モルダーテストとは何か
モルダーテストは、前足部を横から圧迫しながら、症状のある趾間部に圧を加え、痛みやしびれ、クリック感が再現されるかをみる整形外科的テストです。
とくに第3〜4趾間で行われることが多く、前足部痛や足趾のしびれを訴える患者様、先の細い靴やハイヒールの使用、前足部への荷重増加、外反母趾やハンマートゥなどの足部形態が関係する患者様で用いられます。
文献では、モルダー徴候、モルダークリック、中足骨スクイーズテストなどの名称が近い意味で使われることがありますが、ここではモルダーテストとして扱います。
クリック感とは、前足部を圧迫したときに、施術者の指先で触知されるクリックを指します。
モルダーテストはどの末梢神経をみているのか
モルダーテストでまず考えるのは、趾間部を走る総足底趾神経です。
この検査は、前足部を横から圧迫しながら趾間部に機械的ストレスを加え、総足底趾神経が走る部位で痛みやしびれ、クリック感が再現されるかを確認します。
とくに第3〜4趾間では、第3総足底趾神経が関わることが多く、この神経は内側足底神経由来の枝として走行しながら、外側足底神経からの交通枝を受けることが知られています。
ただし、前足部の圧迫で痛みが出るのは、総足底趾神経の関与だけではありません。
趾間滑液包炎、蹠側板(しょくそくばん)損傷、MTP関節の滑膜炎などでも前足部痛は再現されるため、症状が出たことだけで、どの組織が今ある痛みの主な原因と考えられるのかを決めることはできません。
また、前足部で症状が出ていても、考える範囲を趾間部だけに限定する必要はありません。
内側足底神経、外側足底神経、脛骨神経、さらにその近位まで含めた連続した神経系としてみることで、症状分布をより広く評価できます。
症状が足底全体へ広がる、内果後方の違和感を伴う、荷重と無関係に続く、夜間痛や安静時痛が強いといった場合は、単純に趾間部だけの問題として扱わない視点も必要です。
モートン病の病理と画像所見をどう読むか
モートン病は名称としては神経腫と呼ばれますが、現在は真の腫瘍というより、繰り返される圧迫や刺激のなかで生じる線維性変化を伴った絞扼性の末梢神経障害として理解されています。
病理学的には、神経周囲や神経内部の結合組織の肥厚、神経周膜や神経上膜の線維化、神経線維の変性などが報告されています。
つまり、モートン病でみられているのは、神経そのものの腫瘍性増殖というより、神経周囲と神経内部の結合組織に変化を伴った慢性的な組織変化です。
ただし、こうした結合組織の肥厚や線維化が確認されたからといって、それだけで痛みの主な原因だと決められるわけではありません。
画像で神経腫様の所見があっても無症候のことがあり、所見の存在と症状の存在は一対一ではありません。
モルダーテストと画像所見・電気生理検査の関係
この論文では、モートン病の画像評価において、超音波はMRIより高い診断精度を示す可能性があると報告されています。
この点は、前足部痛を評価するうえで超音波が有用な選択肢になることを示しますが、画像所見だけで痛みの主な原因を決められるわけではありません。
モルダーテストの所見、痛みやしびれの部位、荷重や履物による変化とあわせて読むことで、画像所見の臨床的な意味を判断する必要があります。
The accuracy of ultrasonography and magnetic resonance imaging for the diagnosis of Morton's neuroma: a systematic review
Xu Z, Duan X, Yu X, Wang H, Dong X, Xiang Z
この論文では、症状のない70名の前足部のMRIを調べた結果、MRI上でモートン病と判断される所見が30%にみられたと報告されています。
また、趾間滑液包の液体貯留も第1〜3中足骨間で一定の割合でみられており、特に3mm以下の液体貯留は生理的所見として扱える可能性が示されています。
一方で、MRI上のモートン病の診断は、横径が5mm以上であり、かつ臨床所見と関連する場合に意味を持つ可能性があるとされています。
この結果は、MRIで神経腫様の所見や趾間滑液包の液体貯留がみえたとしても、それだけで痛みの主な原因を決められないことを示しています。
Morton neuromas and fluid in the intermetatarsal bursae on MR images of 70 asymptomatic volunteers
Zanetti M, Strehle JK, Kundert HP, Zollinger H, Hodler J
この論文では、モートン病の臨床検査を超音波所見と比較し、臨床評価は超音波検査と同等の精度を示したと報告されています。
特に、母指と示指で症状部位を挟む圧迫テストは感度96%、精度96%で、最も感度の高いスクリーニング検査とされています。
一方で、モルダークリックは感度61%、精度62%であり、陽性例では神経腫のサイズが大きい傾向も示されました。
Diagnostic Accuracy of Clinical Tests for Morton's Neuroma Compared With Ultrasonography
Mahadevan D, Venkatesan M, Bhatt R, Bhatia M
結論
モルダーテストは、前足部痛を総足底趾神経の関与から考えるための臨床所見です。
ただし、陽性所見はモートン病だけを示すものではなく、画像所見も痛みの主な原因を単独で示すものではありません。
そのため、この検査は診断を確定するためではなく、痛みやしびれの部位、クリック感、荷重や履物による変化、超音波やMRI所見を合わせて、前足部痛を多面的に評価するために用いる検査として位置づけられます。
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