プレガバリンは坐骨神経痛に有効なのか|研究結果と副作用から再検討する
神経障害性疼痛の治療薬としてよく知られている薬にプレガバリン(pregabalin)があります。
坐骨神経痛や帯状疱疹後神経痛などで処方されることがありますが、実際に坐骨神経痛の痛みを改善するのかは、臨床研究で検証されています。
ここでは、プレガバリンの作用機序、研究結果、副作用を整理したうえで、坐骨神経痛をどう理解すべきかを考えます。
プレガバリンの作用機序|どこに作用すると考えられているのか
プレガバリンは、電位依存性カルシウムチャネルのα2δサブユニットに作用する薬です。
神経細胞ではカルシウムが細胞内に流入すると、グルタミン酸やサブスタンスPなどの神経伝達物質が放出され、侵害受容信号の伝達に関与します。
プレガバリンはこの過程に影響し、神経伝達物質の放出を抑えることで、神経の過剰な興奮を抑制すると考えられています。
プレガバリンとプラセボを比較した臨床試験|坐骨神経痛に有効だったのか
坐骨神経痛に対するプレガバリンの効果を調べるため、無作為化二重盲検プラセボ対照試験が行われました。
研究では、坐骨神経痛の患者様209人を対象とし、108人にプレガバリン、101人にプラセボが投与されました。
結果として、プレガバリン群では227件の有害事象が報告され、プラセボ群では124件でした。特にめまいはプレガバリン群で多く報告されました。
研究の結論|プレガバリンはプラセボを上回らなかった
研究では次のように結論づけられています。
「プレガバリンによる治療は、8週間にわたって、プラセボと比較して坐骨神経痛に関連する下肢痛の強度を有意に低下させず、他の転帰を有意に改善しなかった。有害事象の発生率は、プラセボ群よりもプレガバリン群の方が有意に高い結果だった。」
Trial of Pregabalin for Acute and Chronic Sciatica. Stephanie Mathieson, et al.
この研究で重要なのは、プレガバリンがプラセボより明確な改善を示さなかったことに加えて、有害事象が多かったことです。
この結果は、坐骨神経痛を単純に神経の興奮だけで説明するモデルの限界を考えるうえでも重要です。
プレガバリンの副作用はどのくらい問題か|効果と有害事象を分けて考える
プレガバリンでは、めまい、眠気、ふらつき、体重増加、集中力低下などが報告されています。
今回の研究でも、副作用はプラセボよりプレガバリン群で多く報告されました。
とくに高齢の患者様では、眠気やふらつきが転倒リスクにつながる可能性もあり、効果があるかどうかと、有害事象がどの程度問題になるかは分けて考える必要があります。
坐骨神経痛は病名ではなく症状名である|まず押さえたい基本理解
坐骨神経痛は病名ではなく、臀部から下肢にかけて生じる痛み、しびれ、重だるさなどを指す症状名です。
原因としては椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症がよく知られていますが、画像所見だけで症状の強さや持続を一対一に説明できるとは限りません。
そのため、坐骨神経痛を理解するには、構造変化だけでなく、末梢神経の状態と入力、中枢神経での処理も分けて考える必要があります。
薬だけでは整理しきれない理由|症状全体と薬理作用は同じではない
プレガバリンは神経の興奮に関わる一部の機序に作用する薬ですが、坐骨神経痛という症状そのものは、それだけで成り立っているわけではありません。
末梢神経の状態と入力、脊髄後角での処理、予測や注意、過去の経験、回避行動などが重なれば、症状の出方は大きく変わります。
つまり、薬理学的に一部の機序を抑えることと、患者様が経験している痛みやしびれ全体が改善することは同じではありません。
坐骨神経痛は自然に改善することも多い|経過をどうみるべきか
坐骨神経痛のなかには、時間経過とともに改善していくものも少なくありません。
そのため、薬物療法だけに依存するのではなく、経過、症状の強さ、神経学的所見、活動量の維持などを含めて考えることが重要です。
坐骨神経痛をどう理解するべきか|構造だけでも薬理だけでも足りない
今回のRCTが示したのは、坐骨神経痛を「神経が興奮しているから、その興奮を薬で抑えれば改善する」といった単純な図式では整理しきれないということです。
坐骨神経痛の症状は、構造変化、末梢神経の状態と入力、脊髄レベルでの調整、中枢神経での処理、生活背景などが重なって成り立っている可能性があります。
そのため、薬が効くか効かないかという二択ではなく、症状がなぜ続いているのかを多面的に整理する視点が必要になります。
結論|プレガバリンのRCTは坐骨神経痛の理解を再検討させる
プレガバリンは、坐骨神経痛に対してプラセボを上回る明確な効果が確認されず、副作用は多く報告されました。
この結果は、坐骨神経痛を単純に神経の興奮だけで説明することの限界を示しています。
坐骨神経痛を理解するには、構造だけでも薬理だけでもなく、末梢神経の状態と入力、中枢神経での処理、その相互作用を整理する視点が重要です。
薬理学的に一部の機序へ作用することと、患者様が経験している症状全体が改善することは同じではありません。臨床では、研究結果と症状理解を分けて考えることが重要になります。
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