凍結肩(フローズンショルダー)は本当に関節包拘縮なのか|慢性炎症・AGEs・神経防御から再考

目次

はじめに|凍結肩(フローズンショルダー)とは

凍結肩(フローズンショルダー)は、肩関節の疼痛と可動域制限を特徴とする疾患です。

医学的には癒着性関節包炎(adhesive capsulitis)と呼ばれることもあります。

一般的には「関節包が癒着して肩が動かなくなる疾患」と説明されることが多くあります。

しかし近年の研究では、この単純な説明だけでは病態を十分に説明できない可能性が指摘されています。

肩関節の可動域制限には

  • 関節包
  • 慢性炎症
  • 代謝疾患
  • 神経系の防御反応

など複数の要因が関与している可能性があります。

本稿では凍結肩(フローズンショルダー)の病態を研究をもとに整理します。

フローズンショルダーという言葉の問題

フローズンショルダーという言葉は90年前から使われ出した言葉:

「彼は、“フローズンショルダー”という誤った呼称は、医学文献から削除されるべきであると主張した。」

「関節包拘縮は肩関節疾患の5%しか占めておらず、肩関節疾患は人口の15%しか罹患していないことから、関節包拘縮の実際の罹患率は人口の0.75%程度と考えるのが妥当である。」

「このためフローズンショルダーはアメリカでは癒着性関節包炎と呼ばれているが、癒着ではないことが判明している。」

「つまり、フローズンショルダーは乱用された言葉であると同時に、誤用された言葉でもある。」

Time for a new name for frozen shoulder contracture of the shoulder

この論文は、フローズンショルダーという名称が必ずしも実際の病態を正確に表していない可能性を指摘している。

関節包拘縮の発生率は非常に低く、臨床で使われるフローズンショルダーという言葉は広い肩関節障害を含んでいる可能性がある。

名称の曖昧さは病態理解や治療戦略の混乱につながる可能性がある。

可動域制限は関節包拘縮だけで説明できるのか

関節包切離術を受けるフローズンショルダー患者(合計5人)に全身麻酔を行い他動的に肩関節外転可動域を調べた研究:

「すべての患者で、全身麻酔下での肩関節の他動的外転可動域は、覚醒時の可動域と比較して有意に増加した。」

「この2つの測定値の差が最も小さかった被験者は全身麻酔下で44°増加した。最も差が大きかった被験者は全身麻酔下で110°増加した。」

「この研究はすべての患者において全身麻酔下での他動的可動域の有意な増加を示し、フローズンショルダーの他動的可動域の減少は本当の関節包拘縮だけでは完全に説明できないことを示した。」

「意識のあるフローズンショルダー患者を評価した他動的な肩関節外転可動域は、患側の本当の可動域を正確に反映していない。」

「自動運動による硬直や筋性防御はフローズンショルダー患者の可動域低下の主な要因であるようだ。」

Determining the contribution of active stiffness to reduced range of motion in frozen shoulder.

この研究では、全身麻酔下で肩関節可動域が大きく改善することが示されている。

これは覚醒状態で観察される可動域制限の一部が関節構造ではなく疼痛による筋性防御や神経系の反応によって生じている可能性を示唆する。

肩関節の可動域評価には構造だけでなく神経系の影響も考慮する必要がある。

フローズンショルダーと慢性炎症

フローズンショルダーと慢性炎症:

「一般的に、フローズンショルダーとして知られる癒着性関節包炎は、主に烏口上腕靱帯と腱板疎部に発生する炎症および線維性疾患である。」

「年齢に関係なく、癒着性関節包炎の確立された最も強力な危険因子の2つは、糖尿病と心血管疾患である。」

「肥満とメタボリックシンドロームは慢性的な軽度の炎症と強く関連しており、上肢疼痛症候群、糖尿病、心血管疾患、癌、中枢神経系の機能障害、慢性疾患を含む多くの病的状態の根底にあることが、ますます理解されつつある。」

「これらの病態生理学的メカニズムは、炎症誘発性サイトカイン産生の上方制御、自律神経バランスの交感神経優位、神経免疫活性化によって永続される可能性が非常に高い。」

「肩関節包-靭帯複合体の一部は、おそらく加齢に関連した酸化ストレスや炎症性サイトカインの産生が増加し、活性酸素やAGEの産生が増加し、結合組織や細胞外マトリックスの疾患のリスクに悪影響を及ぼす可能性がある。」

Adhesive capsulitis: An age related symptom of metabolic syndrome and chronic low-grade inflammation?

この研究は、凍結肩が局所の関節疾患だけではなく慢性炎症や代謝疾患と関連している可能性を示している。

糖尿病や心血管疾患が主要な危険因子とされており、炎症性サイトカイン、自律神経バランス、神経免疫系の関与が示唆される。

肩関節の疾患は全身の生理学的状態とも関連している可能性がある。

AGEと結合組織

「AGEが長寿命タンパク質に結合すると、通常のリモデリングでは分解できず、結合組織に蓄積する。」

The puzzling pathophysiology of frozen shoulders – a scoping review

AGEsは糖化反応によって形成される不可逆的化合物であり、長寿命タンパク質に結合すると結合組織に蓄積する。

この蓄積は結合組織の柔軟性や強度に影響する可能性がある。

糖代謝異常や慢性炎症と関連するAGEsは肩関節周囲組織の変化に関与している可能性がある。

生活習慣と肩関節

「投げたり、頭上での動作を必要としない現代の座りがちな生活習慣では、肩前部の関節包や靭帯の一部が十分に動かされず、伸ばされていない可能性がある。」

「このため、肩前部の関節包と靭帯はサイトカインの産生やAGEsの形成に関連する酸化ストレスを受けやすくなっている可能性がある。」

The puzzling pathophysiology of frozen shoulders – a scoping review

 

このレビューは、現代の生活習慣が肩関節組織の環境に影響している可能性を示している。

肩関節を大きく使用する機会が減少すると特定の関節包や靭帯が十分に動かされない状態が続く可能性がある。

この状態は酸化ストレスや炎症環境と関連する可能性がある。

結論

凍結肩(フローズンショルダー)は、単純な関節包拘縮だけで説明できる疾患ではありません。

研究からは、関節包の炎症、慢性炎症、代謝疾患、AGEsの蓄積、神経系の防御反応、生活習慣など、複数の要因が関与している可能性が示唆されています。

これらの要因は互いに影響し合いながら、肩関節の疼痛や可動域制限を形成していると考えられます。

そのため凍結肩を理解するには、関節包などの構造変化だけではなく、神経系の反応や全身の生理学的状態を含めた多角的な視点が重要になります。

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