ペインフルアークサインとは何か
ペインフルアークサインは、肩関節外転の途中で特定の角度に痛みが集中する所見です。
一般的には、患者様に肩を自動運動で外転してもらい、60〜120度前後で痛みが出現し、その前後では痛みが軽くなる場合を陽性とします。
エンドレンジ、特に170〜180度前後で痛みが強くなる場合は、肩鎖関節由来の痛みとして扱われることがあります。
従来は、外転中間域で痛みが出ることから、肩峰下滑液包、棘上筋腱を中心とした腱板、烏口肩峰アーチ周囲の組織が想定されてきました。
ただし、ペインフルアークサインは特定の組織を直接みている検査ではありません。この検査で言えるのは、肩外転の途中で症状が再現または変化したということまでです。
棘上筋腱の変性や部分断裂、肩峰下滑液包の刺激、肩鎖関節の変化、肩甲上腕関節の運動変化、疼痛による運動制御の変化でも、弧状の肩痛は起こります。
そのため、陽性であっても、それだけで棘上筋腱障害、肩峰下滑液包炎、肩鎖関節障害のいずれかを確定することはできません。
ペインフルアークサインの診断精度をどう読むか
この論文では、ペインフルアークサインは腱板断裂に関する先行メタ分析で推奨された検査として紹介されています。
一方で、肩の徒手検査全体については、単独検査だけで診断を決める性能は限定的だと述べられています。
棘上筋テストは、全層腱板断裂に対して診断オッズ比9.24、感度0.74、特異度0.77と報告され、対象となった単独検査の中では最も高い診断性能を示しました。
診断オッズ比は、検査が陽性・陰性の結果を通じて、疾患がある人とない人をどの程度区別できるかを示す指標です。
数値が高いほど検査としての識別性能は高いと考えられますが、感度や特異度、対象集団、参照基準と合わせて解釈する必要があります。
そのため、棘上筋テストも単独で断裂を確定する検査ではなく、疼痛、筋力低下、可動域、画像所見、病歴と合わせて読む必要があります。
Physical examination tests of the shoulder: a systematic review and meta-analysis of diagnostic test performance
S Ø Gismervik, J O Drogset, F Granviken, M Rø, G Leivseth
ペインフルアークサインを末梢神経の視点から再検討する
ペインフルアークサインを末梢神経の視点でみるなら、中心になるのは肩甲上神経です。
肩甲上神経は棘上筋と棘下筋に関わるため、外転時痛、外旋筋力の低下、外転保持の不安定さと関連します。
肩後上方の鈍痛や棘上筋・棘下筋周囲の違和感を伴う場合は、肩甲上神経の関与を検討します。
一方で、腋窩神経は三角筋と小円筋、肩外側の感覚に関わります。肩外側の違和感、しびれ感、三角筋の出力低下を伴う場合は、腋窩神経や四辺形間隙部の関与も検討します。
ただし、ペインフルアークサインだけで末梢神経の関与を判断することはできません。
症状が出る角度、筋力低下の有無、症状分布、他の神経学的所見を合わせて読む必要があります。
結論
ペインフルアークサインは、肩外転中に痛みがどの角度で出るかを確認する所見です。
ただし、陽性であっても肩峰下滑液包、棘上筋腱、肩鎖関節のいずれかを単独で確定する検査ではありません。
診断精度研究でも、肩の徒手検査は単独で診断を決めるには限界があり、画像所見だけで痛みを説明できない場合もあります。
そのため、ペインフルアークサインは、肩外転時の痛み、筋出力低下、症状分布を整理するための手がかりとして扱う必要があります。
臨床では、腱板や肩峰下組織だけでなく、肩甲上神経や腋窩神経などの末梢神経の視点も含めて解釈することが重要です。
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