はじめに|膝の画像所見は痛みの原因なのか
膝の痛みの臨床では、MRIやX線などの画像検査が広く用いられています。
代表的な画像所見として
・半月板損傷
・変形性膝関節症
・軟骨変性
・骨棘形成
などが挙げられます。
これらの構造変化は膝痛の原因として説明されることが多いですが、近年の研究では画像所見と症状が必ずしも一致しない可能性が指摘されています。
つまり、画像で確認された構造異常だけでは膝痛を十分に説明できない場合があるということです。
本記事では、膝の画像所見と痛みの関係について研究を整理し、臨床的に検討します。
半月板損傷は無症状者にも多い|膝MRI研究
膝のMRI研究では、半月板損傷が無症状者にも高頻度で確認されることが報告されています。
991人を対象としたMRI研究では次の結果が示されています。
「半月板損傷の有病率は、50〜59歳の女性の19%、70〜90歳の男性の53%におよんだ。半月板損傷は、膝に痛みを持つ患者の63%、症状のない患者の60%にあった。膝半月板の損傷があった被験者の61%は前の月に痛みを感じていなかった。結論:膝のMRIに関する半月板の所見は、一般的であり、年齢とともに増加する。」
Incidental meniscal findings on knee MRI in middle-aged and elderly persons.
Englund M, et al. N Engl J Med. 2008.
この研究は、半月板損傷が痛みのない人にも高頻度で存在することを示しています。特に年齢とともに有病率が増加することから、多くの半月板損傷は必ずしも症状を伴う病的変化ではなく、加齢に伴う変性所見である可能性があります。そのため、MRI所見のみで膝痛の原因を断定することには注意が必要です。
変形性膝関節症と膝痛
変形性膝関節症も、膝痛の原因としてよく説明される画像所見です。
しかし研究では、X線所見と膝痛が必ずしも一致しない可能性が報告されています。
ある研究では次の結果が示されています。
「レントゲン写真上、変形性膝関節症が319人に認められたが、膝の痛みを訴えた人は全体の47%にすぎなかった。」
Analysis of the discordance between radiographic changes and knee pain in osteoarthritis of the knee.
さらに別の研究でも同様の結果が報告されています。
「変形性膝関節症の疼痛と機能スコア、X線学的重症度との間に相関は認められなかった。」
The correlation between clinical and radiological severity of osteoarthritis of the knee. 2022.
これらの研究は、X線で確認される変形性膝関節症の重症度と膝痛が必ずしも一致しない可能性を示しています。臨床では関節の変形や軟骨変性が痛みの原因として説明されることがありますが、研究結果を見ると構造変化だけで症状を説明することは難しい場合があります。
結論|膝の画像所見=痛みの原因ではない可能性
これらの研究から示唆されるのは次の点です。
半月板損傷などの膝MRI所見は、無症状者にも高頻度で存在し、年齢とともに増加することが報告されています。
また変形性膝関節症のX線所見と膝痛も必ずしも一致しない可能性があります。
つまり、MRIやX線の画像所見だけで膝痛の原因を説明することには限界がある可能性があります。
膝痛を理解するためには、構造変化だけでなく、末梢神経の状態と入力、そして神経系の情報処理を含めた神経科学の視点が重要になります。
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