ドーパミンは脊髄後角で侵害受容を抑制する|疼痛制御における神経伝達メカニズム

目次

はじめに|ドーパミンは「快感物質」だけではない

ドーパミンは神経伝達物質の一つであり、

  • 動機付け

  • 報酬

  • 学習

  • 運動制御

などに関与することで知られています。

また、ドーパミンは、ノルアドレナリンやアドレナリンの前駆体でもあります。

そのため中枢神経系において、ドーパミンは、報酬系・情動・運動・自律神経など多くの機能に関与しています。

近年の研究では、このドーパミンが、疼痛制御にも関与する可能性が示されています。

脊髄後角|侵害受容の最初の中継点

侵害受容入力は、末梢神経から脊髄へ伝わります。

その最初の中継点が脊髄後角(dorsal horn)です。

特にラミナIニューロンは重要な役割を持っています。

このニューロンは

  • 脳幹

  • 視床

へ疼痛情報を伝える主要な出力ニューロンです。

つまり、脊髄後角は、侵害受容信号が脳へ送られる前に調整される重要な場所と言えます。

ドーパミンによる侵害受容入力の抑制

脊髄後角でのドーパミンの作用を調べた研究があります。

「脊髄後角は、一次侵害受容入力が局所回路によって、そして脊髄上核に中継される前に下降するシグナルによって調節される、疼痛経路における最初の中継局である。

我々は、ラミナI投射ニューロンへの一次侵害受容入力のシナプス前抑制が、ドーパミンが脊髄の後角へ入ってくる有害な刺激を抑制することができるメカニズムであることを提案する。

ラミナI投射ニューロンは、脊髄後角から脳幹および視床核への疼痛信号の主な出力を表す。

我々は、ドーパミンがシナプス前への作用を介して、ラミナI投射ニューロンへの侵害受容性AδおよびC線維シナプス入力を抑制することを見出した。」

Presynaptic Inhibition of Primary Nociceptive Signals to Dorsal Horn Lamina I Neurons by Dopamine
Yong Lu et al.

ドーパミンが疼痛を調整する仕組み

この研究で示唆されるメカニズムは

シナプス前抑制(presynaptic inhibition)

です。

つまりドーパミンは侵害受容ニューロンに直接作用するのではなく、一次侵害受容入力の伝達を抑制する可能性があります。

対象となる線維は

  • Aδ線維(速い痛み)

  • C線維(遅い痛み)

です。

この結果、脊髄後角のラミナI投射ニューロンへの入力が減少し、疼痛信号の上行が抑制される可能性があります。

下行性疼痛制御との関係

疼痛制御には下行性疼痛抑制系が関与します。

代表的な神経伝達物質は

  • セロトニン

  • ノルアドレナリン

ですが、近年ではドーパミン系も疼痛調節に関与する可能性が指摘されています。

これは

  • 報酬系

  • 情動

  • 動機付け

と疼痛が密接に関連していることを示唆しています。

臨床的示唆|情動と疼痛制御

ドーパミンは

  • 達成感

  • 楽しさ

  • 報酬

などの体験と関係しています。

もしドーパミンが脊髄レベルで侵害受容入力を抑制するのであれば、情動や報酬体験は疼痛制御にも影響する可能性があります。

つまり

  • 楽しい活動

  • 達成感

  • 社会的交流

などは疼痛処理に間接的な影響を与える可能性があります。

結論|ドーパミンは脊髄レベルの疼痛制御に関与する可能性がある

研究から示唆されるポイントは次の通りです。

  • ドーパミンは脊髄後角で侵害受容入力を抑制する可能性がある

  • ラミナI投射ニューロンへのAδ・C線維入力を抑制する

  • その作用はシナプス前抑制によって起こる可能性がある

  • 報酬系と疼痛制御は神経学的に関連している可能性がある

疼痛は単なる侵害受容入力ではなく、

情動・報酬系・神経調節

と相互作用する現象です。

この視点は、慢性疼痛の理解において重要な示唆を与えます。

 


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