フォームローラーは筋膜リリースではなく、皮神経アプローチ。
フォームローラーとは、エクササイズやフィットネス、アスレチックトレーナーやピラティスなどで使う長いクッションのような道具のことです。
この写真の長いグレーのものです。
良く行われる部位は、大腿筋膜、ハムストリング、ふくらはぎ、足底筋膜などがあります。
◆筋膜リリース
フォームローラーでコロコロすることで、筋膜を伸ばすとよく言われます。しかし、深筋膜などの硬い結合組織には、外からのその程度の力で影響を与えることはできません。
「足底筋膜では、1%の圧迫と1%の剪断力さえも生み出すには、852 kgの垂直荷重と424 kgの接線力が必要であることがわかった。
Three-Dimensional Mathematical Model for Deformation of Human Fasciae in Manual Therapy.
Hans Chaudhry, PhD, Robert Schleip, MA, Zhiming Ji, PhD, Bruce Bukiet, PhD, Miriam Maney, MS, Thomas Findley, MD, PhD
◆トリガーポイント
筋膜にあるとされる、押すと痛みが出る部分を押すと拳銃のトリガーのように痛みが放散する現象です。
実際にはトリガーポイントは神経が二次的に敏感になったから起こります。筋膜という結合組織が理由ではありません。
つまりフォームローラーでコロコロすることによる身体への効果は、筋膜ではないということです。
◆DNIC/痛みで痛みを一時的に消すだけ
また、太ももの外側などは「痛気持ちいい」という反応が多いのも特徴です。
それはDNICという「新しい痛みで元からあった痛みを消す」理論があります。
問題が二つあります。
- 脳が余計に警戒する。
- 一次的効果であり、その場だけしか続かない。
ですので、気持ちいい範囲で行うにはいいのですが、「痛(いた)」がつくほどはやりすぎで、毛細血管や細い神経などの組織が損傷してしまう恐れもあります。
ではなぜ、フォームローラーでその部位が軽くなるなど効果が出るのでしょうか?
◆感覚受容器と脳
皮膚には沢山の感覚受容器があります。押された圧力に反応するもの、伸ばされたときに反応するもの、触れた時だけ反応するものなど多彩です。
それらから脳に送られた感覚情報によって、その部位に対する脳の認識が変わったり、自律神経の反応が変化し血流が増えたり、皮膚の神経の血液循環が変化したり、動きながら行えば運動感覚も変化したりします。結果的に、痛みやコリ、重さなどが軽減されます。
痛みのない範囲で行えば、フォームローラーの効果はもちろんあります。それは神経系によるものです。
◆フォームローラーは皮神経へのアプローチ
大腿筋膜の浅層には、「外側大腿皮神経」があり、その皮神経の血流を変化させているのが、フォームローラーだと考えられます。
大腿の外側に「外側大腿皮神経」は分布しています。
またハムストリングには「後大腿皮神経」(上図深緑色エリア)、ふくらはぎには「伏在神経・腓腹神経」(ピンク・紫エリア)という皮神経が分布しています。
皮神経が絞扼されたり圧迫されたりすることで、これらのエリアが硬くなったり、痛みが出たりします。
◆まとめ
これらのことから、フォームローラーの効果は皮神経への影響の可能性が高いということが分かります。
なぜなら結合組織である筋膜はそう簡単のリリースできませんし、その組織を伸ばそうとする事にも意味はありません。
サイエンスから見ると真実が分かってきます。
ですので、フォームローラーでコロコロするにしても、痛みが出るような強い刺激は皮神経を傷つけてしまうので、決してお勧めはしません。
そのせいで筋肉までも逃避反射により緊張してしまいます。
筋膜より浅層の「皮神経」を大切に考えましょう!