円回内筋症候群とは何か|前腕痛・手のしびれを正中神経から再考する

円回内筋症候群
目次

円回内筋症候群とは何か|基本像を確認する

円回内筋症候群は、前腕近位部で正中神経本幹が障害される病態です。

円回内筋は、上腕骨内側上顆と尺骨鈎状突起から起こり、橈骨外側へ向かって付着する前腕の回内筋です。

この筋の周囲、とくに上腕頭と尺骨頭の間は、正中神経が通過する部位として重要です。

正中神経は混合神経であるため、症状は運動だけでなく感覚にも及びます。そのため、円回内筋症候群では前腕近位部の痛みだけでなく、手のしびれや使いにくさとして現れることがあります。

一方、同じ近位前腕の正中神経系トラブルでも、前骨間神経麻痺は運動神経である前骨間神経の障害であり、感覚障害が前面に出ない点が大きな違いです。

整形外科領域では、こうした症状は手根管症候群や頚椎由来の問題として解釈されやすく、近位前腕での正中神経障害は見落とされやすい傾向があります。

円回内筋症候群の研究知見|正中神経の近位部障害は前腕痛やしびれの原因となる

下記の論文では、円回内筋症候群は近位前腕で生じる正中神経絞扼として整理されており、前腕掌側の痛み、しびれ、反復する回内/回外や把持で増悪する症状をみたときに鑑別へ入れる必要があるとされています。

手根管症候群と似た訴えを示すことがある一方で、症状の主座が近位前腕にある点が重要です。

Proximal Median Nerve Compression: Pronator Syndrome. Adler JA, Wolf JM.

別の論文では、近位前腕における正中神経障害は、円回内筋症候群と前骨間神経症候群という2つの代表的な病態として整理されています。

円回内筋症候群では前腕掌側の痛みや正中神経領域のしびれが中心となり、前骨間神経症候群では母指と示指のつまみ動作低下やOKサインの崩れなど、感覚障害を伴わない運動障害が中心になります。

Pronator syndrome and anterior interosseous nerve syndrome. Rodner CM, Tinsley BA, O'Malley MP.

▶︎ 前骨間神経麻痺とは何か

円回内筋症候群はなぜ見落とされるのか|画像所見だけで原因は決められない

前腕痛や手のしびれでは、頚椎や手関節周囲の異常が疑われやすく、画像診断でも椎間板変性や手関節周囲の所見が確認されることがあります。

しかし、こうした構造所見だけで症状の原因を決めることはできません。

そのため、近位前腕での正中神経障害は候補から外れやすくなります。

円回内筋症候群で重要なのは、画像所見の有無よりも、前腕近位部の圧痛、動作による変化、正中神経領域の感覚症状をどう読むかです。

▶︎ 画像と痛みの関係をどう考えるか

▶︎ ストレートネックと首の痛みをどうみるか

前腕痛・手のしびれを末梢神経からどうみるか|円回内筋症候群と前骨間神経麻痺の違いも含めて読む

前腕痛や手のしびれを末梢神経からみるときに重要なのは、症状分布と感覚障害の有無です。

前腕近位部の痛みがあり、回内動作や把持で増悪し、母指から橈側手指にかけてのしびれを伴うなら、正中神経本幹の関与を考えます。

一方で、感覚障害が乏しく、OKサインの崩れやつまみ動作の低下が前面に出るなら、前骨間神経麻痺の可能性が高くなります。

さらに、円回内筋周囲や浅指屈筋アーチ部での圧迫、反復する前腕使用で症状がどう変わるかを確認することで、考慮すべき部位は絞られます。

圧痛は、前腕近位、円回内筋部、上腕二頭筋腱膜付近、浅指屈筋アーチ周囲で確認されることがあります。

正中神経は混合神経であるため、感覚分布だけでなく、前腕屈筋群の反応もあわせてみる必要があります。

▶︎ 正中神経とは何か

結論

円回内筋症候群では、前腕痛や手のしびれを手根管症候群や頚椎由来の問題だけで説明すると見落としが生じます。

前骨間神経麻痺と同じ近位前腕の正中神経系トラブルでも、円回内筋症候群は感覚症状を含みうる点が異なります。

画像所見だけで判断せず、症状分布と動作による変化をあわせて読むことが重要です。

 


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