肩鎖関節症とは何か|まず押さえたい基本像
肩鎖関節症は整形外科領域でよくみられる疾患名です。
肩の上部痛、肩峰付近の圧痛、水平内転や挙上での不快感、荷物を持つ動作や腕を胸の前に持ってくる動作でのつらさとして語られることが多く、肩上部だけでなく鎖骨周囲や頸部近くに違和感が広がることもあります。
一般には、加齢変化、反復性の負荷、外傷後変化、炎症、オーバーユースなどで説明され、運動療法、生活指導、物理療法、薬物療法、徒手療法などが選択されます。
また、強い安静時痛、急速な腫脹、発熱、著明な外傷歴、明らかな神経脱落症状がある場合は、保存的介入のみで進めず、医師評価や画像検査を優先すべきです。
最近の研究からみた肩鎖関節症|いま押さえたい知見
肩鎖関節症では、近年も研究が続いています。ここでは、現在支持されている評価、介入、説明モデルを確認します。
まず押さえたいのは、無症状の肩でも肩鎖関節を含む異常所見が少なくないことです。
「肩の無症状者の異常は96%に見られた。超音波検査では肩峰下-三角筋下滑液包肥厚が78%、変形性肩鎖関節症が65%、棘上筋腱炎が39%、肩甲下筋腱炎が25%、棘上筋腱滑液包外側の部分肥厚が22%、肩関節唇後部の異常が14%だった。」
「Ultrasound of the Shoulder: Asymptomatic Findings in Men.」
下記研究では、肩鎖関節の変形性変化は無症状の人でも多く、骨格標本で48%、無症状肩MRIで70%に所見がみられました。
しかもその頻度は加齢とともに上がるため、画像で肩鎖関節の変形があっても、それだけで現在の症状の原因とみなすことは慎重であるべきだとされています。
Prevalence of acromioclavicular joint osteoarthritis in people not seeking care: A systematic review.
無症候の肩鎖関節症の多くが長期でも無症候のままであることも、所見の意味づけには慎重さが必要であることを示しています。
「無症状の肩鎖関節の変形性関節症は、7年間で90%の症例で無症状のままであった。
他の理由で肩の手術を受ける際に、無症状の肩鎖関節の変形性関節症を同時に切除することは、すべての患者に適応となるわけではない。」
Seven-year course of asymptomatic acromioclavicular osteoarthritis diagnosed by MRI.
疼痛科学からみた肩鎖関節症|中枢神経での処理も含めて考える
肩鎖関節症では、局所の組織変化だけでなく、その入力が中枢神経でどのように処理されているのかをみる必要もあります。
そのため、画像で確認される局所所見だけで症状を理解するのではなく、末梢からの入力と中枢神経での処理をあわせて捉えることが大切です。
肩鎖関節症を末梢神経からどうみるか|分布から読み直す
ここで大切になるのが、末梢神経の視点です。
肩鎖関節症としてまとめられる訴えの中にも、関連神経の分布を踏まえた方が捉えやすいケースがあります。
肩後上方の深部不快感や肩甲帯周囲の違和感が強い場合は肩甲上神経、肩外側から上腕外側の症状が前景にある場合は腋窩神経、肩上部から頸部にかけての張りや肩甲帯の保持のしにくさが強い場合は副神経、鎖骨周囲から肩前上方の表在的な痛みや接触過敏が目立つ場合は鎖骨上神経という見方が役立ちます。
しびれ、接触過敏、放散感、筋出力低下の出方まで追うことで、肩鎖関節そのものだけをみている時には曖昧だった評価の焦点が絞られてきます。画像上の肩鎖関節症があっても、症状分布が神経分布とより強く重なるなら、その解釈は分けて考える必要があります。
結論
肩鎖関節症をみる際には、診断名や画像所見をそのまま受け取るのではなく、研究知見を踏まえながら、水平内転や挙上でどう悪化するのか、肩上部の表在的な違和感や鎖骨周囲への広がりはどう出るのかを丁寧に読むことが重要です。
肩鎖関節症という名称だけで理解を止めず、水平内転での痛みの出方、肩上部の表在的違和感、鎖骨周囲への広がりまで丁寧に読むことが、臨床では欠かせません。
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