上腕骨外側上顆炎(テニス肘)を組織や構造だけでみてよいのか|整形外科領域の臨床再考

目次

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)とは何か|まず押さえたい基本像

上腕骨外側上顆炎は、肘外側の痛みを、外側上顆部の伸筋腱付着部、とくに短橈側手根伸筋周囲の変化から説明する概念です。

一般には、反復的な使用、把持、前腕回外/回内の負荷によって、外側上顆部に痛みが生じると説明されます。コップを持つ、ドアノブを回す、雑巾を絞る、荷物を持つ、パソコンや工具作業を続けるとつらいといった訴えが多く、圧痛や把持時痛として現れやすいのが特徴です。

ただし、これは単純な炎症というより、慢性経過では腱の変性や負荷耐性の低下を含む概念として扱われます。

進行する筋力低下、広範な感覚脱失、強い安静時痛、発熱、腫脹、外傷後発症、頚部から手まで連続する強いしびれがある場合は、保存的介入のみで進めず、医師評価や追加検査を優先すべきです。

最近の研究からみた上腕骨外側上顆炎(テニス肘)|いま押さえたい知見

上腕骨外側上顆炎では、近年も病態理解、保存療法、手術適応をめぐる整理が続いています。ここでは、炎症より変性として理解される点、手術の限界、注射療法の限界を確認します。

外側上顆炎は“炎症”というより、腱の変性病変として理解される。

「Kraushaar BS, Nirschl RP. Tendinosis of the elbow (tennis elbow). Clinical features and findings of histological, immunohistochemical, and electron microscopy studies. J Bone Joint Surg Am. 1999;81(2):259-278.」

テニス肘を単純な炎症モデルだけで理解しないための土台になる研究です。

「短橈側手根伸筋の変性部分を外科的に切除しても、慢性的なテニス肘の管理において、プラセボ手術以上の利点はない。」

「Kroslak M, Murrell GAC. Surgical Treatment of Lateral Epicondylitis. J Shoulder Elbow Surg. 2018.」

慢性的な肘外側痛を、局所組織の切除だけで説明しきれないことを考えるうえで重要です。

「PRP注射は、慢性外側上顆腱炎の管理には、有効ではないという強いエビデンスがある。」

「de Vos RJ, Windt J, Weir A. Strong evidence against platelet-rich plasma injections for chronic lateral epicondylar tendinopathy: a systematic review. Br J Sports Med. 2014;48(12):952-956.」

注射療法も、理論どおりに安定した有効性が示されているわけではないことを示す整理です。

▶︎ 腱症とは何か|腱炎との違いを理解する

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)を再検討する視点|局所所見だけでは足りない理由

上腕骨外側上顆炎は、外側上顆部の腱付着部の問題として語られやすい概念ですが、それだけでは読み切れない場面もあります。

重要なのは、画像や局所圧痛があっても、現在の痛みの強さや広がり方をそのまま説明できるとは限らないことです。逆に、典型的な外側肘痛があっても、腱だけの問題で対応できないことがあります。

さらに、肘外側から前腕外側へ広がる不快感や感覚異常では、腱付着部だけでなく、橈骨神経や外側前腕皮神経の分布を踏まえた方が整理しやすいことがあります。

構造的な異常の意味づけを整理したい方は、画像診断シリーズもあわせて確認してください。

▶︎ 画像診断と痛みの関係

疼痛科学からみた上腕骨外側上顆炎(テニス肘)|増悪条件から特徴をつかむ

上腕骨外側上顆炎として語られる症状では、どの条件で強まり、どの場面で変わるのかを追うことが大切です。

把持で悪化しやすいのか、手関節の動きで増えるのか、前腕回外回内で変わるのか、肘外側への接触や圧迫で誘発されるのか、休息で落ち着くのかをみることで、症状の特徴は整理しやすくなります。外側上顆の一点に限局するのか、前腕外側へ続くのかを分けてみるだけでも、評価の方向は変わります。

また中枢神経の変化も関与する可能性があります。

▶︎ 痛みの中枢神経処理とは

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)を末梢神経からどうみるか|分布から読み直す

ここで大切になるのが、末梢神経の視点です。

肘外側に限局した圧痛や把持時痛では、外側上顆部の局所負荷を考えやすい一方で、前腕外側へ続くヒリヒリ感、しびれ、接触過敏、動作時の鈍痛では、橈骨神経や外側前腕皮神経の分布を踏まえた方が整理しやすいことがあります。

つまり、肘外側痛としてまとめられる症状でも、局所の腱付着部なのか、橈骨神経系の深部症状なのか、外側前腕皮神経に沿う表在症状なのかを分けてみることで、評価の焦点は変わります。

▶︎ 橈骨神経とは

▶︎ 外側前腕皮神経とは

▶︎ 前腕外側の痛みやしびれの原因

結論

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)をみる際には、外側上顆の腱付着部だけで完結させず、肘外側から前腕外側へ広がる症状分布、感覚の質、把持や手関節伸展、前腕回外回内での変化を丁寧に読み分けることが重要です。

▶︎ 整形外科領域の臨床再考とは何か


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