カイロプラクティック界隈だけで言うサブラクセーションのエビデンスはない。

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カイロプラクティック界隈で言う
サブラクセーションのエビデンスはない。

1895年頃にパーマー氏が開発したとされる徒手療法。オステオパシーの影響をうけていると言われています。

骨格系、主に脊柱にアプローチし、脊柱のずれ「サブラクセーション」が様々な病気の95%に繋がるとされています。

※サブラクセーションというカイロ特有の単語を直訳すると亜脱臼になります。

頚椎へのマニピュレーションによる事故が世界中で起きており、問題視されています。

そもそも脊柱のサブラクセーションはあるのでしょうか?

という研究をまずは紹介します。

◆カイロのサブラクセーションについての研究

「カイロプラクターは、サブラクゼーションとして知られ、推定される脊柱障害を特定、分析、診断し、この障害の修正に脊椎マニピュレーション(アジャスト)方式を適用すると主張している。

この検査の目的は、サブラクセーション構造の疫学に関する現在のエビデンスを確認し、原因因子としての意義の疫学的基準を適用し、亜脱臼を評価することである。

性別や人種、場所、さらには状況の異なる人々に一貫してサブラクセーションが見られることを示す研究は見つからなかった。

サブラクセーションを病気の原因因子として分ける生物学的妥当性を提供する研究はなかった。

カイロプラクティックサブラクセーションが、病気のプロセスに関連している、または介入を必要とする最適以下の健康状態を作り出しているという裏付けとなるエビデンスは見つからない。

結論:因果関係の基本的な基準を満たすエビデンスはかなり不足している。この重要な支持となる疫学的エビデンスの欠如は、カイロプラクティック・サブラクセーションの正式な発表を禁止している。

An epidemiological examination of the subluxation construct using
Hill's criteria of causation Timothy A Mirtz, Lon Morgan, Lawrence H Wyatt and Leon Greene

 

◆狙った脊柱へのモビライゼーションと効果は関連しない。

狙った脊柱でなくとも同じように効果が出たという研究です。

「慢性の非特異的頸部痛患者における症状のある、または症状のない頸部レベルで、関節モビライゼーションを適用する効果を比較することである。

18歳から65歳までの48人の患者で、最低3ヶ月の非特異的頸部痛を呈した患者が研究に採用された。

(i)対照グループ:最も症候のある脊椎レベルがモビライゼーションされた。 (ii)実験グループ:無作為に選択された脊椎レベルが選択され、モビライゼーションされた。すべての患者が1回の治療を受けた。

痛みを伴う自動運動と脊椎触診中の即時の痛みの強さの著しい変化は、脊柱モビライゼーション後に達成された。

しかし、両方のグループは同様に痛みの軽減を示し、関節モビライゼーションによる痛みの軽減は、モビライゼーションされる脊柱レベルにおいて特有ではないことを示唆している。

Applying Joint Mobilization at Different Cervical Vertebral Levels does not Influence Immediate Pain Reduction in Patients with Chronic Neck Pain: A Randomized Clinical Trial

Rafaela L. Aquino, BPhty1; Priscila M. Caires, BPhty; Fernanda C. Furtado, BPhty; Aline V. Loureiro, BPhty; Paulo H. Ferreira, PhD; Manuela L. Ferreira, PhD

 

◆脊柱マニピュレーションはあらゆる症状に効くわけではない。

脊柱マニピュレーションは下記のような様々な症状に効くと言われています。しかし実際はどうなのでしょうか?

「腰痛、頚部痛、頭痛、あらゆる非脊柱痛、原発性および続発性の月経困難症、乳児疝痛 、喘息、アレルギー、頚性めまい、あらゆる状態」

結論:これらのデータを総合すると、脊柱マニピュレーションがあらゆる状態に対する効果的な介入であることは実証されない。

副作用の可能性を考えると、このレビューは脊柱マニピュレーションが推奨される治療であることを示唆していない。

最近のシステマチックレビューでは、脊柱マニピュレーションがあらゆる病状に効果的であるという証拠はほとんどない。

副作用と利益のバランスは、理学療法運動など他の治療オプションよりも脊柱マニピュレーションを支持しない。」

A systematic review of systematic reviews of spinal Manipulation
E Ernst P H Canter

ちなみに内臓への影響をうたっていたりもしますが、内臓への自律神経節は脊柱の前面にあり、脊髄神経とは異なる経路になっています。

ですので脊柱マニピュレーションによる影響というよりは、刺激によって自律神経が変化し、内臓が変化する可能性はあるかと思います。これは内臓マニピュレーションと近いサイエンスによる考え方です。

 

◆急性腰痛へのマニピュレーションは、他の治療法と変わらない効果。

「脊椎マニピュレーション療法は、不活発な介入、偽の脊椎マニピュレーション療法、または他の介入を追加した場合よりも、急性腰痛のある被験者に効果的ではない。 脊椎マニピュレーション療法は、他の推奨される治療法よりも優れているとは思われない。」

コクランレビュー
Spinal manipulative therapy for acute low-back pain (Review)
Rubinstein SM, Terwee CB, Assendelft WJJ, de Boer MR, van Tulder MW

「脊椎マニピュレーション療法は、一般開業医のケア、鎮痛薬、理学療法、運動、または腰痛教室を上回る統計的または臨床的に有意な利点はなかった。慢性腰痛患者の結果は同様だった。

結論:脊髄の操作療法が、急性または慢性の腰痛患者に対する他の標準治療よりも優れているという証拠はない。」

Spinal Manipulative Therapy for Low Back Pain A Meta-Analysis of Effectiveness Relative to Other Therapies

Willem J.J. Assendelft, MD, PhD; Sally C. Morton, PhD; Emily I. Yu, MPH; Marika J. Suttorp, MS; and Paul G. Shekelle, MD, PhD

 

◆脊柱マニピュレーションの副作用

重篤な副作用を含め数多くの副作用が世界的に報告されており、数多くのサイエンスベースのセラピストからは、かなり批判されているのが現状です。

◆頸椎へのマニピュレーション

「最も頻繁に報告されている損傷は、動脈解離または動脈の痙攣、脳幹の傷害を伴った。死亡は32例(18%)で発生した。

理学療法士は2%未満の症例に関与しており、理学療法士が提供する頸椎へのマニピュレーションに起因する死亡はない。

文献では、頚椎へのマニピュレーションの利点がリスクを上回ることを実証していない。」

Manipulation of the Cervical Spine: Risks and Benefits.
Physical Therapy . Volume 79 . Number 1 . January 1999

「2001年、5つの前向き研究のシステマチックレビューにより、すべてのカイロプラクティック患者の約半数が、軽度から中程度の一時的な副作用を経験していると結論付けられた。局所的または放射性の痛み、頭痛、および疲労が最も頻繁な副作用であった。

それ以降、さらに2つの前向き研究は、このような副作用が患者の30%および61%で発生することを報告した。

カイロプラクティックが軽度の副作用の非常に高い発生率と関連しているという否定できない証拠がある。

上部脊椎の脊椎操作は、しばしば深刻な血管事故に関連付けられている。

システマチックレビューは2001年11月までのデータを要約し、最新のエビデンスのレビューを更新した。これにより、約700の重篤な合併症と約50人の死亡が明らかになった。

最近のシステマチックレビューでは、小児における脊柱マニピュレーションの有害作用の14症例が見つかった。そのうち10症例はクモ膜下出血や対麻痺(下肢の麻痺)など深刻な合併症を伴った。」

Chiropractic: A Critical Evaluation
Edzard Ernst, MD, PhD, FRCP, FRCPEd Complementary Medicine, Peninsula Medical School, Universities of Exeter & Plymouth, Exeter, United Kingdom

 

◆脊柱モビライゼーションの効果は、内因性疼痛抑制系の可能性。

「脊柱モビライゼーションが神経生理学的影響を引き起こし、痛覚過敏(局所および/またはモビライゼーション部位の遠位)、交感神経興奮、筋機能の改善をもたらすことを示す証拠がある。

結論。これらの発見は、中枢神経系によって媒介される内因性疼痛抑制系の関与を示唆しているが、これはまだ直接調査されていない。」

Mechanism of Action of Spinal Mobilizations A Systematic Review
Ion Lascurain-Aguirreben˜ a, MSc, ,y Di Newham, PhD,y and Duncan John Critchley, PhDy

「上部頸椎をモビライゼーションすることを目的とした徒手を受けた実験群において、わずかではあるが血漿中β-エンドルフィン濃度の統計的な増加を発見した。

ChristianらおよびSandersらはどちらも、脊髄マニピュレーション後の偽および対照群に関して実験群において血漿中β-エンドルフィン濃度の増加を見出すことができなかった。

頸部と胸部の両方のグループは、それぞれの介入後にニューロテンシンとオキシトシンの減少、ならびにオレキシンA血漿濃度の増加を見ました。

複数のレビューもまた、脊椎マニピュレーションの疼痛調節メカニズムを調査しており、鎮痛の起源は神経生理学的な性質であり、ある種の下行性疼痛調節回路を通して起こることに同意した。

これは、疼痛耐性の増強および感作の減少を含む、SMTに関連して観察された鎮痛作用によるものである。

しかしながら、正確な回路は完全には理解されておらず、異なる種類の脊椎マニピュレーション、すなわちそれらが行われる速度およびそれらが行われる位置は、異なる下行性疼痛調節機構を示す異なる神経化学的反応を引き出し得る。

※ニューロテンシン…鎮痛作用、オレキシン…痛みを感じにくくする作用、SMT…脊髄中脳路。

人の接触による鎮痛作用とプラセボの両方が、内因性オピオイドまたは内在性カンナビノイド反応によって媒介される…

ほぼすべての種類の徒手療法は、下行性疼痛調節回路に関連する神経生理学的反応を引き出すことが示されている。」

引用元:The Role of Descending Modulation in Manual Therapy and Its Analgesic Implications: A Narrative Review
Andrew D. Vigotsky and Ryan P. Bruhns

 

まとめ

これらのことから、

・カイロでいうサブラクセーションのエビデンスはない。

・特定の脊柱へのマニピュレーションは、異なるレベルへのマニピュレーションと効果は変わらない。

・あらゆる症状に効くわけではない。

・重篤な副作用は数多く報告されている。

・脊柱マニピュレーションの効果は、中枢神経系による下行性疼痛抑制系による可能性がある。

ということが分かります。

◆考察

サイエンスとエビデンスから見れば、構造や組織を力で変えようとする必要はないし、そもそもズレという物の具体性がないということが分かります。

骨格を調整するという認知バイアスやキャッチーな言葉で勉強を終わりにせずに、その先にある本当の鎮痛機序に視野を広げるべきです。

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