腸内細菌叢と慢性疼痛|腸脳軸・食生活・線維筋痛症との関係

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腸内細菌叢と慢性疼痛|腸脳軸・食生活・線維筋痛症との関係

近年のペインサイエンスでは、慢性疼痛は単なる組織損傷だけではなく、神経系、免疫系、生活習慣など複数の要因が関与する現象として理解されています。

そのなかで注目されているのが、腸内細菌叢と腸脳軸です。

腸内細菌叢は免疫系、神経系、代謝系に影響する可能性があり、慢性疼痛との関連も研究されています。

▶︎ ペインサイエンスとは何か

腸脳軸とは何か|腸内細菌叢は慢性疼痛にどう関わるのか

腸と脳は、神経系、免疫系、ホルモン系を通じて相互に影響し合っています。

この関係は腸脳軸と呼ばれています。

腸内環境の変化は炎症反応や神経活動に影響し、それが痛みの調節にも関わる可能性があります。

そのため慢性疼痛を理解するうえでも、腸内細菌叢や食生活を切り離して考えず、神経系や免疫系との関係のなかでみる必要があります。

▶︎ 慢性疼痛とは何か

腸内細菌叢と慢性疼痛の研究|末梢性感作と中枢性感作への関与

腸内細菌叢と慢性疼痛の関係を扱った論文では、腸内細菌叢が末梢性感作や中枢性感作、侵害受容ニューロンの興奮性、中枢神経系の炎症関連反応にどう関わるかが検討されています。

ここで重要なのは、痛みを局所組織の問題だけで説明するのではなく、腸内環境が神経系の反応性に影響する可能性を含めて捉えている点です。

この結果からは、腸内細菌叢の変化が末梢神経の状態と入力に影響し、それが侵害受容信号の処理や中枢性感作の維持にも関わる可能性があると考えられます。

つまり慢性疼痛は、筋骨格系だけでなく、腸内環境、免疫反応、神経系の統合としてみる視点が必要です。

「腸内細菌叢は末梢および中枢神経系の疼痛を調節し、食事および薬物療法による腸内細菌叢への介入は慢性疼痛の管理のための新しい治療戦略となる可能性がある。」
Pain regulation by gut microbiota: molecular mechanisms and therapeutic potential
Guo, et al.

▶︎ 中枢性感作とは何か

慢性疼痛と食生活|炎症と腸内環境の視点

慢性疼痛と食生活の関係については、炎症反応や腸内細菌叢の変化を通じて影響する可能性が指摘されています。

一般に、過剰な糖質、精製された炭水化物、高度加工食品などは、血糖変動や炎症反応を高め、その結果として痛みの感受性に影響する可能性があります。

一方で、野菜、果物、魚、ナッツ、オリーブオイルなどを多く含む食事は、慢性炎症を抑える方向に働く可能性があります。

慢性疼痛の観点からも、過剰な糖質や加工食品を控え、炎症を助長しにくい食事パターンを考えることが重要です。

▶︎ 生活習慣と慢性疼痛

食事介入と疼痛の研究

低炭水化物食は痛みを軽減するのか|変形性膝関節症の研究

低炭水化物食、低脂肪食、通常食を比較した研究では、変形性膝関節症の高齢者約20人を対象に、12週間の食事介入による痛みの変化が調べられました。

この論文は、食事内容の違いが疼痛強度、不快感、酸化ストレス、レプチンなどにどう関係するかを具体的にみている点で重要です。

少なくともこの研究では、低炭水化物食は低脂肪食や通常食よりも疼痛強度と不快感の軽減と関連していました。

さらに、酸化ストレスやレプチンの低下も報告されており、食事が炎症性の代謝環境を通じて痛みに影響する可能性が示されています。

高炭水化物食は炎症誘発性サイトカイン、酸化ストレス、最終糖化産物(AGE)などの増加と関係する可能性があり、こうした背景を踏まえると、糖質過剰な食事は慢性疼痛の維持要因として検討する価値があります。

また動物研究では、高脂肪・高炭水化物食が脊髄ミクログリアの活性化を高め、炎症性疼痛の過敏性を延長させることも報告されており、食事と神経系の関係は無視できません。

「12週間にわたり、低炭水化物食は低脂肪食および通常食と比較して疼痛強度および不快感を軽減した。低炭水化物食は酸化ストレスとアディポカインレプチンを有意に減少させた。」

The Effect of Low-Carbohydrate and Low-Fat Diets on Pain in Individuals with Knee Osteoarthritis
Strath, et al.

線維筋痛症と腸内細菌叢|症状の重症度との関連

また別の研究では、線維筋痛症患者77人と健常対照79人の腸内細菌叢が比較されました。

この論文では、腸内細菌叢の違いが単に線維筋痛症の有無だけでなく、痛みの強さ、痛みの分布、疲労、睡眠障害、認知症状などの重症度ともどう関係するかが検討されています。

この結果からは、線維筋痛症では腸内細菌叢に特徴的な変化がみられ、それが症状の強さと一定の関連をもつ可能性があると考えられます。つまり、線維筋痛症を中枢神経だけの問題として扱うのではなく、腸内環境や免疫系を含めた全身的な背景因子の一つとして捉える視点が必要です。

また線維筋痛症は、過敏性腸症候群、慢性疲労症候群、間質性膀胱炎などと症状が重なることが多く、これらの疾患でも腸内細菌叢の変化が報告されています。

そのため、症状の広がりや併存症を考えるうえでも、腸脳軸という枠組みは有用です。

「腸内細菌叢の変化は線維筋痛症関連の変数によって説明され、痛みの強さ、痛みの分布、疲労、睡眠障害、認知症状などの重症度と相関していた。」
Altered microbiome composition in individuals with fibromyalgia
Minerbia, et al.

▶︎ 線維筋痛症とは何か

線維筋痛症と抗炎症食|地中海食は慢性疼痛に関係するのか

線維筋痛症の食事と疼痛過敏の関係をみた研究では、炎症誘発食と抗炎症食の違いが圧痛過敏とどう関わるかが検討されました。

この論文の重要な点は、食事内容を単なる栄養の問題ではなく、炎症環境と痛みの感受性に関連する因子として扱っていることです。少なくともこの結果では、炎症誘発食は線維筋痛症患者の疼痛過敏と関連していました。

一方で、野菜や果物を多く含み、魚、ナッツ、オリーブオイルなどを取り入れ、精製穀物を抑えた抗炎症食は、疼痛過敏を軽減する方向に働く可能性が示されています。

抗炎症食の代表例としては、地中海食、野菜や果物中心の食事、精製糖質を抑えた食事などが挙げられます。

こうした食事は、慢性疼痛を抱える患者様において、炎症反応、代謝状態、腸内環境の改善を通じて症状に影響する可能性があります。

「炎症誘発食は線維筋痛症患者の疼痛過敏と関連していた。抗炎症食は疼痛過敏を軽減する可能性がある。」
Dietary Inflammatory Index Scores Are Associated with Pressure Pain Hypersensitivity in Women with Fibromyalgia
Correa-Rodríguez, et al.

結論|腸内細菌叢と食生活は慢性疼痛をどう再考させるのか

これらの論文から、腸内細菌叢は末梢性感作、中枢性感作、侵害受容ニューロンの興奮性、中枢神経系の炎症関連反応などと関係する可能性が示されています。

また、線維筋痛症では腸内細菌叢の変化が報告されており、痛みの強さ、疲労、睡眠障害、認知症状との関連も示されています。

さらに、低炭水化物食や抗炎症食、地中海食のような食事パターンは、酸化ストレスや炎症環境を通じて疼痛の軽減に関わる可能性があります。

慢性疼痛は構造的な問題だけではなく、腸内細菌叢、炎症、神経系、生活習慣の相互作用として理解する必要があります。

徒手療法や運動療法に加えて、こうした背景因子をどう評価するかという視点も重要です。


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