半月板損傷とは何か|まず押さえたい基本像
半月板損傷は、整形外科領域でよくみられる疾患名です。
半月板は、膝関節で荷重分散や衝撃吸収に関わる線維性軟骨組織として説明されます。
臨床では、関節裂隙周囲の痛み、屈伸時痛、しゃがみ込みや立ち上がりでのつらさ、歩行や階段での違和感、引っかかり感として語られることが多く、ときに膝前面や内外側へ広がる不快感として認識されることもあります。
一般には、捻り動作、外傷、反復負荷、加齢変性、変形性膝関節症との併存などで説明され、運動療法、生活指導、物理療法、薬物療法、徒手療法などが選択されます。
また、明らかなロッキング、急激な腫脹、発熱、著明な外傷後疼痛、明らかな神経脱落症状がある場合は、保存的介入のみで進めず、医師の評価や画像検査を優先すべきです。
最近の研究からみた半月板損傷|いま押さえたい知見
半月板損傷では、近年も研究が続いています。
ここでは、無症状者にみられる半月板所見、変性半月板損傷に対する手術と運動療法の比較、長期経過という流れで、現在の研究を確認します。
半月板損傷は無症状者にも高頻度でみられる
まず重要なのは、MRIで半月板損傷が見つかっても、それだけで今ある痛みや機能障害を説明できるとは限らない点です。
この研究では、991人を対象に膝MRIが行われ、半月板所見は無症状者にも高頻度でみられ、年齢とともに増加することが示されました。
50〜59歳の女性で約19%、70〜90歳の男性では約53%に半月板損傷がみられ、さらに半月板損傷が確認された人の約61%は前の1か月に痛みを感じていませんでした。
この結果からは、半月板損傷という画像所見は一般的であり、とくに中高年では加齢変化の一部としてみられることが分かります。
そのため、MRI所見をそのまま現在の症状の原因と結びつけるのではなく、その所見が本当に今ある痛みと関係しているのかを慎重に考える必要があります。
Incidental meniscal findings on knee MRI in middle-aged and elderly persons.
Englund, et al.
変性半月板損傷では手術が常に優位とは限らない
次に重要なのは、変性半月板損傷に対して手術が常に第一選択になるわけではない点です。
運動療法と関節鏡下部分半月板切除術を比較した研究では、中年の変性半月板損傷に対して、まず運動療法を検討できることが示されています。
つまり、半月板に損傷があるという事実だけでは、すぐ手術が必要だとは言えません。
少なくとも、変性変化を背景にした半月板損傷では、症状の改善を考えるうえで運動療法が重要な選択肢になります。
Kise, et al.
また別の研究では、変性半月板損傷に対して理学療法と関節鏡下部分半月板切除術の5年後成績が比較されています。
その結果、患者報告による膝機能に関して、運動療法は手術に劣らないことが示されました。この結果からは、長期経過でみても、変性半月板損傷に対して手術が必ずしも優位ではないと理解できます。
したがって、画像で半月板損傷が確認されても、まず理学療法や運動療法を中心に考える妥当性があります。
Effect of Physical Therapy vs Arthroscopic Partial Meniscectomy in People With Degenerative Meniscal Tears: Five-Year Follow-up of the ESCAPE Randomized Clinical Trial
van de Graaf, et al.
疼痛科学からみた半月板損傷|中枢神経での処理も含めて考える
半月板損傷は、膝の局所所見だけで症状のすべてを説明できるとは限りません。
同じような半月板所見があっても、痛みの強さ、動作時のつらさ、不安定感の出方は一様ではありません。
これは、局所の組織変化だけでなく、膝からの侵害受容信号や感覚入力が中枢神経でどのように処理されているかによって、症状の出方が変わるためです。
そのため、半月板損傷をみるときも、画像所見だけで直線的に理解するのではなく、入力が中枢神経でどう意味づけられているのかまで含めて考える必要があります。
半月板損傷を末梢神経からどうみるか|分布から読み直す
ここで大切になるのが、末梢神経の視点です。
半月板損傷としてまとめられる訴えの中にも、関連神経の分布を踏まえた方が捉えやすいケースがあります。
膝前面から大腿前面へ連続する違和感や筋出力低下が目立つ場合は大腿神経、前大腿部の表層の痛みや接触過敏が強い場合は大腿神経の前皮枝、膝前内側から膝蓋骨下方の不快感や術後の過敏さが前景にある場合は伏在神経の膝蓋下枝、膝外側から大腿前外側へ広がる表層の違和感がある場合は外側大腿皮神経という見方が役立ちます。
膝内側や前内側に広がる症状では、伏在神経本幹やそこから分かれる膝蓋下枝を分けてみることで見え方が変わることがあります。
反対に、前面優位で筋力低下や動作時の不安感が強い場合には、大腿神経系の関与まで視野に入れた方が理解しやすいことがあります。
しびれ、接触過敏、放散感、筋出力低下の出方まで追うことで、半月板そのものだけをみているときには曖昧だった評価の焦点が絞られてきます。
画像上の半月板損傷があっても、症状分布が神経分布とより強く重なるなら、その解釈は分けて考える必要があります。
結論
半月板損傷をみる際には、診断名や画像所見をそのまま受け取るのではなく、研究知見を踏まえながら、しゃがみ込みや階段でどう悪化するのか、引っかかり感や不安感はどう出るのか、膝前内側や関節裂隙部から症状がどこに広がるのかを丁寧に読むことが重要です。
研究では、半月板損傷が無症状者にも高頻度でみられること、変性半月板損傷では運動療法が手術に劣らないことが示されています。
つまり、半月板損傷という名称やMRI所見だけで現在の症状を決めつけることはできません。
中枢神経での処理、末梢神経の状態と入力、症状分布の読み方まで含めて考えることで、膝の症状をより立体的に理解できます。
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