はじめに|神経叢という神経構造

人体の末梢神経は、脊髄からそのまま身体へ分布するわけではありません。
脊髄神経は脊髄から出たあと複数の枝に分かれ、その過程で神経線維が再分配されます。
この再分配によって形成される神経ネットワークが神経叢(nerve plexus)です。
神経叢は、脊髄神経からの神経線維を再構成し、身体の各部へ末梢神経を送り出す重要な解剖学的構造です。
臨床では、神経症状の分布や神経障害の部位を理解するために神経叢の構造を理解することが重要になります。
脊髄神経の構造|前根・後根と混合神経
脊髄神経は脊髄から出る段階で2つの神経根に分かれています。
前根(ventral root)
運動神経線維を含み、筋肉へ運動指令を伝えます。
後根(dorsal root)
感覚神経線維を含み、皮膚や組織からの感覚情報を脊髄へ伝えます。
これら2つの神経根は椎間孔付近で合流し、1本の脊髄神経になります。
この段階で脊髄神経は
・感覚神経
・運動神経
の両方を含む混合神経になります。
▶︎神経根とは何か
脊髄神経の分岐|前枝と後枝
混合神経となった脊髄神経は、椎間孔を出たあとすぐに
・前枝(ventral ramus)
・後枝(dorsal ramus)
に分かれます。
重要な点として、前枝と後枝はいずれも混合神経であり、感覚線維と運動線維の両方を含みます。
前枝は主に
- 体幹前面
- 四肢
へ分布する神経を形成します。
一方、後枝は
- 背部の深部筋
- 背部皮膚
へ分布します。
後枝は互いに合流して神経叢を形成することはなく、各椎間レベルごとに背部へ直接分布します。
▶︎末梢神経とは何か
神経叢とは何か
神経叢とは、複数の脊髄神経前枝が互いに合流し、その後再び枝分かれして末梢神経を形成する神経ネットワークです。
この構造によって、1本の末梢神経には複数の神経根からの神経線維が含まれることになります。
例えば腕神経叢では
- C5
- C6
- C7
- C8
- T1
の脊髄神経前枝が合流し、そこから
- 正中神経
- 尺骨神経
- 橈骨神経
などの主要な末梢神経が形成されます。
このような神経線維の再分配は、神経障害の症状分布を理解するうえで重要な構造です。
末梢神経の種類|感覚神経・運動神経・混合神経
神経叢から分岐する末梢神経には、機能によっていくつかの種類があります。
感覚神経
皮膚や組織からの感覚情報を中枢神経へ伝える神経です。
運動神経
中枢神経から筋肉へ運動指令を伝える神経です。
混合神経
感覚線維と運動線維の両方を含む神経です。
例えば正中神経や尺骨神経、橈骨神経などは混合神経です。
一方で、神経叢から分岐する神経の中には純粋な運動神経も存在します。
例えば
- 前骨間神経
- 後骨間神経
などは運動線維のみを含む神経として知られています。
また、外側大腿皮神経や上殿皮神経などのように感覚線維のみを含む純粋感覚神経も存在します。
このように末梢神経は機能によってさまざまな構成を持っています。
代表的な神経叢
人体にはいくつかの主要な神経叢が存在します。
頚神経叢
C1〜C4の脊髄神経前枝から構成され、頚部や後頭部の感覚や横隔神経を含みます。
腕神経叢
C5〜T1の脊髄神経前枝から構成され、上肢の運動と感覚を支配する末梢神経を形成します。
腰神経叢
L1〜L4の脊髄神経前枝から構成され、大腿前面などの神経を形成します。
仙骨神経叢
L4〜S4の脊髄神経前枝から構成され、殿部や下肢へ分布する神経を形成します。
これらの神経叢から、多くの末梢神経が枝分かれして身体の各部へ分布します。
結論|神経叢と末梢神経の分配構造
脊髄神経は前根と後根が合流して混合神経となり、その後前枝と後枝に分かれます。
前枝は互いに合流して神経叢を形成し、そこから末梢神経が形成されます。
一方、後枝は神経叢を形成せず、背部の筋や皮膚へ直接分布します。
また神経叢から分岐する末梢神経には、感覚神経、運動神経、混合神経などさまざまな機能的構成が存在します。
神経叢の理解は、末梢神経の分布や神経症状を理解するための重要な基礎知識となります。
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