足底筋膜炎(足底腱膜炎)を組織や構造だけでみてよいのか|整形外科領域の臨床再考

目次

足底筋膜炎(足底腱膜炎)とは何か|まず押さえたい基本像

足底筋膜炎(足底腱膜炎)は、踵部から足底内側にかけての痛みとして整形外科領域でよく使われる疾患名です。

典型的には、朝の一歩目の痛み、立ち上がり直後の痛み、長時間の立位や歩行後の増悪、踵骨内側結節周囲の圧痛として語られやすく、一般には反復負荷、足底腱膜への牽引、アライメント、荷重パターン、シューズ、活動量の増加などで説明されます。

保存療法としては、運動量調整、運動療法、物理療法、インソール、生活指導、薬物療法、徒手療法などが選択されます。

ただし、安静時痛が強い、急速に悪化する、発熱や著明な腫脹を伴う、外傷後に荷重困難がある、しびれや筋力低下が明らかであるといった場合は、疲労骨折、感染、神経障害、炎症性疾患なども含めて医師評価を優先すべきです。

▶︎ 整形外科領域の臨床再考とは何か

最近の研究からみた足底筋膜炎(足底腱膜炎)|いま押さえたい知見

足底筋膜炎という名称は広く使われますが、長引く症例のすべてを炎症だけで説明する見方は現在では限定的です。

腱症は単一の損傷ではなく、負荷に応じて変化する連続体として理解したほうが臨床像を説明しやすく、介入は病期と負荷耐性に応じて考える必要があります

「Is tendon pathology a continuum? A pathology model to explain the clinical presentation of load-induced tendinopathy. Cook JL, Purdam CR.」

2023年改訂JOSPTガイドラインでは、足底腱膜炎に対して、徒手療法、ストレッチ、テーピング、運動療法を中心とした保存療法が重視されています。

ナイトスプリントは、就寝中に足関節の底屈を防ぐ装具で、特に朝の一歩目の痛みが強い患者様に対して、1〜3か月の使用が推奨されています。

「Plantar Heel Pain/Plantar Fasciitis: Revision 2023. Clinical Practice Guideline.」

足底筋膜炎(足底腱膜炎)を再検討する視点|局所所見だけでは足りない理由

一方で、足底筋膜炎(足底腱膜炎)には局所所見だけでは読み切れない臨床像もあります。

足底腱膜の肥厚、踵骨内側結節の圧痛、画像上の変化がみられても、それだけで現在の訴えを十分に説明できるとは限りません。無症候でも構造変化がみられることがあり、逆に症状が強くても画像所見が軽いこともあります。

そのため、異常の有無だけで判断せず、その所見が現時点の痛みや機能低下とどう結びつくのかを考える必要があります。慢性例では、炎症というより足底腱膜症として読んだ方が合う場合も少なくありません。

▶︎ 腱症とは何か

疼痛科学からみた足底筋膜炎(足底腱膜炎)|中枢神経での処理も含めて考える

足底筋膜炎(足底腱膜炎)では、局所の組織変化だけでなく、その部位からの入力が中枢神経でどう処理されているかも考える必要があります。

同じような足底腱膜の所見があっても、痛みの強さや持続の仕方が一致しないことがあります。これは、脊髄後角や脳での感覚処理、注意、予測、過去の疼痛経験、警戒状態などによって、侵害受容信号の意味づけが変化しうるためです。

そのため、足底の症状をみるときは、局所負荷だけで直線的に理解するのではなく、朝の一歩目で強いのか、立位保持で増えるのか、歩行距離で変化するのか、裸足や靴で変わるのかを追うことが大切です。

また、局所の状態が大きく変わっていなくても、再発への不安、活動量の変化、仕事や日常生活での文脈によって症状が強く感じられる患者様もいます。したがって、局所の足底腱膜所見に加えて、その入力が中枢神経でどう処理され、どのような出力として表れているのかまで含めて読む視点が必要です。

▶︎ 痛みの中枢神経処理とは

足底筋膜炎(足底腱膜炎)を末梢神経からどうみるか|分布から読み直す

ここで大切になるのが、末梢神経の視点です。

足底筋膜炎(足底腱膜炎)としてまとめられる訴えの中にも、足底神経とその枝である内側足底神経、外側足底神経の分布を踏まえた方が捉えやすいケースがあります。

足底内側から母趾側にかけての痛みやしびれ、接触過敏が目立つ場合は内側足底神経の知識が有用であり、足底外側の違和感や小趾側へ広がる不快感がある場合は外側足底神経の視点が焦点を絞りやすくします。

足底神経は脛骨神経の枝として足底全体の感覚と一部筋機能に関わるため、足底痛をみるときも、単なる局所圧痛だけでなく、しびれ、表在のヒリヒリ感、荷重時の不快感、筋出力低下まで含めて考える必要があります

さらに、症状が踵骨内側結節付近に限局するのか、足底内側へ広がるのか、外側へずれるのか、足趾方向まで続くのかをみると、局所の足底腱膜障害として読むべきか、末梢神経の状態と入力を補助線として加えるべきかが見えやすくなります。

▶︎ 足底の症状から末梢神経をみる

▶︎ 足底神経とは何か

▶︎ 内側足底神経とは何か

▶︎ 外側足底神経とは何か

結論

足底筋膜炎(足底腱膜炎)をみる際には、診断名や局所圧痛、画像所見をそのまま受け取るのではなく、研究知見を踏まえながら、どの負荷で増悪し、どこまで広がり、内側優位なのか外側優位なのか、どのような感覚として現れているのかを丁寧に読むことが重要です。足底腱膜の問題として出発しつつも、腱症という理解、中枢神経での処理、足底神経や内側足底神経、外側足底神経の分布まで含めてみることで、足底痛をより立体的に理解しやすくなります。

 


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