侵害受容とは何か|侵害刺激と痛みの違いを神経科学から

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はじめに|侵害受容とは何か

臨床では「痛み」という言葉が日常的に使われていますが、神経科学では痛みと侵害受容は異なる概念として区別されています。

侵害受容(nociception)とは、身体にとって有害となる可能性のある刺激(侵害刺激)を感知し、それを神経信号として中枢神経へ伝達する生理学的な過程を指します。

皮膚、筋肉、関節、末梢神経などの組織には侵害受容器と呼ばれる受容器が存在し、高強度の機械刺激、温度刺激、化学刺激などに反応します。

これらの刺激が受容器によって検出されると、信号は末梢神経を通じて脊髄へ伝わり、さらに脳へと送られます。

この段階ではまだ「痛み」という主観的体験が生じているわけではありません。

侵害受容はあくまで神経系の情報伝達の過程であり、痛みの経験とは区別して理解する必要があります。

▶︎ 末梢神経とは何か

侵害受容と侵害刺激の関係

侵害受容は、侵害刺激と呼ばれる有害となる可能性のある刺激によって引き起こされます。

侵害刺激には、強い機械刺激、極端な温度刺激、化学刺激などがあります。

これらの刺激が侵害受容器に到達すると、刺激は電気信号に変換され、末梢神経を通じて中枢神経へ伝えられます。

この神経信号は侵害受容信号と呼ばれ、脊髄や脳へ送られます。

しかし、侵害刺激が存在しても必ず痛みが生じるわけではありません。

侵害受容信号は中枢神経で統合・処理され、その結果として痛みが知覚されるかどうかが決まると考えられています。

▶︎ 侵害刺激と痛みの違い

侵害受容の生理学

侵害受容は侵害受容器によって開始されます。

侵害受容器は高強度の刺激に反応する受容器であり、刺激を電気信号に変換して神経系へ伝えます。

この信号は主にAδ線維やC線維などの求心性神経線維を通って脊髄へ伝達されます。

侵害受容は一般的に、刺激の検出、信号伝達、中枢での調整、知覚といった過程として説明されることがあります。

その後、信号は上行路を通じて脳へ送られ、複数の脳領域で処理されます。

脳では侵害受容信号の意味づけや評価が行われ、防御反応や痛みの知覚などの反応が生じると考えられています。

近年の神経科学では、この過程が単純な直線的伝達ではなく、複雑な神経ネットワークの中で調整されていることが示されています。

▶︎ ペインサイエンスとは何か

侵害受容と慢性炎症

組織に炎症が生じると、炎症性メディエーターと呼ばれる物質が放出されます。

代表的なものとして、プロスタグランジン、ブラジキニン、サイトカインなどが知られています。

これらの物質は侵害受容器の感受性を高め、侵害受容信号を増加させる可能性があります。

このような状態は末梢性感作と呼ばれ、侵害刺激に対する反応が高まることがあります。

炎症が長期間持続する場合、侵害受容信号が継続的に中枢神経へ送られる可能性があります。

その結果として、慢性疼痛が生じる場合もあります。

しかし慢性疼痛では、必ずしも明確な炎症や組織損傷が確認されないケースも多く報告されています。

慢性疼痛の理解には、末梢神経の状態と入力だけでなく、中枢神経における情報処理の変化を含めた視点が重要になります。

▶︎ 慢性疼痛とは何か

結論|侵害受容は痛みそのものではない

侵害受容とは、身体にとって有害となる可能性のある刺激を検出し、それを神経信号として中枢神経へ伝える生理学的な過程です。

一方で痛みは、脳による情報処理の結果として生じる主観的な経験です。

そのため侵害受容信号と痛みは必ずしも一致するわけではありません。

痛みの理解には、侵害受容信号だけでなく、末梢神経の状態と入力、そして中枢神経における情報処理を含めた統合的な視点が重要になります。

 

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