ゴム手に鎮痛薬を塗布しても鎮痛が起こる?
ゴムでできた偽物の手と自分の手を、筆で同時になでると、自分の手だと感じていきます。身体所有感が生じ、身体の一部だと錯覚します。
先に本物の手とゴム手に痛み刺激を与えておきます。
その後、ゴム手に鎮痛薬を塗布すると、痛みが減るという面白い研究があります。
◆研究
偽の鎮痛剤がゴム手に適用されたときに、プラセボ鎮痛が経験されることができるという最初のデモンストレーションを報告する。
その効果は、ゴム製の手の錯覚を利用することによって得られ、身体所有感は体に取り付けられていないゴム製の腕に感じられる。
同期および非同期両方の視覚-触覚刺激の条件下で、偽鎮痛クリームおよび対照クリームをゴム腕だけに塗布した。その前後に熱性疼痛刺激を参加者20人の本物の腕およびゴム腕にも与えた。
同期的な視覚-触覚刺激の間にゴム腕に痛みが生じ、そしてゴム腕への偽鎮痛薬の適用は報告された痛みの重症度を有意に減少させた。 これは、身体体験が期待とプラセボ鎮痛の誘導を調整することができることを示している。
最近のメタアナリシスは、これらの意識的な期待が、前頭前野を通じてプラセボ鎮痛を媒介し、下行性疼痛調節システムの活性化につながることを示している。
次いでこのネットワークは、内因性オピオイド系およびμ-オピオイド神経伝達を使用して、疼痛処理領域における活性を低下させるとともに、侵害受容性の処理を脊椎レベルで調節し、鎮痛を誘導する。
Placebo Analgesia from a Rubber Hand
Coleshill MJ, George DN, Mazzoni G.
◆まとめ
鎮痛に対して「期待」が重要であり、それによってプラセボ鎮痛と呼ばれる状態が起きます。
そのとき、脳から痛みを抑制する内因性オピオイドなどが出て、実際に鎮痛が起こります。
「期待」と視覚や身体感覚などの情報が組み合わさって、脳内のニューロマトリックスで混ぜ合わさると、オピオイドなどが放出される「下行性調節」が起こるというわけです。
大切なのはどのように相手の脳内を刺激して、鎮痛物質を出させるか?ということ。
そのために、末梢神経や皮神経からの入力信号をどのように中枢である脳に伝えか?にフォーカスして考えなければなりません。