皮膚伸張や腱振動による運動錯覚には鎮痛効果がある。
運動錯覚とは、実際には動かしていないのに動いているように感じる錯覚のことです。視覚の錯覚や、運動錯覚によって、鎮痛効果が起こるという研究があります。
これは鏡を使った視覚による実験です。痛みのある手や指を鏡を使うことで長く見せたり短く見せたりすることで運動錯覚が起こり、痛みが軽減されました。
「平均年齢70歳の手や指の関節炎患者を20人集めた。鏡の錯覚によって痛みのある指や手を、伸ばしたり縮めたりしました。
リウマチ学ジャーナルの最新版に報告された結果は、患者の85%が痛みの顕著な減少を示した。
一部の者は、伸展や収縮の両方によって痛みが大きく減少したと報告しました。痛みの軽減は、手の痛みを伴う部分が操作されたときにのみ起こりました。
注目すべきことに、手の痛みのある部分を伸ばしたり縮めたりすることで、一時的に1/3の患者の痛みが取り除かれました。事実、多くの患者も動きの幅が広がったと報告しています。」
Illusion can halve the pain of osteoarthritis, scientists say (w/ video). April 14, 2011 , University of Nottingham
皮膚感覚が運動感覚に寄与しているという研究です。腱への振動と皮膚のスキンストレッチを合わせると、最大の運動錯覚が起きるというもの。
「振動と皮膚のストレッチを組み合わせると、皮膚の伸びた領域で最大の運動錯覚が起こり、より遠隔で徐々に小さくなった。」
Sensory integration in the perception of movements at the human metacarpophalangeal joint. D F Collins, K M Refshauge, and S C Gandevia
これは日本人の研究ですが、腱の振動により痛みを一次的に感じにくくなります。 ここに出てくる身体所有感とは自分の身体を自分の身体だと思える感覚のことです。
運動主体感とは自分の身体を動かしているのは自分だという感覚のこと。 疼痛などで身体をあまり動かせなかったりすることで運動主体感が減ったり、痛みと自己を乖離させようとすることで身体所有感が減ったりする可能性があります。
そういった方に腱の振動などによる運動錯覚は、より有効的だという事です。
「健常成人において,腱振動刺激による運動錯覚によって痛み閾値が向上したが,これには身体所有感や運動主体感が大きく関与していることが本研究で示された。
つまり,自分自身の手に運動主体感が得られていない者にとってのリハビリテーションとして有用な方法である可能性がある。」
腱振動刺激による運動主体感の錯覚が痛み閾値に与える影響 今井 亮太1,2),大住 倫弘1,3),森岡 周 ttps://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2014/0/2014_0308/_pdf
DNMではスキンストレッチという皮神経へのアプローチがありますが、これは皮神経の循環を変化させるという事とともに、皮膚伸展による運動錯覚による鎮痛効果も理論に含まれています。