慢性疲労症候群の疼痛はどう起こるのか|固有受容器とミクログリアの研究
慢性疲労症候群(CFS)は、強い疲労、痛み、倦怠感、睡眠障害などを特徴とする疾患です。
現在の医学でも明確な原因は特定されていませんが、CFS患者様では慢性疼痛を伴うことが多く、線維筋痛症との重複も報告されています。
近年の研究では、この疼痛の一部を、筋肉や腱からの固有受容入力と脊髄でのミクログリア反応の連続として捉える視点が示されています。
慢性疲労症候群の疼痛をどう捉えるか
慢性疼痛は、単なる組織損傷だけでは説明できないことがあります。
とくにCFSのように、明確な器質的異常だけでは症状の全体像を捉えにくい病態では、末梢からの入力と中枢神経での処理を分けずに考える視点が重要です。
筋肉や腱には固有受容器が存在します。
代表的なものには筋紡錘やゴルジ腱器官があり、筋長、筋張力、関節位置などの情報を感知して、運動制御や姿勢制御に関与しています。
一方、ミクログリアは中枢神経系に存在する免疫細胞です。
脳や脊髄で神経環境を監視し、必要に応じて炎症や神経活動に関わる物質を放出します。
ここでいうサイトカインは、免疫細胞どうしの情報伝達に使われるタンパク質であり、ケモカインは細胞を特定の場所へ呼び寄せる働きをもつシグナル分子です。
こうした反応が過剰になると、今ある痛みの維持や増幅に関わる可能性があります。
固有受容入力とミクログリア反応はどうつながるのか
慢性疲労症候群のラットモデルを用いた研究では、持続的ストレス下で固有受容器の活動が高まると、脊髄反射弓に沿った神経活動が持続し、それに伴ってミクログリアが活性化する可能性が検討されました。
脊髄反射弓とは、末梢から入った感覚情報が脊髄に入り、そこで処理されたのちに運動や反応として出力される神経回路のことです。反射という語が入りますが、ここでは単純な反射だけではなく、末梢入力が脊髄レベルの神経活動に連続して影響する経路として理解するとわかりやすいです。
また、足関節を固定して固有受容入力を抑えた条件では、疼痛行動の低下に加えて、脊髄でのミクログリア蓄積も有意に抑制されました。
つまりこの研究は、疼痛を単なる組織損傷の結果としてではなく、固有受容入力の過活動、反射弓に沿った神経活動、脊髄後角での神経免疫反応が連続して起こる現象として捉えています。
少なくともこのモデルでは、筋や腱からの入力が過度に持続すること自体が、長引く痛みの形成に関与していると考えられます。
また論文内では、筋活動の急激な増加が線維筋痛症患者様の疼痛に関わる可能性にも触れられており、ストレス、筋活動、反射活動、固有受容入力、中枢神経免疫反応を切り離さずに考える必要があります。
「固有受容器の活動亢進は、慢性疲労症候群のラットモデルにおいてミクログリアを介した長期持続性疼痛を誘発する。」
Hyperactivation of proprioceptors induces microglia-mediated long-lasting pain in a rat model of chronic fatigue syndrome. Yasui M, et al.
結論|慢性疲労症候群の疼痛は神経系全体の相互作用として考える
この研究から示唆されるのは、固有受容器の過活動がミクログリアを活性化し、長く続く痛みの形成に関与する可能性があるという点です。
しかも、末梢組織の明確な損傷がなくても、ストレス、筋活動、反射弓、脊髄後角での神経免疫反応が重なることで慢性疼痛が生じる可能性があります。
慢性疼痛は単なる組織損傷では説明できません。
筋受容器、末梢神経、中枢神経を別々にみるのではなく、神経系全体の相互作用として理解する視点が必要です。
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