コラム

PNF/METなど等尺性収縮後弛緩アプローチは相反抑制によるものではない




    PNF/METなど
    ホールドアンドリラックスによる効果は、
    相反抑制によるものではない

    例えばクライアントの動きを施術者がブロックして、主動筋を等尺性収縮させます。すると相反抑制という反射により、拮抗筋が弛緩すると一般的に言われています。

    しかし、それは本当でしょうか?

    まずは、それぞれのテクニックを見てみましょう。

    ◆PNFとは?

    PNF/固有受容性神経筋促通法とは、1940年代にアメリカで生まれたテクニックです。

    固有受容器を刺激することによって、神経筋の働きを向上させ、関節可動域を増やす方法と言われています。

    ちなみに固有受容器とは、筋肉の筋紡錘、腱のゴルジ腱器官、関節包の感覚受容器など体性感覚を中枢へ伝えるものです。

    PNFでは、ホールドアンド・リラックスやコントラクト・リラックスという名称で呼ばれ、等張性収縮や等尺性収縮を行なった後に、可動域を広げていくという形をとります。

    等張性収縮とは、関節運動を伴い、筋収縮の力は変化しない状態で収縮させることです。

    等尺性収縮とは、関節運動を伴わず、筋肉の長さが変わらない状況の中で筋肉を収縮させることです。

    ◆マッスルエナジーとは?

    MET/マッスルエナジーテクニックとは、主動筋を等尺性収縮させ、そのあと力を抜かせて拮抗筋の相反抑制を利用するという徒手療法です。

    疼痛の軽減、筋緊張の低下、可動域制限を改善するといわれています。

    ◆相反抑制とは?

    相反抑制/Reciprocal Inhibitionとは、主動筋が収縮すると拮抗筋が弛緩する反射のことです。

    自原抑制/Autogenetic Inhibitionという反射もあります。これは筋肉が収縮したときに損傷を防ぐため、ゴルジ腱器官を介して主働筋を弛緩させるという働きのことです。

    ではここからは研究を見てみましょう。




    ◆相反抑制は研究室内の人工的な現象

    下記の研究では、このような結論か導き出されました。

    ・相反抑制は数ミリ秒しか起こらない。1ミリ秒は0.001秒。

    ・相反抑制は研究室内の人工的な現象であり、日常生活では中枢が制御する。

    ・主動筋が収縮すると、拮抗筋も収縮する。

    つまり、相反抑制とホールドアンドリラックスは関係がないということです。

    ※PNFやMETによる相反抑制について

    「それは拮抗筋の筋電図の振幅および収縮力の観察可能な低下をもたらす。」

    しかし ↓

    「この反応は弱く、非-機能的で、数ミリ秒しか続かない。それは連続的に(持続的に)誘発されることはできない。」※1ミリ秒=0.001秒

    「さらに、相反抑制は研究現象であり、実験室での研究中に観察される生理学的な人工物である。」

    「しかし、それは通常の運動中には起こらない。通常の状況下では、相乗作用を持つ対の筋に対する制御は同時かつ中枢的に制御される。」

    「それは、機械的受容器の刺激によって、末梢からコントロールされない。」

    「さらに、運動中、相乗作用を持つ対の筋の共収縮がしばしばあり、これは相反抑制がないことを意味する。」

    「そのような共収縮は、MET/ PNF活動期の間に証明された。」

    「METの研究で、我々は上腕二頭筋のマッスルエナジー テクニック中に、上腕三頭筋が同時に共収縮することを証明することができた。」

    「上腕二頭筋の収縮力が大きいほど、上腕三頭筋の共収縮が大きくなります。」

    「もし相反抑制が存在する場合、上腕二頭筋収縮中に上腕三頭筋の筋電図活動が見られなかったはずです。」

    参考文献:Therapeutic Stretching/Laderman著/ELSEVIER




    ◆主動筋が収縮すると拮抗筋も収縮する。

    次の研究ですが、膝伸展において、主動筋である大腿四頭筋が収縮すると、拮抗筋であるハムストリングも収縮することが分かります。

    その状態でストレッチすることは筋収縮した状態ですので、筋損傷や痛みに対する閾値の低下につながる恐れがあるとされています。ストレッチリラックスという方法であれば安全にストレッチが行えるとのことです。

    「筋弛緩をもたらし、関節可動域(ROM)を増加させるために、固有受容性神経筋促通法(PNF)テクニックがしばしば使用されます。…ただし、筋活性化と可動域とPNFの関係はよくわかっていません。」

    「この研究の目的は、ハムストリング筋活性化および膝伸展に対する3つの一般的なPNFストレッチングテクニックの効果を調査することでした。」

    「3つのPNF技術:ストレッチ – リラックス(SR)、コントラクト- リラックス(CR)および主動筋コントラクト – リラックス(ACR)を、膝伸展測定値を区分けするために安定化された23〜36歳の10人の男性と女性を対象に適用した。」

    「大腿四頭筋およびハムストリング筋からの膝関節位置および筋電図活動は、テクニック適用全体を通してコンピューター処理された。」

    「その結果、平均してハムストリングの筋電図活動は、ACRとCRの特定の試験でそれぞれ8〜43%増加し、試験を通して減少しなかった。」

    「SRは、平均してハムストリングの筋電図活動の11%減少をもたらした。 ACR間のハムストリング筋電図活動が71〜155%だったにもかかわらず、ACRは、CRとSRよりそれぞれ3〜6%大きい膝伸展の値を生みだした。」

    「データは、CRおよびACRがストレッチによって生じる緊張の促進を克服するため、膝伸展に対抗する筋肉に十分な弛緩を引き起こさないことを示唆している。」

    「したがって、ハムストリングスがかなり緊張している間にROMの増加が達成される。このような緊張は、ストレッチが続くと筋肉の痛みや緊張に対する脆弱性を高めます。」

    「SRによって生じる膝伸展の角度は、CRおよびACRよりも3〜6%少ないが、ハムストリング活動が同時に減少する間に達成され、より安全なストレッチング技術であり得る。」

    Muscle activation during proprioceptive neuromuscular facilitation PNF stretching techniques




    ◆自原抑制も起こらなかった。

    次の研究でも、相反抑制は起こらず、拮抗筋も共収縮するとの結果です。

    さらに自原抑制も起こらなかったとの結果です。

    PNFによる可動域改善の根拠として相反抑制や自原抑制は成り立たないことが分かります。

    「背景と目的: 固有受容性神経筋促通法(PNF)ストレッチは陸上競技とリハビリテーションで広く使われている。」

    「それらがゆっくり又は静的なストレッチよりも良好な可動域(ROM)の増加をもたらすことが示されているが、原因となるメカニズムは依然として謎のままである。」

    「この研究は、以前に提案された相反抑制および自原抑制の神経生理学的メカニズムがPNFストレッチの成功の原因であるかどうかを決定するために行われた。」

    「さらに、著者らは相反抑制を強化するために使用されている、継時誘導現象の存在を評価した。」

    「方法: 17〜44歳の18人の被験者が、PNFストレッチのコントラクト-リラックス(CR)およびコントラクト – リラックス、主動筋コントラクト(CRAC)を行った。」

    「結果: 相反抑制は明白ではなかった。結果は、共収縮を表す可能性がある、拮抗筋収縮中のEMGの抑制よりもむしろ上昇を示した。著者らは継時誘導の存在を確認した。」

    自原抑制もまた明白ではなく、そして予想される抑制、つまり筋収縮後の低いEMG値は観察されなかった。代わりに、それらはベースラインより高かった。」

    「結論: PNFストレッチングのメカニズムに関する以前から言われている神経生理学的説明は不十分であるように思われる。」

    「この研究は、筋肉の緊張がその拮抗筋の収縮中に増加するという以前の発見を裏付けるものである。」

    「非神経学的に障害のある集団におけるCRACおよびCR PNFテクニックの有効性メカニズムに関して他の説明を考慮すべきである。」

    Neurophysiological reflex mechanisms’ lack of contribution to the success of PNF stretches.
    Mitchell UH, et al. J Sport Rehabil. 2009.




    ◆考察

    これらのことから、PNF、マッスルエナジー テクニック、ホールドアンドリラックス、等尺性収縮後弛緩アプローチ、コントラクトリラックスによる可動域や疼痛への効果は、相反抑制による反射ではないことが分かります。

    では何が起きているのでしょうか?

    DNMにもコントラクトリラックスアプローチはありますが、理論が異なります。

    ◆DNMコントラクト・リラックス

    等尺性収縮することによって、末梢神経とその血管のスライドという神経への血流変化、末梢神経の周囲の神経コンテナの変化によって起こる、侵害受容の低下だと言われています。

    侵害受容がなくなると、疼痛は減少します。そして侵害受容がなくなると、可動域も拡大します。

    まとめると、コントラクトリラックスによる効果は、神経のスライド、神経血管への影響、神経コンテナの変化(神経への圧迫が減る可能性)によるものです。





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