徒手療法で何が変わるのかは時間軸で分けて考える
徒手療法を理論的に考えるときに重要なのは、施術直後に変わるものと、長い時間の中で変わるものを分けることです。
この区別が曖昧なままだと、その場の変化を骨格や筋膜、関節、結合組織の変化で説明してしまいます。
しかし、短時間で起こる変化と、長い時間をかけて進む構造の変化は同じではありません。
なお、ここで述べるのは日常的な保存的介入としての徒手療法であり、脱臼や骨折に対する整復のような外傷対応は含みません。
徒手療法でその場に変わるのは構造ではなく生理学である
徒手療法でその場に変化するのは、生理学的状態です。
組織間液、リンパ液、血流、筋活動、触覚入力や侵害受容信号に対する中枢神経系の処理、今ある痛みの変化などは、生理学的な変化として考える方が妥当です。
一方で、骨、関節、関節周囲の結合組織、筋膜、腱、靱帯、瘢痕組織、骨の配列といった解剖学的構造そのものが、一回の徒手療法で大きく変化したとみなすのは妥当ではありません。
施術直後の変化は循環と神経生理から考える
徒手療法のあとに、むくみが減る、動きやすくなる、緊張感が軽くなる、今ある痛みが減るといった変化がみられることがあります。
こうした変化を説明するなら、まず考えるべきなのは、組織間液、血流、リンパ液、筋活動、触覚入力やそれらに対する中枢神経系の処理の変化です。
とくに循環を末梢の血液やリンパだけで捉えるのでは不十分です。
中枢の変化による交感神経活動の出力変化は、皮膚や末梢の循環状態にも影響します。
筋の変化も構造変化ではなく出力変化として考える
筋肉についても、徒手療法でその場に変わるのは筋そのものの構造ではありません。
筋の硬さ、筋出力の変化、動かしにくさ、可動域の変化は、筋線維や筋膜の配列そのものが短時間で変わったというより、感覚入力や侵害受容入力の変化に対する中枢処理の変化、その結果としての運動出力の変化によるものと考える方が理論的に妥当です。
つまり、筋にみられるその場の変化も、解剖学ではなく生理学の側で理解する必要があります。
筋膜リリースや矯正をその場の構造変化で説明しない
筋膜リリースでは、筋膜が伸びた、癒着が剥がれたと説明されることがあります。
また、カイロプラクティックや矯正では、骨配列や関節配列が整った、ズレがハマったという説明が使われることがあります。
しかし、施術直後の変化をそのまま筋膜などの結合組織、骨、関節の再配列で説明するのは理論的な飛躍があります。
考えるべきなのは、神経への入力、循環の変化、感覚入力に対する中枢神経系の処理の変化、運動出力の変化という神経系の変化です。
結論
徒手療法によってその場で変わるのは、組織間液、リンパ液、血流、筋活動、触覚入力、侵害受容信号に対する中枢神経系の処理などの生理学的状態です。
可動域や今ある痛みが変化したとしても、それを直ちに骨、関節、関節周囲の結合組織、筋膜、腱、靱帯、瘢痕組織、骨配列のような解剖学的構造そのものの変化と結びつけることはできません。
構造変化を考えるなら、毎日の運動や日常動作のような長期的に反復される条件が必要です。
つまり、徒手療法の効果で考えるべきなのは、生理学的状態の変化です。
関連リンク

