ストレートネックは本当に危険なのか|頚部痛とMRI・画像所見を批判的に吟味する

画像初見と痛み
目次

はじめに|ストレートネックは本当に危険なのか

頚部痛の臨床では、MRIやX線の画像所見が痛みの原因として説明されることがあります。

代表例としては、ストレートネック、頸椎前弯の減少、椎間板変性、椎間板膨隆などが挙げられます。

またスマートフォン使用による「テキストネック」も、首の痛みの原因として広く説明されることがあります。

しかし近年の研究では、画像上の構造変化と症状の間に必ずしも明確な関連が存在しない可能性が指摘されています。

つまり、画像所見だけで症状の原因を説明することには限界がある可能性があります。

本記事では、頚部痛と画像所見の関係を研究から整理し、臨床的に批判的に検討します。

ストレートネックと首の痛み|頸椎前弯研究

頸椎前弯の減少やストレートネックは、首の痛みの原因として説明されることがあります。

しかし頸椎カーブと頚部痛の関連を調べた研究では、両者の間に明確な関連は確認されていません。

「本研究の目的は、45歳以上における首の痛みの存在と正常な頸部前弯の変化との間の相関関係を調べることであった。当院で下肢障害の治療を受けていたボランティア177人が参加した。

頸椎の矢状X線写真が撮影され、過去12ヶ月間の首の痛みと身体障害について質問され、アンケートが完了した。

我々の研究の結果は、頸椎(または個々の分節)の矢状方向の整列と首の痛みとの間に関連性を示さなかった。同様に、首の痛みのあるグループでは、前弯と痛みの激しさ、障害、健康管理などの症状の重症度の指標との間に関係はなかった。」

The association between cervical spine curvature and neck pain.
D. Grob, H. Frauenfelder, and A. F. Mannion

この研究は、頸椎前弯と頚部痛の間に有意な関連がない可能性を示しています。

臨床ではストレートネックが痛みの原因として説明されることがありますが、

画像上の整列変化だけで症状を説明することは難しい可能性があります。

頚部痛の理解には構造変化だけでなく、神経系の情報処理を含めた視点が必要と考えられます。

テキストネックと頚部痛

スマートフォン使用による「テキストネック」も、頚部痛の原因として説明される概念です。

しかし若年成人を対象とした研究では、テキストネックと頚部痛の関連は確認されていません。

「リオデジャネイロ州の公立高校の18歳から21歳の若年成人150人を対象とした観察横断的研究を行った。
首の姿勢は、携帯電話のテキストメッセージ中に参加者の自己認識と理学療法士の判断によって評価されました。携帯電話のテキストメッセージ送信中の首の姿勢と首の痛みの関係を調べた。

結論 本研究では、18〜21歳の若年成人におけるテキストネックと頚部痛との間の関連性は示されなかった。

調査結果は、携帯電話のテキストメッセージ送信中の頸部の姿勢が、頸部痛の罹患率の増加に関連しているという考えに疑問を投げかけている。」

Text neck and neck pain in 18-21-year-old young adults.
Damasceno GM, et al. Eur Spine J. 2018.

この研究は、スマートフォン使用時の頸部姿勢と頚部痛の関連が明確ではないことを示しています。

一般的にはテキストネックが痛みの原因と説明されることがありますが、姿勢のみで症状を説明することは難しい可能性があります。

頚部痛には活動量、心理的要因、神経系の感作など複数の要因が関与している可能性があります。

無症状者にも多い頸椎MRI・X線の画像所見

画像検査では、痛みのない人にも多くの構造変化が確認されることが知られています。

20~65歳の無症状者を対象とした研究では次のように指摘されています。

「レントゲン写真の異常は、脊椎の構造変化を表すが、それらは必ずしも症状を引き起こさないことを認識することが重要である。」

Roentgenographic findings of the cervical spine in asymptomatic people.

この研究は、画像上の異常が必ずしも症状を伴うわけではないことを示しています。

臨床ではレントゲンやMRIの所見が痛みの原因として説明されることがありますが、構造変化は加齢に伴う一般的な所見である可能性があります。

症状の理解には画像だけでなく、神経系の反応や臨床症状を含めた評価が必要になります。

MRI研究|無症状者にも多い椎間板膨隆

MRI研究でも、無症状者に多くの構造変化が存在することが報告されています。

20歳から70歳の痛みを訴えていない1211人を対象とした研究では次の結果が示されています。

「ほとんどの被験者は椎間板の膨隆(87.6%)を示し、頻度、重症度、およびレベルに関して年齢とともに有意に増加した。これらの数値は年齢とともに、特に50歳以降に増加した。」

Abnormal findings on magnetic resonance images of the cervical spines in 1211 asymptomatic

この研究は、椎間板膨隆などのMRI所見が無症状者にも高頻度で存在することを示しています。

つまり画像上の異常があっても必ずしも痛みを伴うわけではありません。

臨床では画像所見のみで症状の原因を断定するのではなく、症状の分布や神経系の状態を含めた評価が重要になります。

椎間板ヘルニアは自然退縮する可能性

椎間板ヘルニアは、構造的な損傷として説明されることが多い病態です。

しかし近年の研究では、椎間板ヘルニアは時間経過とともに自然に縮小、あるいは消失する可能性があることが報告されています。

椎間板ヘルニアの自然退縮を調べたシステマティックレビューでは、次のような結果が報告されています。

・膨隆(bulging):13%
・突出(protrusion):52%
・脱出(extrusion):70%
・遊離(sequestration):96%

The probability of spontaneous regression of lumbar herniated disc: a systematic review
Zhong M, Liu JT, Jiang H, Mo W, Yu PF. Clinical Rehabilitation. 2017.

この研究は、椎間板ヘルニアが時間経過とともに自然退縮する可能性を示しています。

臨床ではヘルニアが痛みの原因として説明されることがありますが、画像上の構造変化は動的に変化する可能性があります。

そのため画像所見のみで症状の原因を断定するのではなく、神経系の反応や臨床症状を含めた評価が重要になります。

結論|MRI異常=痛みの原因ではない可能性

これらの研究から示唆されるのは、次の点です。

頸椎前弯やテキストネックなどの姿勢変化は、頚部痛と必ずしも関連していない可能性があります。

また椎間板変性や椎間板膨隆などの画像所見は、無症状者にも高頻度で存在することが報告されています。

つまり、MRIやX線の画像所見だけで頚部痛の原因を説明することには限界がある可能性があります。

そのため臨床では、画像所見のみで症状を説明するのではなく、症状の分布や末梢神経の状態と入力、そして神経系の反応を含めた臨床推論が重要になります。

 


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