非特異性腰痛の原因②上殿皮神経

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非特異性腰痛の原因②
上殿皮神経

腰痛の85%は非特異性と言われています。

最近では心因性だと言われていますが、果たして全てがそうなのでしょうか?

MRI画像に映りにくい、上殿皮神経の絞扼による腰痛も存在します。

◆上殿皮神経とは?

Th11〜L4由来の脊髄神経後枝の皮枝です。下方へ向かい、腸骨稜辺りで胸腰筋膜や線維骨性トンネルを貫通して、殿部まで伸びている皮神経です。

その上殿皮神経には4〜6本の枝があり、吻合している場合もあります。

腸骨稜では、正中線から3〜4 cm(内側の枝)と7〜8 cm(中間枝)に胸腰筋膜を貫通しています。

中間枝や外側枝は腸骨稜より上の筋膜を貫通する傾向にあります。

 

◆上殿皮神経障害

上殿皮神経が、腸骨稜の胸腰筋膜を貫通して絞扼されることで腰痛が起きることがあります。

坐骨神経痛、腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアに似た症状が現れます。

腰や臀部だけではなく、下肢や足の裏まで痺れたり痛みが出たりします。また間欠性跛行という症状も現れる場合があります。

4~6本ありますが、内側枝の方が絞扼されやすく、また片側だけに症状が現れることが多い(約70%)と言われています。

動くことにより、絞扼部で皮神経が伸ばされたりスライドされるので症状が悪化することがあります。また傍脊柱筋の緊張により悪化する可能性もあります。

「腰痛患者における上殿皮神経絞扼の報告された発生率は1.6%〜14%である。上殿皮神経よび中殿皮神経絞扼は、それぞれ、腰痛患者の47〜84%および82%に下肢症状を引き起こします。」

「上殿皮神経の一部は、胸腰椎筋膜と腸骨稜によって形成される線維骨線トンネルを通過します。Kunitachiらによると、外側面の56%で、少なくとも1つの上殿皮神経が線維骨性トンネルを通過した。皮枝の内側、中央、外側部分はそれぞれ39%、28%、13%の症例に関与していた。」

「両側上殿皮神経絞扼の発生率は、日本の研究では20%と33%であった。」

「上殿皮神経絞扼はまた歩行中の腰痛の悪化により間欠性跛行を誘発する。これらの症状は腰椎疾患の症状と似ているため、鑑別診断が必要である。」

「上殿皮神経絞扼の患者では、チネルのような徴候が神経が貫通している部位、すなわち正中線から3〜4 cm(内側枝)と7〜8 cm(中央の枝)に発見される。」

「上殿皮神経絞扼に起因する腰痛は異なる腰椎姿勢および動的運動によって誘発され得る。」

「上殿皮神経絞扼は、若い運動選手や兵士およびパーキンソン病において、傍脊椎筋緊張を増大させる傾向がある疾患の存在下で見出されている。」

「その結果、上殿皮神経絞扼は、腰椎運動による上殿皮神経の伸張および傍脊椎筋緊張の増加による身体姿勢と関連している可能性がある。」

Superior and Middle Cluneal Nerve Entrapment as a Cause of Low Back Pain.
Toyohiko Isu, Kyongsong Kim, and Naotaka Iwamoto.

病因に来た患者のうち14%が上殿皮神経絞扼の疑いがあったという研究です。その半数は腰痛のみであり、残りの半数は下肢症状もありました。

病院に来た「834人の患者のうち113人(14%)が上殿皮神経障害の疑いがあると診断された。」

「113人の被験者のうち、59人(52%)が腰痛のみを有し、53人(47%)が脚の症状と関連する腰痛を有し、そして1人(1%)が脚の痛みのみを有した。これらの113人の被験者において、様々な姿勢および運動により、腰痛および脚の症状の両方が悪化した。」

「トレスコ氏は、上殿皮神経の絞扼が脚の下、おそらくは足の裏まで痛みを引き起こし、この「偽坐骨神経痛」は臨床的に腰椎椎間板ヘルニアまたは腰椎脊柱管狭窄による神経根障害を模倣すると述べた。」

「「骨線維性トンネル」の真の狭窄は極めてまれであり、腸骨による直接圧迫がなくても筋膜下での上殿皮神経の反復的な摩擦が重度の症状を引き起こす可能性がある。」

Prospective study of superior cluneal nerve disorder as a potential cause of low back pain and leg symptoms.
Hiroshi Kuniya, Yoichi Aota, and Tomoyuki Saito

 

◆考察

DNMでは、皮神経が絞扼されて神経自体の血流が滞り、神経内の侵害受容線維が活性化することで、侵害受容信号が中枢へ向かうと考えています。

神経が絞扼された状態で動くと、テンションがかかり侵害受容入力が起こります。

また神経自体が炎症状態にあるとスライドするたびに侵害受容入力が起こります。

これは過度の反復的な運動や運動不足により起こり得る機械的変形により起こる可能性があります。

この上殿皮神経へのDNMアプローチもいくつかバリエーションがあります。

画像2

-DNMによる上殿皮神経のアプローチ/ポジショナル・リラクゼーション-

非特異性腰痛のうち10%位は上殿皮神経障害の可能性があります。他にも中殿皮神経や脊髄神経後枝の影響もあります。

腰痛に対する評価において、上殿皮神経も視野に入れることが必要です。

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