神経ペプチドとは何か|末梢神経終末・神経原性炎症・感作を理解する

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神経ペプチドは末梢神経終末の反応性を考えるうえで重要である

神経ペプチドとは、神経細胞が放出する情報伝達分子です。

中枢神経にも末梢神経にも存在しますが、徒手療法でとくに重要なのは、末梢の侵害受容性自由神経終末から放出される神経ペプチドです。

末梢神経終末からの神経ペプチド放出は、発赤、熱感、拍動感、接触過敏、施術後の反応増加などに関わるため、臨床で局所反応を解釈するうえで重要です。

神経伝達物質と神経ペプチドは何が違うのか

神経ペプチドも神経伝達物質も、どちらも神経細胞から放出される情報伝達分子です。

ただし神経ペプチドは、一般により強い活動や持続した活動で放出されやすく、作用も比較的長く続きます。

そのため神経ペプチドは、速いシナプス伝達というより、血管透過性亢進、血管拡張、神経免疫相互作用、侵害受容器の閾値変化に深く関わる分子として理解した方が臨床には適しています。

臨床でこの違いが重要なのは、神経ペプチドが関与する場面では、単なる神経信号の伝達だけでなく、局所の生理学的条件そのものが変化している可能性を考える必要があるからです。

自由神経終末では何が起きているのか

侵害受容に関わるAδ線維やC線維の多くは、皮膚、筋、筋膜、関節、骨膜、内臓などに自由神経終末として分布しています。

この末端は刺激を受け取るだけでなく、条件がそろうとサブスタンスPやCGRPなどの神経ペプチドを末梢側へ放出し、周囲組織の生理学的条件を変化させます。

つまり自由神経終末は、入力を受ける場所であると同時に、局所の反応性を変える場でもあります。

▶︎ 末梢神経とは何か

どんな刺激で放出されるのか

神経ペプチドの放出は、侵害受容性の自由神経終末が十分に活動したときに起こります。

きっかけになるのは、強い機械刺激、熱刺激、化学刺激、組織損傷などの侵害刺激です。

さらに、炎症性メディエーターや組織損傷に伴う化学的因子が増えると、神経終末の閾値が下がり、より小さな刺激でも反応が起こりやすくなります。

反復する負荷、局所の炎症環境、修復不足などが重なると、この反応性はさらに高まり、末梢性感作につながります。

▶︎ 末梢性感作とは何か

神経原性炎症とは何か

神経原性炎症とは、侵害受容性の感覚神経が活動し、その末梢終末から神経ペプチドが放出されることで生じる局所的な反応のことです。

重要なのは、炎症反応の一部に神経活動そのものが関わっている点です。

その結果として、血管拡張、血管透過性亢進、浮腫、発赤、熱感、拍動感、接触過敏などがみられることがあります。

慢性疼痛では、これを慢性炎症そのものと同じ意味で使うのではなく、末梢神経終末の興奮性変化と、それに伴う局所的な反応として捉える方が正確です。

神経原性炎症と軸索反射は何が違うのか

この2つは近い現象ですが、同じ意味ではありません。

軸索反射とは、感覚神経が刺激されたときに、その信号が中枢へ向かうだけでなく、同じ一次求心性ニューロンの分枝を介して末梢側にも広がる現象です。

一方、神経原性炎症は、その結果として神経ペプチドが放出され、局所の血管透過性や過敏性が変化する現象です。

つまり、軸索反射は信号の広がり方を示す言葉であり、神経原性炎症はその結果として周囲組織に起こる生理学的変化を示す言葉です。

サブスタンスPとCGRPは何が違うのか

末梢の神経原性炎症を考えるうえで、とくに重要なのがサブスタンスPとCGRPです。

サブスタンスPは、血管透過性亢進、免疫細胞との相互作用、侵害受容入力の増強に関わります。

一方のCGRPは、血管拡張との関係が中心です。

大まかにいえば、サブスタンスPは過敏さの増加や神経免疫相互作用、CGRPは血管拡張や熱感を考えるうえで重要です。

侵害刺激と痛みは同じではない

ここで区別しておきたいのは、侵害刺激、侵害受容、痛みは同じではないという点です。

侵害刺激は、組織損傷を起こす、またはその可能性を持つ刺激そのものです。

侵害受容は、その刺激を侵害受容器が検出し、神経信号として中枢へ送る生理学的過程です。

一方で痛みは、その入力をもとに中枢神経が統合して生じる主観的体験です。

神経ペプチドを考えるときも、末梢で起きている現象と、患者様が経験している痛みをそのまま同一視しないことが重要です。

▶︎ 侵害刺激と痛みの違いとは何か

末梢性感作と中枢性感作はどうつながるのか

末梢性感作とは、侵害受容器や末梢神経終末の反応性が高まり、通常より小さな刺激でも侵害受容入力が生じやすくなる状態です。

神経ペプチドの放出が増えると、局所の炎症性環境や免疫反応が変化し、侵害受容器はさらに反応しやすい状態になります。

その状態で侵害受容入力が持続すれば、脊髄後角や上位中枢での処理変化を通じて中枢性感作に関わる条件が強まります。

この意味で、末梢神経終末からの神経ペプチド放出は、中枢性感作そのものではなくても、その形成や維持に関わる入力条件の一部です。

▶︎ 中枢性感作と末梢性感作の違い

結論

神経ペプチドは、末梢の侵害受容性自由神経終末から放出され、局所の血管透過性、血管径、免疫反応、過敏性の変化に関わる分子です。

とくにサブスタンスPは血管透過性亢進や神経免疫相互作用、CGRPは血管拡張と強く関わり、神経原性炎症や末梢性感作を考えるうえで重要です。

また、軸索反射はその反応が局所で広がる仕組みを説明する概念であり、神経原性炎症とは分けて理解する必要があります。

慢性疼痛の臨床では、神経ペプチドを痛みそのものと混同せず、末梢神経終末の反応性、侵害受容入力の持続、中枢での処理変化とのつながりの中で位置づけることが重要です。

どのような入力がどのような末梢の反応と中枢処理を引き起こすかという視点で、介入方法自体を考える必要があります。

 


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