皮膚感覚は動きにとって大切。
ある動きを行うときに、筋紡錘やゴルジ腱器官からのフィードバックが起こることはよく知られています。 身体の固有受容感覚として、四肢の位置感覚や重さの感覚を中枢神経へ伝えることで、動きをコントロールしています。
しかし、同じくらい皮膚の感覚は重要なものです。
皮膚(浅筋膜層)の滑走性や動きやすさ、皮神経の絞扼などによる痛みなどにより、皮膚感覚に影響を与えることは十分に考えられます。
このような研究があります。
遅順応型の感覚受容器(閾値が高く順応が遅い)が関節の動きに関する情報を伝えています。
◆皮膚の感覚受容器のフィードバック
「人間の有毛皮膚の感覚受容器は、膝関節の動きに関する高い忠実度の情報を提供することができると結論付けられた。
以前は定義されていなかったタイプの遅順応型受容器(SA III)は、この作業に特に適しているようであった。一方、これは毛包受容体またはC線維機械受容器のいずれにも当てはまらないようである。」
「皮膚の機械的受容器が、様々な関節の位置によって誘発される皮膚のひずみパターンに関する情報を提供し、この情報が関節の位置覚および動きを決定するためにCNSによって使用され得るという仮説は、人間の手および指の研究から得られた最近の証拠によって裏付けられる(Edin&Johansson 、1995 ; Collins&Prochazka、1996)。」
Cutaneous afferents provide information about knee joint movements in humans. Benoni B Edin
また、皮膚感覚は筋受容器の補佐という役割ではなく、もっと大きな働きを担っています。
◆振動と皮膚の伸展で運動錯覚が最大限に起こる
「皮膚および筋紡錘の受容器からのフィードバックが、指の動きの知覚のために連続的に統合されていることを示している。
皮膚からの寄与は、単に筋の受容器によって生成される感覚の一般的な促進ではなく、皮膚の適切な領域が刺激されたとき、運動錯覚は刺激された皮膚の下の関節に集中した。手からの皮膚フィードバックの1つの役割は、どの指関節が動いているかを識別するのに役立つでしょう。」
「振動と皮膚のストレッチを組み合わせると、皮膚の伸びた領域で最大の運動錯覚が起こり、より遠隔で徐々に小さくなった。」
「皮膚および筋紡錘のフィードバックが、MCP関節での運動感覚に共に使われるという証拠を提供する。」
「CNS(中枢神経)が皮膚および筋紡錘の受容器からのフィードバックを連続的に統合することを示す。」
Sensory integration in the perception of movements at the human metacarpophalangeal joint. D F Collins, K M Refshauge, and S C Gandevia
運動錯覚というのは、腱の振動や皮膚の伸展(スキンストレッチ)で起こる錯覚です。つまり自分の身体の位置感覚情報が一次的に惑わされるという事です。
その運動錯覚により、鎮痛が起こるという研究は多数報告されています。
テーピングの効果は固有受容感覚を変化させ、運動錯覚を生じるという機序があって、動きやすさや鎮痛に一役買っています。
◆ルフィニ終末とスキンストレッチ
また、皮膚のストレッチによる運動感覚の促進は、ルフィニ終末によるものです。
さらに関節受容器は関節の限界検出器としての機能がメインと言われています。つまり日常的なものは筋紡錘と皮膚のルフィニによるフィードバックが大切だという事です。
「運動感覚の役割を促進する可能性が最も高い皮膚の受容体は、皮膚のストレッチ受容体、ゆっくりと適応するタイプII受容体であるルフィニ終末によって提供される (Chambers et al. 1972; Edin, 1992). 。」
「前腕での運動感覚のための、肘屈曲中の肘の皮膚のストレッチは、位置と動きの両方に関する情報を提供することができる。」
「関節受容器は、最初の考えでは運動感覚においてすべて重要であると考えられていたが、現在の視点は、ほとんどの関節におけるそれらの寄与が軽微である可能性が高いことである。」
「典型的には関節運動に反応するが、しばしば関節運動の範囲の両方の限界で反応ピークを伴う(Burgess&Clark、1969)。
それらは現在、限界検出器と考えられています。
しかし、関節可動域の全範囲にわたる反応の文献の例があり(Burke et al. 1988)、ここで関節受容体は筋肉および皮膚からの入力が利用できない状況下で役割を果たすかもしれません(Ferrell et al. 1987 )。」
The kinaesthetic senses. Uwe Proske Simon C. Gandevia First published: 27 August 2009
◆まとめ
これらのことから、皮膚の感覚は、動きや可動域に大きく関与していることが分かります。
スキンストレッチアプローチやテーピングは、皮膚の感覚を変化させ運動に影響を与えています。
◆考察
DNMスキンストレッチで可動域が変わるという機序の一つとして、皮膚感覚、皮膚の位置感覚が考えられます。
固有受容感覚の変化により、関節運動の限界地点の予測と実際の位置を錯覚して可動域が変わるということです。
これはおそらく皮膚運動学の機序にもなると考えております。