トレンデレンブルグテストとは何か
トレンデレンブルグテストは、片脚立位で骨盤を保持できるかどうかを確認する整形外科的テストです。
一般的には、患者様に片脚立位をとってもらい、支持脚側で骨盤を保てるかを観察します。
対側の骨盤が下がる場合は陽性と解釈され、支持脚側の中殿筋・小殿筋を中心とした股関節外転筋の機能低下が示唆されます。
ただし、陽性所見は中殿筋や小殿筋だけで決まるものではありません。
股関節痛、股関節外側部痛、腱症、術後の外転筋機能、上殿神経の運動出力、体幹側屈による代償などが所見に影響します。
そのため、トレンデレンブルグテストは、片脚立位で骨盤を保持できるかを確認する検査であり、特定の筋や神経を単独で決める検査ではありません。
トレンデレンブルグテストの診断精度と評価の限界
下記論文では、股関節外転筋腱断裂の検出における複数の身体検査が検討されています。
その中で、トレンデレンブルグ徴候も評価対象に含まれています。
結果として、トレンデレンブルグ徴候は股関節外転筋腱断裂を疑う所見のひとつとして扱われていますが、単独で確定診断に用いる検査ではありません。
この論文から言えるのは、片脚立位での骨盤保持の崩れは外転筋腱障害を疑う手がかりにはなるものの、画像所見や他の身体所見と合わせて判断する必要があるということです。
The Modified Resisted Internal Rotation Test for Detection of Gluteal Tendon Tears
Rafael Walker-Santiago, Victor Ortiz-Declet, David R. Maldonado, Natalia M. Wojnowski, Benjamin G. Domb
この論文では、トレンデレンブルグテストで観察される骨盤の動きが、股関節外転筋力をどの程度反映するのかが検討されています。
研究では、股関節外転筋力を筋力測定機器で評価し、片脚立位中の骨盤運動を3次元動作解析で確認しています。
結果として、股関節外転筋力と前額面上の骨盤運動との関連は強くありませんでした。
また、検者による陽性・陰性判定と、3次元動作解析による評価の一致も弱い結果でした。
この論文から言えるのは、トレンデレンブルグテストを股関節外転筋力そのものの指標として扱うには限界があるということです。
Determining Trendelenburg test validity and reliability using 3-dimensional motion analysis and muscle dynamometry
Lauren McCarney, Ashley M. C. Jacques, Michelle M. Hall, et al.
下記の論文では、トレンデレンブルグテストを定量的に評価する方法が検討されています。
従来のトレンデレンブルグテストは広く用いられている一方で、どの程度の骨盤傾斜を陽性とするのか、どの姿勢や条件で評価するのかが十分に標準化されていません。
この論文から言えるのは、目視による骨盤低下の判定だけでは評価にばらつきが出るため、検査条件と判定基準を明確にする必要があるということです。
Quantitative analysis of the Trendelenburg test and invention of a modified method
K. Fujita, et al.
トレンデレンブルグテストを末梢神経の視点から再検討する
この検査で中心に考える末梢神経は、上殿神経です。
上殿神経は中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋を支配する運動神経で、片脚立位で骨盤を保持する働きに関係します。
そのため、片脚立位で対側の骨盤が下がる場合、筋や腱だけでなく、上殿神経の運動出力も評価に含める必要があります。
ただし、トレンデレンブルグテスト陽性そのものが上殿神経障害を示すわけではありません。
この検査で言えるのは、片脚立位で骨盤保持が崩れたということまでです。
殿部上方から腸骨稜周囲の痛みを伴う場合は、上殿皮神経の関与も考慮します。
上殿皮神経は殿部上方の皮膚感覚に関わるため、骨盤保持そのものを説明する神経ではありませんが、殿部上方の痛みや違和感を伴う場合には確認が必要です。
また、腸骨稜外側や大転子周囲の症状を伴う場合は、腸骨下腹神経の外側皮枝の分布も考慮します。
結論
トレンデレンブルグテストは、片脚立位で支持脚側が骨盤を保持できるかを確認する整形外科的テストです。
陽性所見は、股関節外転筋の機能低下を考える手がかりになりますが、中殿筋・小殿筋の腱障害や上殿神経障害を単独で確定するものではありません。
また、股関節外転筋力と骨盤運動は単純には一致せず、目視による判定にもばらつきが生じます。
そのため、トレンデレンブルグテストは、股関節外側部痛、殿部上方の痛み、画像所見、代償動作、上殿神経・上殿皮神経・腸骨下腹神経の関与を含めて解釈する必要があります。
関連コラム|クリティカルシンキングの理解を深める

