜などの関係や力学的変化が関与している可能性が示唆されています。
一方で神経科学の視点から考えると、皮膚の変化は単なる組織的現象だけではなく、皮膚に存在する感覚受容器による入力の変化も関係している可能性があります。
皮膚には多くの感覚受容器が存在しており、その一つが ルフィニ終末(Ruffini endings) です。
ルフィニ終末は皮膚の伸張を検出する受容器であり、持続的な皮膚の張力変化に反応します。
皮膚の張力や方向が変化すると、この受容器からの体性感覚入力が変化し、中枢神経での身体位置認識や運動制御に影響する可能性があります。
そのため、皮膚運動学で観察される可動域の変化には、組織の力学的変化だけでなく 皮膚感覚受容器による神経入力の変化 が関与している可能性も考えられます。
福井勉先生とDNMの関係

福井勉先生は、DNM(DermoNeuroModulating)の提唱者である ダイアン・ジェイコブス氏と交流があります。
福井先生は、カナダでダイアン・ジェイコブスが行ったDNMのグループ講習に参加しており、皮膚アプローチという分野に早くから関心を持ち研究と臨床を続けてきました。
DNM公式本では、前書きを福井勉先生が執筆しています。
また、日本のDNM指導者とも面識があり、皮膚アプローチという分野において国際的な交流が行われています。
皮膚を介した神経入力という視点は、近年の神経科学とも親和性が高く、今後さらに研究が進む可能性がある領域です。
DNMとは
DNM(DermoNeuroModulating)は、皮神経などの末梢神経の状態変化させたり、感覚入力を変化させることによって神経系の出力変化という調整を促すという理論です。
DNMはカナダの理学療法士 ダイアン・ジェイコブス氏によって提唱されました。
DNMでは末梢神経の状態が変化し、中枢神経での情報処理が変化することで疼痛の軽減が起こると考えられています。
DNMの臨床では、スキンストレッチやバルーンテクニックなどの方法を用いて皮膚の伸長状態を一定時間維持するという特徴があります。
DNMではまず 疼痛の軽減 を優先します。
侵害受容入力が減少すると、防御反応として生じていた筋緊張が低下し、その結果として可動域が改善すると考えられています。
皮膚運動学とDNMの違い
皮膚運動学とDNMは、どちらも皮膚へのアプローチを重視しています。
しかし臨床の目的には違いがあります。
皮膚運動学では主にテーピングを用い、皮膚の方向性や張力を調整することで関節可動域の改善や運動の促通を目的とします。
一方でDNMでは、皮神経などからの入力を変化させることで神経系の反応が調整されるという疼痛の軽減を目指します。
侵害受容入力が減少すると、防御反応として生じていた筋緊張が低下し、その結果として可動域が改善するという考え方です。
つまり、皮膚運動学は可動域改善を主目的とした皮膚アプローチであり、DNMは疼痛軽減を主目的とした神経系へのアプローチと言えます。
結論

DNMの理念の一つに「動くことは薬」という言葉があります。
身体を動かすことは末梢神経の状態改善となり、中枢神経系に影響を与える可能性があります。
DNMによって疼痛を軽減し、皮膚運動学の考え方を応用したテーピングや運動によって可動域を改善することで、より多くの動きや安定した姿勢制御が可能になります。
このようなアプローチは、患者様の身体機能や生活の質に寄与する可能性があります。
参考書籍
皮膚運動学の詳細については以下の書籍を参照してください。
DNMについては以下の書籍を参考にしてください。

