テーピングは本当に効果があるのか|痛み・筋力・貼る方向を科学的に検証する

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テーピングは本当に効果があるのか|痛み・筋力・貼る方向を科学的に検証する

テーピングは、スポーツやリハビリテーション、整形外科領域などで広く用いられています。

ただし、ここで扱うのはキネシオテーピングや伸縮テープなどを用いた一般的なテーピングであり、骨折や重度外傷に対する固定目的のテーピングや包帯固定とは異なります。

臨床では、関節の安定性を高める、痛みを減らす、筋力を高める、動きを改善するといった説明がよく見られます。しかし、貼る方向やテンション、皮膚のシワ、色の違いまで含めた理論が、実際の研究でどこまで支持されているかは別問題です。

近年の研究では、テーピングの変化は構造的な支持よりも、皮膚からの感覚入力と神経系の情報処理の変化として説明しやすいことが示されています。

本記事では、テーピングに関する主要研究を整理し、痛み、筋力、パフォーマンス、貼り方の理論を現在のエビデンスから再検討します。

テーピングの貼る方向や皮膚のシワは効果に影響するのか

慢性の非特異的腰痛をもつ148人を対象にした研究では、テープの方向や、皮膚のシワを作る貼り方に意味があるのかが検証されました。

臨床では、筋走行やリンパの流れに沿って貼る説明がよく使われますが、この研究ではそのような細かな貼り分けに明確な優位性は示されていません。

つまり、改善があったとしても、それを方向やシワ形成だけで説明するのは難しいと考えられます。

「キネシオテープを使用してシワ(たたみ込み)を生成する利点はないと結論付けることができる。」
Kinesio Taping to generate skin convolutions is not better than sham taping for people with chronic non-specific low back pain: a randomised trial
Parreira et al.

テーピングの色は効果や筋力に影響するのか

別の研究では、健康成人を対象に、テープの色が運動能力、大腿四頭筋の筋力、神経筋機能に影響するかが調べられました。

その結果、色による差は確認されず、張力あり、張力なし、テープなしの比較でも明確な有効性は示されませんでした。

赤は促通、青は鎮静といった説明は知られていますが、少なくとも現在の研究では支持されていません。

「キネシオロジーテープは、健康な成人の下肢のパフォーマンスや筋力に有益な影響を与えなかった。テープの色は、運動能力、大腿四頭筋の筋力、または神経筋の機能に影響しなかった。」
The influence of kinesiology tape colour on performance and corticomotor activity in healthy adults: a randomised crossover controlled trial
Cavaleri et al.

テーピングは痛みを減らすのか|システマティックレビュー

約500人を含む12試験を統合した論文では、キネシオテーピングが偽テーピング、治療なし、運動、徒手療法、従来の理学療法と比較されました。

その結果、差が出たとしてもごく小さく、臨床的に意味のある鎮痛効果は確認されていません。

また、この論文では、普及の背景にマーケティングやスポーツイベントでの露出があった可能性にも触れられています。

「したがって、現在のエビデンスでは、筋骨格疾患に対するキネシオテーピングの使用は支持されていない。」
Current evidence does not support the use of Kinesio Taping in clinical practice: a systematic review
Parreira et al.

▶︎ オリンピックで疑似科学が広まる理由|キネシオテーピング・カッピングとプラセボ効果

テーピングは筋力やパフォーマンスを向上させるのか

また別の研究では、キネシオロジーテープに筋肉の促通効果があるのかが、だます条件を含む対照試験で検討されました。

この結果からは、テーピングで筋力が上がるという説明は支持が弱く、変化があるとしても期待や思い込みの影響を考える必要があります。

筋出力は神経系の調整で決まるため、テープが筋そのものを特異的に強化すると考える根拠は乏しいと言えます。

「これらの発見は、以前に報告されたキネシオロジーテープを使用した筋肉の促通効果が、プラセボ効果に起因する可能性があることを示唆している。結果は患者の期待が急速に神経の変化につながることを示した(Benedetti et al.,2005)。同様の結果がアスリートの間で報告されており、プラセボ効果を使用してスポーツのパフォーマンスを向上させている。」
Kinesiology tape does not facilitate muscle performance: A deceptive controlled trial
Poon et al.

テーピングは関節を安定させるのか|皮膚感覚と固有受容感覚の研究

関節のテーピングが安定性を高めるという説明は一般的ですが、膝関節の運動と皮膚感覚の関係を扱った研究は、別の見方を示しています。

この論文では、関節運動に伴う皮膚のひずみが感覚入力となり、関節運動の知覚に関わることが示されています。

つまり、テーピングによる安定感は、関節を機械的に支えた結果というより、皮膚感覚の変化として理解できます。

「理学療法士は、関節のテーピングがその『安定性』を改善すると長い間主張してきた。しかし、テーピングは、膝や足首のような大きな関節の安定性に機械的に寄与することはほとんどないことが知られている。」

「テープなどの『安定化』効果は、皮膚からの体性感覚流入の変化によるものである可能性がある。」Cutaneous afferents provide information about knee joint movements in humans.
Edin et al.

▶︎ ルフィニ終末とは何か

テーピングはなぜ動きを変えるのか|予測処理と身体感覚の再調整

テーピングによって皮膚の接触感やひずみが変わると、末梢から中枢神経系へ入る感覚入力も変化します。

運動は筋肉や関節だけで決まるのではなく、予測された身体状態と実際の感覚入力の照合によって調整されます。

そのため、テーピングによる変化は、構造的な支持というより、感覚入力を介した予測処理や運動制御の再調整として理解できます。

また、こうした変化は、身体所有感や運動主体感にも影響する可能性があります。

テープを貼ったことで動きやすさや安定感が変わる場合も、その背景には感覚の更新が含まれていると考えられます。

▶︎ 予測脳とは何か

▶︎ 身体所有感と運動主体感とは何か

結論|テーピングの科学的な痛み・筋力・神経の視点

現在の研究をみると、テーピングの貼る方向、皮膚のシワ、色の違いに明確な優位性は示されていません。

痛みに対する効果は小さく、筋力やパフォーマンスを特異的に高める根拠も乏しいままです。また、一般的なテーピングが関節を機械的に安定させるという説明にも限界があります。

一方で、皮膚は感覚受容器を豊富にもつ神経系の重要な入り口です。

そのため、テーピングによる変化は、皮膚感覚、末梢神経の状態と入力、中枢神経の情報処理を介した変化として理解する方が、現在の神経科学には合っています。

期待や文脈の影響まで含めて考えることは重要ですが、それを根拠の弱い構造理論で説明しないことも同じくらい重要です。

テーピングは、筋肉や関節を直接変える介入としてではなく、神経系への入力を変える補助的な刺激として再評価する必要があります。


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