ニアーインピンジメントサインとは何か
ニアーインピンジメントサインは、整形外科医 Charles S. Neer の名に由来する肩の整形外科的テストです。
検査は、肩甲骨を固定したうえで、上肢を内旋させながら他動的に前方屈曲していく方法が一般的です。
肩甲骨の代償を抑えながら、肩関節の屈曲エンドレンジまで誘導します。前外側肩や上腕近位外側に痛みが再現されれば陽性とされます。
従来は、肩関節屈曲エンドレンジで肩前上方の組織へ負荷が加わることから、棘上筋腱、肩峰下滑液包、上腕二頭筋長頭腱、肩峰・烏口突起・烏口肩峰靭帯でつくられる肩前上方のアーチ構造が想定されてきました。
ただし、ニアーインピンジメントサインは特定の組織を直接みている検査ではありません。この検査で言えるのは、肩関節屈曲のエンドレンジで症状が再現または変化したということまでです。
肩甲上腕関節、肩鎖関節、関節包、腱板、滑液包、上腕二頭筋長頭腱、末梢神経など、複数の要素が症状に関与する可能性があります。
そのため、陽性であっても、それだけで棘上筋損傷、肩峰下滑液包炎、肩峰下インピンジメント症候群を確定することはできません。
ニアーインピンジメントサインの診断精度をどう読むか
この論文では、肩峰下インピンジメント症候群に対する様々な臨床テストの診断精度が検討されています。
肩痛のある患者様を対象に、各検査がどの程度診断に役立つかが分析され、その中でニアーテストは感度79%、特異度53%と報告されています。
この数値からは、陰性であれば肩峰下痛症候群の可能性を下げる材料にはなる一方、陽性だけで病態を確定する力は強くないと読めます。
つまり、陽性所見があっても、それだけで腱板障害、肩峰下滑液包炎、肩峰下インピンジメント症候群を断定するのは適切ではありません。
ニアーインピンジメントサインは、肩関節屈曲で症状が再現されるかをみる負荷テストとして位置づけ、画像所見、症状分布、筋力、他の肩テストと合わせて解釈する必要があります。
Diagnostic Accuracy of Clinical Tests for Subacromial Impingement Syndrome
M. Alqunaee, M. Galvin, C. M. Fahey
ニアーインピンジメントサインを末梢神経の視点から再検討する
ニアーインピンジメントサインで再現される肩前外側から上腕近位外側の痛みは、腱板や肩峰下滑液包だけでなく、末梢神経の視点からも解釈できます。
特に肩甲上神経は、棘上筋・棘下筋と肩関節周囲の深部感覚に関わるため、肩関節屈曲時の深部痛、外旋筋力の低下、肩後上方の鈍痛を伴う場合に検討します。
また、肩外側から三角筋部にかけての違和感、しびれ感、接触過敏がある場合は、腋窩神経や外側上腕皮神経の関与も候補になります。
結論
ニアーインピンジメントサインは、肩関節屈曲エンドレンジで症状が再現されるかを確認する負荷テストです。
陽性であっても、棘上筋腱、肩峰下滑液包、上腕二頭筋長頭腱のいずれかを単独で確定する検査ではありません。
診断精度研究でも、感度に比べて特異度は高くなく、陽性所見だけで病態を絞り込む力には限界があります。
臨床では、肩関節屈曲で症状が増えるという所見を出発点にして、画像所見、症状分布、筋力低下、肩甲上神経や腋窩神経などの末梢神経の視点を合わせて解釈する必要があります。
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