慢性疼痛に湿布は本当に必要なのか?長期使用のエビデンスを再検証する
慢性疼痛に対して湿布が処方されることは珍しくありません。
実際、数か月から数年にわたって湿布を使用し続けている症例も少なくありません。
しかし、その実践を支持するエビデンスはどの程度あるのでしょうか。
臨床では、湿布が慢性痛に有効であるという認識が広く浸透していますが、システマティックレビューを確認すると、見えてくる結論はやや異なります。
特に重要なのは、どの疾患を対象に、どの程度の期間で効果が検証されているのかという点です。
短期間の疼痛軽減を示す研究は存在しますが、数年単位の継続使用による有効性については、実はほとんど検証されていません。
湿布の効果は変形性関節症で主に検証されている
この論文では、外用NSAIDs(エヌセイズ/非ステロイド性抗炎症薬/湿布や塗り薬など)の有効性が確認されたのは、主に膝や手の変形性関節症でした。
慢性腰痛などその他の慢性筋骨格系疼痛に対する有効性は、十分に証明されていないと結論づけられています。
また、エビデンスの多くは6〜12週間までの短期間の研究に基づいており、長期使用を支持する根拠は依然として限られています。
Topical NSAIDs for chronic musculoskeletal pain in adults.
Derry S, Wiffen PJ, Kalso EA, et al.
湿布の鎮痛効果は期待されるほど大きくない
この論文では、局所用NSAIDsは変形性関節症に対して一定の有効性が示された一方で、効果量は小〜中等度にとどまり、劇的な症状改善を期待できるものではないと考えられます。
また、エビデンスの多くは変形性関節症を対象としており、その結果を慢性疼痛全般へ一般化することには慎重な解釈が必要です。
Relative efficacy and safety of topical non-steroidal anti-inflammatory drugs for osteoarthritis:
a systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials and observational studies.
Zeng C, Wei J, Persson MSM, et al.
湿布の長期使用を支持するエビデンスは乏しい
このシステマティックレビューでは、膝を中心とした変形性関節症を含む慢性筋骨格系疾患に対して局所用NSAIDsは短期間では一定の有効性を示したものの、多くの研究は2週間程度の短期間で、小規模な試験も少なくありませんでした。
そのため、慢性疼痛に対する長期使用を支持するエビデンスとしては十分ではなく、著者らもより大規模かつ長期間の研究が必要であると結論づけています。
Topical NSAIDs for chronic musculoskeletal pain: systematic review and meta-analysis.
Mason L, Moore RA, Edwards JE, et al.
慢性疼痛は湿布だけで改善できるほど単純ではない
この論文では、慢性疼痛は組織損傷や炎症だけで説明できるものではなく、痛みは身体を守るための防御反応として、生物学的・心理的・社会的要因が複雑に関与して生じると述べられています。
そのため、局所の炎症を抑える湿布だけで慢性疼痛を十分に改善できるとは考えにくく、疼痛管理では活動性や生活機能を含めた包括的なアプローチが重要であるとしています。
Fifteen Years of Explaining Pain: The Past, Present, and Future.
Moseley GL, Butler DS.
結論|慢性疼痛に対する湿布の長期使用は慎重に判断することが重要
現在のエビデンスでは、外用NSAIDsや湿布は主に、変形性関節症に対して短期間の疼痛緩和に一定の効果を示しています。
一方で、効果量は小〜中等度にとどまり、慢性腰痛などその他の慢性筋骨格系疼痛に対する有効性や、数か月から数年にわたる長期使用を支持する根拠は十分ではありません。
そのため、湿布を慢性疼痛管理の中心と考えるのではなく、症状緩和の一手段として位置づけながら、活動性や生活機能の改善を含めた包括的なアプローチを検討することが重要です。
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