伏在神経絞扼障害(ハンター管症候群)とは何か|基本像を確認する
伏在神経絞扼障害(ハンター管症候群)という病態は、大腿内側から膝内側、下腿内側に分布する末梢神経の絞扼が関わります。
とくに、伏在神経が内転筋管、いわゆるハンター管を通過する部位や、そこから分かれる膝蓋下枝の分布を踏まえることが重要です。
整形外科領域では、膝内側痛や下腿内側のしびれは変形性膝関節症、内側半月板、鵞足部、腰椎由来の神経根障害に由来すると考えられやすく、この病態は見落とされやすい傾向があります。
研究知見|伏在神経と膝蓋下枝の絞扼は膝内側痛の原因となる
この研究では、内転筋管での伏在神経絞扼を満たした30例を後ろ向きに検討し、症状は平均36か月続いており、膝前内側を中心とした慢性痛として経過していたと報告されています。
また、内転筋管での伏在神経ブロックを平均1.9回行った結果、痛みの強さはVAS 6.4から2.8まで低下し、80%の症例で改善がみられました。
この点は重要です。膝内側痛が長く続いていても、それを半月板や変形性膝関節症だけで説明するのではなく、伏在神経絞扼障害(ハンター管症候群)を候補に入れることで、症状の見え方は変わります。
また別の報告では、伏在神経の膝蓋下枝は慢性膝痛の原因となりうるにもかかわらず、十分に検討されていない神経であり、術後痛だけでなく、絞扼、神経腫、神経鞘腫、さらに変形性膝関節症に伴う痛みにも関与しうると述べています。
重要なのは、膝の痛みを関節内構造だけで考えると、膝蓋下枝由来の痛みが候補から外れやすいという点です。
Infrapatellar Branch of the Saphenous Nerve: Therapeutic Approaches to Chronic Knee Pain. Alaa Abd-Elsayed, et al.
なぜ見落とされるのか|画像所見だけで原因は決められない
膝内側痛や下腿内側のしびれでは、膝関節内の異常が疑われやすく、画像診断でも内側半月板の変化、変形性膝関節症、内側支持組織の所見などが確認されることがあります。
しかし、画像所見があることと、その所見が今ある症状の主因であることは同義ではありません。
膝の画像だけを根拠にすると、伏在神経や膝蓋下枝など、末梢神経由来の症状は候補から外れてしまいます。
膝内側痛・下腿内側のしびれを末梢神経からどうみるか|伏在神経と膝蓋下枝の分布から読み直す
重要なのは、症状分布と歩行、膝屈伸での変化です。
膝内側から下腿内側、内果周囲へ連続するしびれや違和感があるなら伏在神経、膝蓋骨の前内側から下方に限局した接触過敏や術後の違和感が目立つなら伏在神経の膝蓋下枝というように、分布を知ることで見立ては変わります。
さらに、内転筋管周囲への圧迫、歩行、階段昇降、膝の反復性屈伸で、痛みやしびれがどう変化するのかを確認することで、考慮すべき部位は絞られます。
結論
伏在神経絞扼障害(ハンター管症候群)は、膝内側痛や下腿内側のしびれを半月板、変形性膝関節症、鵞足部、神経根障害だけで理解していては捉えきれない病態です。
画像所見があることと、症状の原因がそこにあることは同義ではありません。
構造異常だけで判断せず、伏在神経と膝蓋下枝を含む末梢神経の分布と、圧迫や動作での変化をあわせて評価する必要があります。
関連コラム|ペインサイエンスの理解を深める

