ニュートンテストとは何か|仙腸関節と骨盤周囲痛をみる整形外科的テスト
ニュートンテストは、骨盤周囲にストレスを加えて、殿部痛や仙骨周囲痛が再現されるかをみる整形外科的テストです。
検査名は Newton の名前に由来するとされ、一般的には仙腸関節や骨盤周囲痛の評価で用いられます。
ニュートンテストは、背臥位・側臥位・腹臥位の3種類の方法で説明されることが多い検査です。
背臥位では骨盤に離開方向の負荷を加え、側臥位では骨盤を横から圧迫し、腹臥位では仙骨または仙腸関節部に後方から圧を加えます。
この3つの方法は、いずれも仙腸関節周囲に負荷を加える検査として扱われます。
ただし、負荷が及ぶのは仙腸関節だけではありません。
骨盤帯全体、殿部、股関節前面、鼠径部周囲にも影響し、周囲を走行する末梢神経にも圧迫、牽引、接触刺激が加わる可能性があります。
そのため、ニュートンテスト陽性から、仙腸関節そのものを原因と考えられる組織として確定することはできません。
この検査で言えるのは、骨盤周囲への負荷で症状が再現または変化したということまでです。
仙腸関節痛と画像所見はどこまで一致するのか
仙腸関節痛を考える際、画像所見は重要な情報になります。
特に炎症性疾患、骨折、感染、明らかな構造異常などを確認するうえでは、画像検査は欠かせません。
一方で、一般的な骨盤周囲痛や慢性腰殿部痛では、画像所見だけで仙腸関節が痛みの主な原因かどうかを判断するのは慎重であるべきです。
画像で確認される変化が、今ある痛みと必ず一致するとは限らないためです。
下記の論文では、仙腸関節痛の診断において、画像所見や単独の徒手検査だけで痛みの発生源を判断することには限界があるとされています。
仙腸関節痛を考える場合でも、画像所見、疼痛誘発テスト、症状分布、必要に応じたブロックなどを総合して判断する必要があります。
Evidence-Based Diagnosis and Treatment of the Painful Sacroiliac Joint
Mark Laslett
ニュートンテストの診断精度をどう読むか
ニュートンテスト単独の診断精度を高く評価できる研究は限られています。
そのため、ニュートンテストは単独で仙腸関節痛を確定する検査というより、骨盤周囲に負荷を加えたときの症状変化をみる検査として読む方が自然です。
下記のシステマティックレビューでは、仙腸関節の複数の疼痛誘発テストを組み合わせた場合でも、陽性所見だけで仙腸関節を痛みの発生源として判断する精度には限界があるとされています。
20%の有病率を前提にすると、複数の疼痛誘発テストが陽性でも、仙腸関節痛を正しく特定できる確実性は35%にとどまります。
一方で、陰性の場合は仙腸関節を痛みの発生源から除外する方向では比較的使いやすいとされています。
つまり、仙腸関節の疼痛誘発テストは、陽性所見だけで原因を決める検査ではなく、陰性所見を含めて可能性を調整する検査として読む方が臨床的です。
Diagnostic Accuracy of Clusters of Pain Provocation Tests for Detecting Sacroiliac Joint Pain: Systematic Review With Meta-analysis
T. Saueressig, Patrick Owen, Frank Diemer, Jochen Zebisch, Daniel Belavy
下記の研究では、仙腸関節障害の評価項目としてニュートンテストが含まれています。
ただし、この研究はニュートンテスト単独の診断精度を示すものではありません。
ニュートンテストは、パトリックテスト、ゲンスレンテスト、大腿スラストテスト、圧迫テストなどと同じく、仙腸関節周囲に負荷を加える検査項目の一つとして扱われています。
この点からも、ニュートンテストは単独で結論を出す検査ではなく、複数検査や症状分布とあわせて読む検査として位置づけるのが適切です。
Accuracy of the Diagnostic Tests of Sacroiliac Joint Dysfunction
Parisa Nejati, Elham Sartaj, Farnad Imani, Reza Moeineddin, Laleh Nejati, Marta Safavi
ニュートンテストを末梢神経の視点から再検討する
ニュートンテスト陽性を、仙腸関節だけで説明するのは不十分です。
骨盤への圧迫、離開、仙骨への圧入力によって、殿部や鼠径部周囲を走行する皮神経・末梢神経にも影響が及ぶ可能性があります。
仙骨外側から殿部中央に症状が出る場合は中殿皮神経、腸骨稜周囲から殿部上外側に広がる場合は上殿皮神経を考えます。
殿部下方や坐骨寄りまで症状が広がる場合は後大腿皮神経、鼠径部に及ぶ場合は大腿神経、外側大腿皮神経、腸骨鼠径神経、腸骨下腹神経なども視野に入ります。
症状が出る位置、広がる方向、しびれや感覚異常の有無、圧痛部位を確認しながら、関節由来だけでは説明しきれない症状が含まれていないかをみる必要があります。
その意味で、ニュートンテストは仙腸関節だけでなく、殿部皮神経や骨盤周囲の末梢神経の関与も含めて読む検査です。
結論|ニュートンテストの臨床的な位置づけ
ニュートンテストは、仙腸関節痛を証明する検査ではありません。
単独で仙腸関節痛を確定できる強い診断精度の根拠は乏しく、研究上も複数の疼痛誘発テストや他の評価と組み合わせて扱われることが中心です。
画像所見も、炎症性疾患や明らかな構造異常を確認するうえでは重要ですが、仙腸関節が痛みの主な原因であることを単独で証明するものではありません。
一方で、ニュートンテストは意味のない検査ではありません。
骨盤周囲への負荷で症状がどう再現されるかを確認し、仙腸関節だけでなく、殿部や鼠径部周囲の末梢神経の関与も含めて症状を整理する検査として位置づけるのが妥当です。
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