滑膜炎と痛みは本当に一致するのか|画像所見を再検討する

滑膜炎
目次

滑膜炎は「痛みの証拠」とは限らない

滑膜炎は、滑膜に炎症が生じた状態です。

画像では、その評価として滑膜肥厚、血流増加、関節液の貯留などをみる場合があります。

臨床では炎症所見として受け取られやすいですが、画像で滑膜炎がみえたこと自体が、そのまま痛みの強さや、主な原因だと示されるわけではありません。

実際の研究をみると、滑膜炎と痛みの関連が示される場面はありますが、その関連は部位によって一様ではありません。

無症状でも所見がみられることがあり、逆に構造変化のほうが痛みと強く結びつく部位もあります。

膝では関連はあっても、単独では説明しきれない

膝の変形性関節症では、超音波で関節液の貯留や滑膜肥厚がみられることがあります。

そのため、滑膜炎は膝痛の説明に使われやすい所見です。

ただし下記研究では、超音波でみた滑膜炎所見と膝痛の関連は示されたものの、その関係を滑膜炎だけで独立して説明できるわけではないと報告されました。

つまり、膝では滑膜炎と痛みに一定の関連はあっても、滑膜炎だけを切り出して痛みを説明することは難しく、関節全体の構造変化を含めて考慮する必要があります。

Association between ultrasound-detected synovitis and knee pain: a population-based case-control study with both cross-sectional and follow-up data

Aliya Sarmanova, Michelle C Hall, Gwen Sascha Fernandes, Archan Bhattacharya, Ana M Valdes, David A Walsh, Michael Doherty, Weiya Zhang

▶︎ 整形外科領域の臨床再考

手では機能低下と結びついても、痛みとは結びつかないことがある

手の変形性関節症では、炎症所見が痛みの原因だと言われることがあります。

ただ、部位や評価項目によっては、その関連は強くありません。

下記研究では、超音波でみた滑膜炎所見は握力低下や機能障害とは関連した一方で、安静時痛や運動時痛のレベルとは関連しませんでした。

これは、滑膜炎があっても、その所見がそのまま痛みの強さに反映されるとは限らないことを示しています。

Ultrasound-detected synovitis in symptomatic hand osteoarthritis is associated with functional impairment: data from the LIHOA cohort

Francisco Vileimar Andrade de Azevedo, Antonio Matos de Souza Filho, Ana Carolina Matias Dinelly Pinto, Guilherme Ferreira Maciel da Silva, Artur Nascimento da Rocha, José Carlos Godeiro Costa Junior, Cláudio Régis Sampaio Silveira, Francisco Airton Castro Rocha

 ▶︎ ペインサイエンスとは何か

足と足関節では、無症状でも滑膜炎がみられる

足や足関節では、画像で滑膜炎や周辺組織の変化がみえても、それだけで痛みの部位や強さを説明できるとは限りません。

この部位では、所見の存在と症状の一致をより慎重にみる必要があります。

下記論文では、無症状のエリートプロサッカー選手の足・足関節のMRI初見を調べ、足部の少なくとも1つの関節に、滑膜炎が67.6%の人にみられたと報告しました。

この研究は競技者集団のデータですが、少なくとも足や足関節では、画像所見があっても無症状であることが珍しくないことを示しています。

Asymptomatic foot and ankle abnormalities in elite professional soccer players

Eduard Bezuglov, Vladimir Khaitin, Artemii Lazarev, Alesia Brodskaia, Anastasiya Lyubushkina, Kamila Kubacheva, Zbigniew Waśkiewicz, Arseniy Petrov, Nicola Maffulli

▶︎ 慢性疼痛とは何か

関節リウマチの足でも、症状の有無と滑膜炎所見は一致しない

関節リウマチは炎症性疾患でもあるため、滑膜炎所見はさらに重く解釈されやすくなります。

しかし足部では、ここでも症状とのズレが報告されています。

下記論文では、関節リウマチ患者の足関節を高解像度超音波とパワードップラーで評価し、無症状の足関節でも35%に距腿関節の滑膜炎、18%に距舟関節の関節炎がみられたと報告しました。

炎症所見があることと、その部位に症状が出ていることは同じことではありません。

Asymptomatic versus symptomatic ankle joints in rheumatoid arthritis: a high resolution B-mode and power Doppler ultrasound study

M. Alsuwaidi, B.P. Ehrenstein, W. Hartung, M. Fleck

▶︎ クリティカルシンキングとは何か

結論

滑膜炎は、たしかに痛みと関連することがある所見です。

ただし、その関連は部位ごとに異なり、膝では単独で痛みを説明しきれず、手では機能障害と結びついても痛みとは結びつかない可能性があります。

さらに足関節では、無症状でも滑膜炎がみられます。

関節リウマチのように炎症が中心となる病態でも、無症状の足関節に滑膜炎やパワードップラー所見がみられる以上、画像でみえた所見をそのまま痛みの証拠とみなすことはできません。

滑膜炎を考えるときに必要なのは、「あるか、ないか」ではありません。

その所見がどの部位で、どの文脈で、ほかの所見や症状とどう並んでいるのかを確認しながら、痛みとの関連性を見極める視点です。

 


関連コラム|クリティカルシンキングの理解を深める

▶︎ クリティカルシンキングとは何か

▶︎ 臨床概念一覧とは何か

▶︎ 臨床推論を吟味するとは何か

神経科学に基づく徒手療法を学ぶ

SNSでのコラムのシェアは歓迎しております。ただし当サイト内の文章・オリジナル画像等の無断転載、無断転用はご遠慮ください。

滑膜炎

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
目次