リフトオフテストとは何か|肩甲下筋をみる肩の整形外科的テスト
リフトオフテストは、手の甲を腰部に当てた位置から、手を背中から離せるかを確認する整形外科的テストです。
一般的には、肩甲下筋腱の断裂や機能低下を疑う検査として用いられます。
検査では、患者様に手の甲を腰部に当ててもらい、その位置から手を背中から離してもらいます。自力で離せない、または離せても抵抗に耐えられない場合を陽性とします。
関連する検査には、ベアハグテスト、ベリープレステスト、ナポレオンテスト、内旋ラグサインがあります。
ベアハグテストは、患側の手を反対側の肩に置き、その手を肩から離さないように抵抗する検査です。
ベリープレステストは、手を腹部に当て、肘の位置を保ちながら腹部を押せるかを確認する検査です。
ナポレオンテストは、ベリープレステストの変法であり、腹部を押す際に手関節屈曲などの代償が出ていないかを確認する検査です。
内旋ラグサインは、手の甲を腰部に当てた状態から検者が手を背中から離し、その位置を保持できるかを確認する検査です。
これらはいずれも肩甲下筋に関連する内旋系テストですが、それぞれ肢位と負荷のかかり方が異なります。
ただし、これら検査は肩甲下筋腱だけを選択的に評価しているわけではありません。肩関節内旋、肩伸展、肩甲帯の位置、疼痛による筋出力の変化、代償運動が結果に影響します。
リフトオフテストと画像所見・診断精度をどう読むか
この論文では、肩甲下筋腱断裂に対する臨床テストの診断精度が検討されています。
13本の研究が対象となり、ベアハグテスト、ベリープレステスト、内旋ラグサイン、リフトオフテストの4つがメタアナリシスに含まれました。
結果として、4つの検査はいずれも特異度が0.90を超えていた一方、感度は0.60未満でした。
つまり、陽性であれば肩甲下筋腱断裂を疑う材料になりますが、陰性であっても断裂を否定する根拠にはなりにくいということです。
Diagnostic Accuracy of Clinical Tests for Subscapularis Tears
A Lädermann, P Collin, O Zbinden, T Meynard, M Saffarini, JC Chiu
下記論文では、肩痛を有する208名を対象に、腱板断裂に対する15種類の肩の整形外科的テストの診断精度が検討されています。
肩甲下筋腱断裂に関する検査では、リフトオフテスト、ベリープレステスト、ベアハグテストなどが評価されました。
結果として、肩甲下筋腱断裂に対する検査は、全体として特異度は高い一方、感度は低い傾向が示されています。
リフトオフテストは感度22%、特異度94%であり、陽性であれば肩甲下筋腱断裂を疑う材料になりますが、陰性でも断裂は否定できません。
The Diagnostic Accuracy of Special Tests for Rotator Cuff Tear
NB Jain, et al.
身体診察に関する別の研究では、肩甲下筋腱断裂に対する特殊テストを単独で読むのではなく、複数の検査を組み合わせて判断する重要性が示されています。
この研究では、ベアハグテスト、ベリープレステスト、リフトオフテスト、ナポレオンテスト、内旋ラグサインなどが検討されました。
ナポレオンテストは、ベリープレステストの変法であり、腹部を押す際に手関節屈曲などの代償が出ていないかを確認する検査です。
結果、ベアハグテストとベリープレステストの組み合わせが、肩甲下筋腱病変を評価するうえで有用とされています。
これは、リフトオフテストだけで肩甲下筋腱断裂を判断するのではなく、他の内旋系テスト、病歴、画像所見、筋力評価とあわせて読む必要があることを示しています。
Evidence-Based Physical Examination for the Diagnosis of Subscapularis Tears
A Dakkak, et al.
リフトオフテストを末梢神経の視点から再検討する
リフトオフテストを末梢神経の視点からみる場合、中心になるのは肩甲下筋を支配する肩甲下神経です。
肩甲下筋は、主に上肩甲下神経と下肩甲下神経から支配を受けます。
そのため、肩甲下筋腱に明らかな断裂がなくても、肩甲下神経を介した筋出力の変化があれば、内旋筋力低下やリフトオフテストの陽性として現れる可能性があります。
肩甲下神経は腕神経叢の後神経束から分かれます。
同じ後神経束からは胸背神経、腋窩神経、橈骨神経なども分かれるため、肩甲下筋だけでなく、大円筋、広背筋、三角筋、肩後方から上肢後面の症状も合わせて確認します。
ただし、リフトオフテストで神経を選び分けることはできません。
この検査で言えるのは、腰部後方の肢位で肩関節内旋機能がどの程度発揮されるかということまでです。
結論|リフトオフテストの臨床的な位置づけ
リフトオフテストは、肩甲下筋腱断裂を疑うための整形外科的テストです。
特異度は高い一方で感度は低いため、陽性所見は判断材料になりますが、陰性所見だけで断裂を否定することはできません。
検査結果は、画像所見、病歴、他の内旋系テスト、筋力評価、代償運動と合わせて読む必要があります。
また、肩甲下神経と腕神経叢後神経束の視点を加えることで、肩甲下筋腱だけに限定しない末梢神経への推論が可能になります。
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