遅発性筋肉痛は筋紡錘の神経圧迫によるもの。
遅発性筋肉痛とは、慣れていない運動や急に激しく動いた後、数日経って遅れてやってくる筋肉痛のことです。
それにより、痛みや腫れ、可動域の減少などが起こります。
一般的な原因として、筋繊維の損傷や炎症、結合組織の損傷、乳酸など色々言われていますがはっきりと分かっていないのが現状です。
ところが最近、遅発性筋肉痛は筋紡錘の軸索が圧迫されたから起こる現象という研究が出てきました。
■筋紡錘と神経について。
「筋紡錘には、感覚神経、γ運動神経、交感神経支配を伴う錘内筋線維が含まれている。錘内筋線維の感覚神経支配は、タイプIaおよびタイプIIの感覚ニューロンで構成されている。
人間の筋紡錘にも直接的な交感神経支配の解剖学的証拠がある。
筋紡錘の求心性神経および遠心性神経の神経周膜は、外側被膜と繋がっており、血液脳関門などの選択的なバリアとして機能する。その運動神経と感覚神経は、筋紡錘の被膜内では無髄である。」
■伸張性運動と交感神経の活性化。
「伸張性運動では、筋紡錘が過度に長くなり、内側の非圧迫性液体に伴い、体腔がさらにつぶれ、結果として圧迫が著しく強まる。
強まった圧迫は、筋紡錘内の神経終末を絞扼し得る。そして反復的な伸張性収縮は、神経終末の微小損傷につながる可能性がある。
機能の低下は、タイプIa感覚神経終末と運動神経系のγ運動ニューロンの微小損傷による刺激増加の結果であり、可動域が減少し、最終的に筋力が低下する可能性がある。筋紡錘はDOMSにおける類似的なコンパートメントであると考えています。
したがって、不慣れな運動または激しい運動中の交感神経系(SNS)活動の増加は、DOMSの重要な根本的な要因であると考えてる。
高強度の運動だけで起こる圧迫では、筋紡錘に達するのに十分な損傷力ではない。
伸張性運動で筋肉が過度に長くなると、神経、筋線維、結合組織、筋紡錘がトンネル効果下にあり、さらに圧迫を引き起こすと考えられる。
我々の仮説によれば、遅発性筋肉痛(DOMS)は、筋紡錘内の神経終末における急性の圧迫性軸索障害である。
これは、認知要求下で反復的な伸張性収縮が行なわれる時の、圧迫の繰り返しによって引き起こされる。
急性の圧迫性軸索障害は、周囲の組織の微小損傷と同時に起こる可能性があり、免疫性炎症により増強される。」
Have We Looked in the Wrong Direction for More Than 100 Years? Delayed Onset Muscle Soreness Is, in Fact, Neural Microdamage Rather Than Muscle Damage
Balazs Sonkodi , Istvan Berkes and Erika Koltai
■まとめ
これらのことから遅発性筋肉痛は、不慣れor激しい運動における反復的な筋紡錘の伸張による神経の圧迫と、と交感神経系の活性化によるもとという可能性が考えられます。
その根本的な部分として、筋紡錘における末梢神経軸索の圧迫性微小損傷と炎症によるものということです。
さらに筋紡錘に分布する末梢神経のトンネル状態がさらに圧迫を引き起こすことが示唆されています。
■考察
DNMでいつも言っていることと同じようなことが、筋紡錘でも起こっているということです。
末梢神経とそのトンネルという捉え方をしていますが、その観点から見ると「筋紡錘も神経トンネル」と言えますね。
ペインサイエンスとして、末梢で大切なのは、末梢神経や皮神経。その神経の状況がどうなっているかという視点を持つ必要があります。
常々言っていますが、組織などの解剖学的視点だけではなく、状態や機能などの生理学への視点、そして痛みは脳からのアウトプットという視点から、神経系にフォーカスを向ける必要があります。