足底の皮神経は姿勢や歩行に影響を与える

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足底の皮神経は姿勢や歩行に影響を与える。

インソールで姿勢のアライメントが変わったり、動きが変わったりすることはよく知られています。

バイメカという要素だけで語られがちですが、足底の皮膚感覚は歩行や静止姿勢にとって、とても重要だという論文がいくつかあります。

 

◆皮膚の感覚受容器は、より安定した立位を促進する姿勢反射を起こす。

足底の皮膚感覚は、身体の位置感覚と支持面に対する情報の提供や姿勢反射に大きく関与しています。

「足底の皮膚受容器は接触圧に敏感であり、圧分布の潜在的な変化に敏感な可能性がある。

さらに、これらすべての体性感覚入力の統合は、支持面に対する身体の位置に関する重要な情報を提供すると思われる。

静止姿勢における足底皮膚への機械的刺激は、皮膚の刺激と高い相関性がある姿勢の動揺を引き起こすことが示されている。

皮膚受容器は、支持基底面の端に向かって移動する足圧中心の動きを検出できるだけでなく、より安定した立位を促進する姿勢反射を起こすこともできる。」

Distribution and behaviour of glabrous cutaneous receptors in the human foot sole
Paul M. Kennedy and J. Timothy Inglis

◆足底の皮神経が、下肢へ局所的な反射効果を生み出す。

足底の皮神経が、動きや歩行の変化を生み出す可能性が示唆されています。

「トレッドミル歩行中に、足底の5つの場所(踵、中足部と前足部内側と外側)に非有害な電気刺激が与えられた。

股関節、膝、足首に作用する筋からのEMG/筋電図活動は、これら3つの関節の動きとともに記録された。

さらに、連続的な力の変化を測定する3つの力検出抵抗器を踵、右足底の内側と外側に配置した。一般的な傾向は、刺激部位での足底圧の低下をもたらす反応を示している。

足底の別々な場所への刺激に対する反応は、四肢の負荷と足位の調節を通じて移動運動の維持とバランスを促進する、ある種の「感覚的操縦」を引き起こす可能性がある。

足底の皮膚から「正常な」感覚を取り除くと、筋の活動と歩行メカニズムが変化する。

皮膚の求心性フィードバックは、バランス調節を助け、立脚相での足の適切な位置を確かにする事が示唆されている。

足を神経支配する皮神経全体の電気刺激について前述したように、運動の機械的変化は、主に遊脚中に見られ、足底下の力の動的変化は立脚中に見られた。

総合すると、これらは、神経全体の刺激について前述したように、遊脚相中に足を摂動から遠ざけるように細かく調整された障害物回避として解釈することができる。

この研究の結果は、足底の皮神経が、人間の下肢へ高度に組織化された局所的な反射効果を生み出すという示唆をさらに裏付けている。

Cutaneous stimulation of discrete regions of the sole during locomotion produces “sensory steering” of the foot .
E Paul Zehr, Tsuyoshi Nakajima, Trevor Barss, Taryn Klarner, Stefanie Miklosovic, Rinaldo A Mezzarane, Matthew Nurse and Tomoyoshi Komiyama

 

◆インソールは腰痛の予防にならない・コクランレビューによる研究

インソールとは、歩行や姿勢などの基本的な動作をサポートし、足の衝撃を吸収し、バランスと固有受容能力を高めることを目的とした靴の中に敷く中敷のことです。

コクランによる2000人以上のシステマティックレビュー

コクランとは…

「コクランは20年にわたり、医療および医療政策に関する一次研究のシステマティックレビューを提供しており、科学的根拠(エビデンス)に基づく医療情報源として最高水準のものであることが世界的に認められています。」コクランWebより

そのコクランによる研究で、インソールには腰痛を予防する効果がないという結果が出ています。

「3件の予防研究(2061人の参加者)が、腰痛の予防に対するカスタマイズされたインソールと、カスタマイズされていないインソール両方の効果を調べた。

混合集団を対象とした3件の研究(256人の参加者)は、カスタマイズされたインソールが腰痛に及ぼす影響を調べた。」

「インソールを使用しても腰痛を予防できないという強力な証拠がある。 」

(インソールについて一般的に言われている)
「理論的知識と臨床的知識の両方が欠けていることを発見した。」

「四肢の長さの不平等と腰痛との関連性を調査した12の研究を発見したが、明確に関連は見られなかった。」

「 プラセボ、無介入または他の介入と比較して、腰痛の予防または治療のための、カスタマイズされたまたはカスタマイズされていないインソールの使用を検討した研究を含めた。」

「インソールを使用した参加者と使用しなかった参加者との間で、腰痛の予防率に統計的に有意な差はなかった。

「多くの中小製造業者は明確なデータの欠如を利用し(これはインソールが有益ではないことを示すことになるかもしれない)、そしてインソールは実際に腰痛を予防し、軽減すると一般人と医師が信じている。」

「参加者の盲検化や研究は本質的に困難。従って、真の盲検化はプラセボ効果を減少させ、そしてインソールの効力を減少させるであろう。」

「3つの研究は2000人以上の参加者を含み、かなりの統計的な力を提供した。たとえ、大規模な研究で、インソールが非常に効果的であると証明されたとしても、それらの絶対効果はおそらく小さいだろう。」

Insoles for prevention and treatment of back pain (Review)Sahar T, Cohen MJ, Ne’eman V, Kandel L, Odebiyi DO, Lev I, Brezis M, Lahad A

 

◆まとめ

これらのことから、足底の皮膚感覚が歩行や立位での姿勢、バランス調整に関与しているという事がわかります。

また、足底の皮膚への刺激でその部位で体重を掛けにくくするということが示唆されています。

さらに、足底刺激による動きの変化は遊脚中に見られたと記載されています。

インソールや足底へのテーピングのような非侵害性の皮膚刺激は、

①皮膚への感覚入力によって反射が起こり

②立位姿勢が変わり、

③歩行などの動きも変わる

ということが分かります。

◆考察

だからこそ分厚いインソールの必要性はなく、薄いわずか数ミリの物でも皮膚の反射により、様々に変化を及ぼせると言えます。

また徒手療法でいえば、足底の痛みや硬結がある場合、それだけで姿勢や下肢の動きが変わる可能性があり、それを徒手で変化すれば、下肢含め全身の動きや姿勢も変わるという事が考えられます。

皮膚の感覚受容器含め「皮神経」は、足底でも重要という事です。

この研究からインソールは腰痛予防に関連性がなく、疼痛軽減効果があったとしてもプラセボ効果が高いという事を示唆しています。

インソールによって動作や歩行のしやすさは変化すると思います。

しかしそのようなバイメカ的理論と、疼痛減少というペインサイエンス理論は分けて考えた方がいい時期に来ていると思います。

動作・歩行・姿勢を効率よくするのが、バイメカ・運動連鎖アプローチであり、侵害受容刺激(痛み)を減少させるために、徒手アプローチを行うこと。

それらに相関するように心理的・プラセボ的な因子も加わってきます。

それら「疼痛減少・動作改善・心理的要因」をいったん分けたうえで、統合させてみていく必要があります。

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