筋皮神経絞扼障害とは何か|基本像を確認する
筋皮神経絞扼障害では、筋皮神経の走行や、その皮枝である外側前腕皮神経の領域に、痛みやしびれが生じます。
筋皮神経は上腕二頭筋、上腕筋、烏口腕筋を支配し、主に肘屈曲に関わります。
そのため、この神経の異常では、上腕前面の痛みや前腕外側のしびれだけでなく、肘屈曲で違和感が強まることがあります。
整形外科領域では、上腕前面痛や前腕外側のしびれは、頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアが原因だと考えられることが多く、筋皮神経絞扼障害は見落とされやすい傾向があります。
筋皮神経絞扼障害の研究知見|外側前腕皮神経障害は前腕外側の痛みやしびれの原因となる
この論文では、筋皮神経障害は運動、スポーツ、外傷、固定、手術のあとに生じることがあり、症状は頚椎神経根障害や腕神経叢障害と似ることがあると述べられています。
この症例では、手術後に腕の痛みやしびれ、筋力低下が出ており、電気診断では筋皮神経の障害が確認されています。
そのため、どの神経の障害なのかを見分けるには、画像検査や電気診断をあわせてみることが重要だとされています。
Musculocutaneous Neuropathy: Case Report and Discussion . Diana Besleaga, et al.
この研究では、外側前腕皮神経障害が、前腕外側の痛みやしびれを生じうる末梢神経障害として報告されています。
原因として術後、採血や点滴、外傷、反復使用などが挙げられており、医原性の刺激や前腕周囲への負荷も発症のきっかけとなっていました。
とくに、運動障害が目立たない一方で感覚症状がはっきりしている場合は、この神経障害を疑う意義があります。
筋皮神経絞扼障害はなぜ見落とされるのか|画像所見だけで原因は決められない
腕や手のしびれや痛みでは、頚椎の異常が疑われやすく、画像診断でも椎間板膨隆、椎間孔狭窄、頚椎椎間板ヘルニアなどが確認されます。
しかし、こうした構造変性と症状との相関性は高くなく、画像所見だけで上腕前面痛や前腕外側のしびれの原因を決めることはできません。
画像だけで判断すると、筋皮神経や外側前腕皮神経などの末梢神経由来の症状は候補から外れてしまいます。
上腕前面痛・前腕外側のしびれを末梢神経からどうみるか|筋皮神経と外側前腕皮神経の分布から読み直す
上腕前面痛・前腕外側のしびれを末梢神経からみるときに重要なのは、症状分布と動作による変化です。
上腕前面から肘窩付近までの痛みや、肘屈曲での力の入りにくさが目立つなら筋皮神経、前腕外側表層のしびれや感覚異常が中心なら外側前腕皮神経というように、分布を知ることで見立ては変わります。
さらに、肘屈曲の反復、荷物の長時間の保持、烏口腕筋周囲や肘窩近くの神経分布部位への圧迫で、痛みやしびれがどう変化するのかを確認することで、考慮すべき部位は絞られます。
筋皮神経は感覚だけでなく、上腕二頭筋、上腕筋、烏口腕筋の働きにも関わるため、痛みの分布だけでなく、筋出力の変化もあわせてみる必要があります。
結論
筋皮神経絞扼障害では、上腕前面痛や前腕外側のしびれを頚椎だけで説明すると見落としが生じます。
画像所見だけで判断せず、筋皮神経・外側前腕皮神経の分布、動作での変化、筋皮神経支配筋の反応をあわせてみることが重要です。
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