SLRテストとは何か|整形外科的テストを吟味する

整形外科的テストDNM
目次

SLRテストとは何か

SLRはStraight leg raiseの略で、背臥位で膝関節を伸ばしたまま下肢を挙上し、殿部から大腿後面、下腿、足部にかけてどのような症状が出るかをみる検査です。

一般的には、放散痛やしびれが再現されるかを確認し、足関節背屈や頚部屈曲などで症状が変化するかをあわせてみます。

SLRテストで主にみているのは、L5〜S1神経根から坐骨神経系にかけた神経系の機械的感受性です。重要なのは、何度まで下肢が上がったかではなく、どこに、どのような症状が出て、肢位の変化でどう変わるかです。

大腿後面の張り感だけを陽性とみなすと、ハムストリングスの伸張感と神経系に関連した症状を混同します。

そのため、放散痛、しびれ、足部まで広がる違和感などが、下肢挙上角度や追加刺激によってどう変化するかを確認する必要があります。

また、反対側の下肢を挙上したときに、症状側の殿部から下肢へ放散痛やしびれが再現される所見は、クロスSLRとして扱われます。

クロスSLRは通常のSLRより感度は低い一方で、陽性になった場合は腰椎椎間板ヘルニアや神経根症状を示唆する意味が強い所見として位置づけられます。

SLRテストは、古典的にはラセーグ徴候、ラセーグテストとして扱われることもありますが、現在の臨床ではSLRテストとしてまとめて理解されることが少なくありません。

SLRテストの関連所見をどう位置づけるのか

SLRテストの周辺には、ブラガードテスト、フリップサイン、ボウストリング徴候、ボンネットテストなどの関連検査があります。

それぞれの所見は、SLRで得られた反応を別角度から確認するための補助的な視点として位置づけます。

・ブラガードテスト:SLRで症状が出た角度から少し下げ、症状が落ち着いたところで足関節背屈を加え、症状が再燃するかをみる方法です。ハムストリングスの張りと神経系に関連した症状を分けて読む材料になります。

・フリップサイン:座位で膝伸展を行ったときに、体幹を後方へ逃がすような反応が出るかをみる所見です。背臥位のSLRとあわせて、坐骨神経痛様症状の一貫性を確認します。

・ボウストリング徴候:SLRで症状が出たあとに膝を少し屈曲して症状を軽くし、その状態で膝窩部を刺激して症状の再現をみる所見です。坐骨神経系への追加刺激として理解できます。

・ボンネットテスト:股関節内転や内旋を加えて、殿部深層での症状変化をみる所見です。SLRそのものの変法というより、殿部深層での坐骨神経関連症状を補足する所見として分けて理解する方が自然です。

SLRテストで考える神経系

SLRテストでまず考えるべきなのは、L5〜S1神経根と、その連続上にある坐骨神経、脛骨神経、総腓骨神経です。

大腿後面から下腿後面、足底へ広がる症状では脛骨神経系を、下腿外側から足背にかけた症状では総腓骨神経系を候補に入れます。

ただし、これは症状分布からみた臨床的な目安であり、SLRだけで局在を断定することはできません。

神経根レベル、神経叢から坐骨神経への移行部、殿部での坐骨神経走行部、さらに遠位の脛骨神経や総腓骨神経まで、連続した神経系として考える必要があります。

一方で、症状が殿部に限局し、典型的な下腿以下への放散を欠く場合は解釈に注意が必要です。そのような症例では、上殿皮神経、中殿皮神経、後大腿皮神経、上殿神経や下殿神経なども鑑別に入りますが、SLRがそれらを特異的に示しているわけではありません。

症状分布、感覚異常の部位、筋力低下、腱反射、圧痛部位、他の神経学的所見とあわせて読むことが重要です。

▶︎坐骨神経とは何か

▶︎脛骨神経とは何か

▶︎総腓骨神経とは何か

▶︎後大腿皮神経とは何か

▶︎上殿皮神経とは何か

▶︎中殿皮神経とは何か

SLRテストと画像所見は一致するのか

SLRテストは腰椎椎間板ヘルニアとの関連で語られることが多い検査ですが、MRI所見、症状、SLR所見が常に一致するわけではありません。

腰椎MRIでは、椎間板突出や神経根周囲の変化があっても無症状のことがあります。

また、脊柱管狭窄や変性所見があっても、それだけで今ある下肢症状や殿部症状の主な説明になるとは限りません。反対に、明確な放散痛やしびれがあっても、画像で症状を十分に説明できる異常が明瞭に捉えられないこともあります。

したがって、SLRテストは画像診断と対立するものではなく、画像所見と並べて解釈すべき臨床所見です。

▶︎脊柱MRI異常とは何か

▶︎腰椎椎間板ヘルニアとは何か

SLRテストの診断精度をどう読むか

この研究では、腰椎椎間板ヘルニアに対するSLRテストとクロスSLRの診断精度が検討されています。

通常のSLRは感度0.91と高い一方で、特異度は0.26と低く、陽性所見だけで椎間板ヘルニアを確定する検査とはいえません。

一方、クロスSLRは感度0.29と低いものの、特異度は0.88と高く、陽性であれば椎間板ヘルニアを示唆する意味が強くなります。

ただし、対象研究は手術の症例が中心であり、より厳密な研究ではSLRの診断精度は低く見積もられる傾向がありました。

そのため、この論文はSLRやクロスSLRを単独で読むのではなく、症状分布、神経学的所見、画像所見と合わせて解釈する必要があることを示しています。

The test of Lasegue: systematic review of the accuracy in diagnosing herniated discs

Deville WL, van der Windt DA, Dzaferagic A, Bezemer PD, Bouter LM

この研究では、坐骨神経痛様症状を有する患者様を対象に、MRI所見を基準としてSLRテストの妥当性が検討されています。結果として、SLRの感度は0.36、特異度は0.74であり、MRIで確認される腰椎椎間板ヘルニアを判別する力は高くありませんでした。

また、陽性尤度比は1.38、陰性尤度比は0.87でした。尤度比は「ゆうどひ」と読み、検査結果が出たときに、その疾患の可能性がどの程度変わるかをみる指標です。

一般的には、陽性尤度比が10以上であれば陽性所見の意味は強く、5〜10であれば中等度、2〜5では小さな変化にとどまります。一方、陰性尤度比は0.1以下であれば除外に強く働き、0.1〜0.2では中等度、0.2〜0.5では小さな変化にとどまります。

この研究では、陽性尤度比1.38、陰性尤度比0.87であり、陽性でも陰性でも診断を大きく動かす検査とはいえません。

特に重要なのは、年齢が上がるほどSLRの判別力が低下する傾向が示された点です。

この結果は、SLRを「陽性ならヘルニア」「陰性なら除外」と読むのではなく、症状分布、神経学的所見、画像所見と合わせて解釈する必要があることを示しています。

Validity of the straight-leg raise test for patients with sciatic pain with or without lumbar pain using magnetic resonance imaging results as a reference standard

Capra F, Vanti C, Donati R, Tombetti S, O'Reilly C, Pillastrini P

結論

SLRテストは、L5〜S1神経根から坐骨神経系へ続く神経系の機械的感受性をみる整形外科的テストです。

通常のSLRは感度が高めで特異度が低く、クロスSLRは感度が低く特異度が高いという特徴があります。

そのため、陽性所見だけで腰椎椎間板ヘルニアや神経根障害を確定することはできません。

また、MRI所見、症状、SLR所見は常に一致するわけではないため、症状分布、追加刺激での変化、神経学的所見、画像所見を合わせて解釈する必要があります。

殿部痛が中心で下腿以下への放散に乏しい場合は、殿部の皮神経や坐骨神経走行部も鑑別に入ります。

▶︎ 整形外科的テストを吟味するとは何か


関連コラム|クリティカルシンキングの理解を深める

▶︎ クリティカルシンキングとは何か

▶︎ 臨床概念一覧とは何か

▶︎ 臨床推論を吟味するとは何か

神経科学に基づく徒手療法を学ぶ

SNSでのコラムのシェアは歓迎しております。ただし当サイト内の文章・オリジナル画像等の無断転載、無断転用はご遠慮ください。

整形外科的テストDNM

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
目次