骨ランドマーク評価はどこまで信頼できるのか|姿勢評価・スクワット評価と骨格個体差

目次

骨ランドマーク評価はどこまで信頼できるのか

徒手療法や運動療法では、骨格のランドマークを基準として、姿勢やアライメントを評価する方法が広く用いられています。

上前腸骨棘、腸骨稜、大転子などを触知し、骨盤の傾きや関節位置を判断する方法は、多くの臨床現場で日常的に使われています。

しかし、人体の骨格は完全な左右対称ではありません。骨形態には個体差があり、同一個体でも左右差が存在します。

たとえば股関節の寛骨臼構造、大腿骨頸部前捻角、骨盤形態などには幅があり、それぞれが姿勢や動作の見え方に影響します。そのため、骨をランドマークとして姿勢や動作を評価する方法には一定の限界があります。

見えている左右差や位置関係が、機能障害そのものではなく、もともとの解剖学的な違いを反映している可能性があるためです。

▶︎ 姿勢評価は信頼できるのか

▶︎ 徒手検査を吟味する

骨盤形態の個体差とランドマーク評価の問題

骨盤の前傾や後傾は、上前腸骨棘や上後腸骨棘の位置関係から判断されることがあります。しかし下記研究では、このような評価そのものが骨盤形態の通常変異に影響される可能性が指摘されています。

この論文では、骨盤の向きを骨ランドマークから推定する一般的な方法が、形態学的な個体差によって誤って解釈される可能性を示しています。

つまり、触れているランドマークの位置差が、そのまま骨盤運動や骨盤アライメントの異常を意味するとは限りません。

少なくとも、ランドマークだけで前傾・後傾を断定する評価には限界があり、形態差を機能異常として読んでしまう危険があります。

「一般的な評価方法であるように、骨盤の方向を識別するために骨のランドマークを使用することは、通常の形態学的変動によって影響される可能性があり、それはどんな基本的な評価の結果にも大きく影響する可能性がある。」

Variation in pelvic morphology may prevent the identification of anterior pelvic tilt.
Preece SJ, et al.

▶︎ 触診評価はどこまで信頼できるのか

大腿骨頸部前捻角の個体差

股関節の回旋可動域やスクワット時のつま先の向きは、しばしば機能障害のサインとして解釈されます。

しかし大腿骨頸部前捻角を扱った研究では、正常範囲そのものにかなりの幅があり、さらに左右差も珍しくないことが示されています。

これらの研究が示しているのは、股関節の内旋・外旋の差や足部の向きの違いを、単純に異常とみなせないということです。左右差を見つけた時点で機能障害と結論づけるのではなく、その背景にある骨格構造の違いも含めて読む必要があります。

「研究では、大腿骨頸部角度の正常な変動だけではなく、個人においても左側と右側の間の非対称的な差異を見いだした。」

A study to determine the angle of anteversion of the neck of femur.
Kingsley PC, et al.

標準フォームの落とし穴

スクワット評価では、足幅、つま先の角度、胴体の傾き、しゃがみ込みの深さなどを一定にそろえたうえで、フォームの良し悪しを判定する方法がよく使われます。

しかし骨格構造、四肢長、股関節の向きに個体差があるなら、全員に同じ基準を当てはめること自体に無理があります。

スクワットを論じた研究では、股関節構造の通常変異に加えて、大腿骨や脛骨、胴体の長さの違いも、最適なフォームの個別化に関わると述べられています。

そのため、標準姿勢からのズレをすぐに補正対象とみなすのではなく、そのフォームがその人の構造に合っているかを考える必要があります。

少なくとも、全員に同じ足幅や同じつま先角度を求める考え方は、人間の解剖学的多様性を十分に反映していません。

「股関節構造の通常な解剖学的変化は、胴体、大腿骨、脛骨の長さに加えて、最適なスクワットが個別化されることを示している。

ベースラインを作成するために誰もが標準化されたスクワットポジションを使用することを望むかもしれないが、そのようなベースラインは、人間の骨格構造の解剖学的変動のために運動の処方において可能ではないかもしれない。」

The corrective exercise trap.
Tumminello N, et al.

結論|骨ランドマークだけで姿勢を評価することの限界

骨格形態には個体差や左右差が存在するため、骨ランドマークのみを基準として姿勢や身体機能を評価する方法には限界があります。

骨盤形態、大腿骨頸部前捻角、寛骨臼の向き、四肢長などに幅がある以上、触れている位置差や見えている左右差が、そのまま機能異常や原因を意味するとは限りません。

また、スクワットのような運動でも、全員に同じ足幅や同じフォームを求める考え方は、解剖学的多様性を十分に反映していないと考えられます。

したがって姿勢評価や運動評価では、骨ランドマークだけで結論づけるのではなく、動作全体、身体の反応、課題遂行の質、さらには評価者側の解釈バイアスも含めて総合的に判断することが重要です。


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