スランプテストとは何か
スランプテストは、座位で頚椎・胸椎・腰椎を屈曲させ、膝関節伸展と足関節背屈を順に加えながら、殿部から大腿後面、下腿、足部にかけて症状がどのように変化するかをみる検査です。
一般には、放散痛やしびれなどの症状が再現され、それが頚部伸展や足関節底屈で変化する場合に、神経系の関与を考える材料として扱います。
脊髄、腰仙部の神経根、坐骨神経、その遠位につながる脛骨神経、総腓骨神経、足底神経などに関連した症状が、肢位の変化でどう変わるかを確認します。
単なる大腿後面の張り感だけを陽性とみなすと、解釈を誤ります。
重要なのは、どこに、どのような症状が、どの手順で出現し、どの手順で変化したかを確認することです。
どの末梢神経を視野に入れるべきか
スランプテストでまず視野に入れるべきなのは、L5〜S1神経根と、その連続上にある坐骨神経、脛骨神経、総腓骨神経、足底神経です。
大腿後面から下腿後面、足底へ広がる症状では、坐骨神経から脛骨神経、さらに足底神経へ続く神経系を考えます。
下腿外側から足背へ広がる症状では、坐骨神経から総腓骨神経へ続く神経系を考えます。
ただし、スランプテストで誘発される症状は、必ずしも末梢神経幹の局所障害を意味するわけではありません。肢位の変化によって、腰仙部から末梢神経までの力学的条件が変わるため、もともと刺激に反応しやすい部位で症状が変化します。
そのため、神経根レベル、神経叢から坐骨神経への移行部、殿部での坐骨神経走行部、さらに遠位の脛骨神経、総腓骨神経、足底神経まで、どのレベルの神経系を優先して考えるかを臨床的に判断する必要があります。
症状分布、感覚異常の部位、筋力低下、腱反射、他の神経学的所見を合わせて、スランプテスト陽性の意味を読むことが重要です。
スランプテストとSLRテストの違い
スランプテストとSLRテストは、どちらも腰仙部の神経系の関与をみる整形外科的テストですが、同じ検査ではありません。
SLRテストは仰臥位で股関節屈曲を中心にみるのに対し、スランプテストは座位で脊柱屈曲、頚部屈曲、膝関節伸展、足関節背屈を組み合わせながら、症状の変化を段階的に確認します。
この論文では、スランプテストはSLRテストより感度が高く、下肢症状を伴う腰椎椎間板ヘルニア患者様における神経系の関与を検出する検査として有用であることが示されています。
一方で、批判的に読むと、スランプテストは複数の神経組織に同時に負荷を加える検査であり、陽性所見だけで障害部位を特定することはできません。
SLRテストの方がわずかに特異度が高かった点を踏まえると、スランプテストは確定診断の検査ではなく、神経系の関与を臨床的に確認する検査として位置づける必要があります。
The sensitivity and specificity of the Slump and the Straight Leg Raising tests in patients with lumbar disc herniations
Majlesi J, Togay H, Unalan H, Toprak S
スランプテストと神経障害性疼痛の関係
この論文では、低〜中等度の慢性腰痛を有する患者様において、スランプテストは下肢の神経障害性疼痛を検出する感度の高い検査として示されています。
ただし、スランプテスト単独の特異度は中等度であり、陽性所見だけで神経障害性疼痛を確定することはできません。
特に重要なのは、スランプテスト中に「患者様の訴えに近い痛みが、下腿後面・下腿外側・足背・足底など膝より遠位に再現されるか」という部位条件を加えると、特異度が大きく改善した点です。
この結果は、スランプテストを「陽性か陰性か」だけで読むのではなく、単なる大腿後面の張り感と、患者様の訴えに近い遠位症状を分けて解釈する必要があることを示しています。
Diagnostic Accuracy of the Slump Test for Identifying Neuropathic Pain in the Lower Limb
Urban LM, MacNeil BJ
結論
スランプテストは、L5〜S1神経根から坐骨神経、脛骨神経、総腓骨神経、足底神経へ連なる神経系の関与を考えるうえで、有用な整形外科的テストです。
患者様の訴えに近い放散痛やしびれが、膝関節伸展や足関節背屈で再現され、頚部伸展などで変化する場合には、神経系の関与を考える材料になります。
この検査は単独で結論を出すためのものではなく、症状の質と分布、構造的分化での変化、筋力、感覚、腱反射などを合わせて、どの神経レベルを追加で評価するかを考えるための検査として位置づけることが重要です。
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