オーバーテストとは何か|整形外科的テストを吟味する

整形外科的テストDNM
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オーバーテストとは何か

オーバーテストは、腸脛靭帯や大腿筋膜張筋の短縮をみる検査として用いられてきた整形外科的テストです。

一般的には、患者様を側臥位にし、ベッド側の股関節と膝を軽く屈曲させます。

次に、検査する天井側の股関節を外転・軽度伸展位に導き、股関節が内転方向へ自然に下がるかを観察します。

天井側の大腿が下がらず、外転位のまま残る場合は陽性と解釈されます。

ただし、この陽性所見を「腸脛靭帯の短縮」とそのまま断定することはできません。

股関節内転制限には、腸脛靭帯だけでなく、中殿筋、小殿筋、股関節包などの股関節近位構造も関与します。

オーバーテストの再現性と解釈の限界

この論文では、オーバーテストとオーバーテスト変法が、本当に腸脛靭帯の硬さを反映しているのかを解剖学的に検討しています。

腸脛靭帯、中殿筋・小殿筋、股関節包を段階的に切り離し、それぞれの条件で大腿部の内転角度を比較しています。

結果として、腸脛靭帯を切り離しても、大腿部の内転角度に有意な変化はみられませんでした。

一方で、中殿筋・小殿筋、股関節包を切り離した条件では、オーバーテストとオーバーテスト変法の結果に有意な変化がみられました。

この結果から、オーバーテストは腸脛靭帯そのものの硬さではなく、中殿筋・小殿筋や股関節包など、股関節近位構造の硬さを反映している可能性が示されています。

An Anatomic Investigation of the Ober Test

Gilbert M. Willett, Sarah A. Keim, Valerie K. Shostrom, Carol S. Lomneth

この論文では、オーバーテストを行う際の対側股関節の屈曲角度が、検査側の股関節可動域と張力感にどのような影響を与えるかを検討しています。

対象は18歳以上の健康な成人28名で、対側股関節を0度、45度、90度、最大屈曲位に固定し、それぞれの条件でオーバーテストを行っています。

股関節の前額面上の可動域はデジタル傾斜計で測定され、検査中に感じる張力の部位と強さも確認されています。

結果として、対側股関節の屈曲角度が大きいほど、検査側の股関節内転可動域は小さくなり、大腿筋膜張筋から腸脛靭帯領域の張力感は強くなりました。

この結果から、オーバーテストでは対側股関節の位置が検査結果に影響するため、検査条件をそろえて解釈する必要があります。

Effects of Contralateral Hip Flexion Angle on the Ober Test

César Hidalgo-García, Alberto Carcasona-Otal, Mar Hernández-Secorún, Hugo Abenia-Benedí, Lindsay Brandt, John Krauss, José Miguel Tricás-Moreno, Orosia Lucha-López

オーバーテストを上殿神経と外側大腿皮神経から再検討する

股関節外側、殿部外側、大腿外側の症状を伴う場合には、末梢神経の視点を加える必要があります。

上殿神経は中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋を支配します。そのため、股関節外側痛や殿部外側の違和感がある場合には、上殿神経領域も評価の視点に入ります。

また、大腿外側のしびれや違和感がある場合には、外側大腿皮神経の関与を確認します。

股関節伸展と内転の組み合わせによって、鼠径部から大腿外側にかけての組織に張力が加わると、外側大腿皮神経領域の症状が再現されることがあります。

ただし、この検査で言えるのは、股関節外側から大腿外側の組織に負荷がかかったときに、症状が再現または変化したということまでです。

▶︎外側大腿皮神経絞扼

▶︎下肢症状と末梢神経

結論

オーバーテストは、腸脛靭帯の短縮だけで判断する検査ではありません。

検査結果には、骨盤の動き、反対側の股関節の角度、中殿筋・小殿筋・股関節包など、複数の要素が関係します。

さらに、中殿筋と小殿筋は上殿神経の支配を受けるため、股関節外側痛や殿部外側の違和感では、上殿神経の関与も考えます。

大腿外側にしびれや違和感がある場合には、外側大腿皮神経との関係も考える必要があります。

つまり、オーバーテストは腸脛靭帯だけでなく、股関節周囲の組織と末梢神経の関係を含めて解釈する必要があります。

▶︎ 整形外科的テストを吟味するとは何か


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