外側大腿皮神経絞扼障害とは何か|基本像を確認する
外側大腿皮神経絞扼障害は、感覚異常性大腿痛(Meralgia Paresthetica)としても知られ、鼠径部から上前腸骨棘周囲を通過して大腿前外側〜外側に分布する皮神経の絞扼が関わる病態です。
整形外科領域では、大腿外側痛やしびれは腰椎由来の神経根症や股関節周囲の問題に由来すると考えられやすく、外側大腿皮神経絞扼障害は見落とされやすい傾向があります。
外側大腿皮神経は、大腿外側痛・しびれを皮神経という視点から考えるうえで重要です。
外側大腿皮神経絞扼障害の研究知見|前枝と後枝の絞扼は大腿外側痛の原因となる
外側大腿皮神経絞扼障害では、外側大腿皮神経の前枝と後枝の関与によって、大腿外側痛やしびれが生じます。
この論文では、感覚異常性大腿痛は外側大腿皮神経の絞扼によって生じる代表的な病態であり、前外側大腿の痛み、しびれ、灼熱感、感覚異常がある場合は、腰椎や股関節だけでなく、外側大腿皮神経障害を鑑別に入れる必要があることが示されています。
また、診断は症状分布や臨床像を中心に行い、保存療法を基本としつつ、難治例では局所注射や外科的減圧も選択肢になるとまとめられています。
この研究では、外側大腿皮神経ブロックは、感覚異常性大腿痛に対して診断と治療の両方に役立つ方法であり、超音波ガイド下で行うことで、解剖学的なばらつきがあっても正確に神経周囲へ注射しやすくなることが示されています。
10例すべてでブロックは成功し、低容量でも神経周囲への広がりが確認され、合併症も報告されませんでした。
症状分布が外側大腿皮神経に一致しているかを確認したうえで、このような方法が有効であれば、腰椎や股関節だけでは説明できない症状の読み方は変わります。
下記の研究では、感覚異常性大腿痛は外側大腿皮神経の圧迫によって生じる純感覚性の単神経障害であり、前外側大腿の痛み、しびれ、灼熱感、感覚異常をみたときには、まず外側大腿皮神経障害を臨床的に疑う必要があると述べています。
また、肥満、妊娠、糖尿病、衣類やベルトによる圧迫、術後など、外側大腿皮神経に負荷がかかる要因を広く鑑別に入れる必要があります。
以上のように、大腿外側の症状を腰椎や股関節だけで説明しようとすると、この病態は見落とされます。
外側大腿皮神経絞扼障害はなぜ見落とされるのか|画像所見だけで原因は決められない
大腿外側痛やしびれでは、腰椎の異常が疑われやすく、画像診断でも椎間板膨隆、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄などが確認されます。
しかし、脊柱の構造変性と痛みとの相関性は高くなく、画像所見だけで大腿外側痛やしびれの原因を決めることはできません。
そのため、構造異常だけを根拠にすると、皮神経などの末梢神経由来の症状は候補から外れてしまいます。
大腿外側痛・しびれを皮神経からどうみるか|前枝と後枝の分布から読み直す
大腿外側痛・しびれを皮神経からみるときに重要なのは、症状分布と動作による変化です。
前外側優位なら前枝、より外側から後外側の大転子寄りなら後枝というように、分布を知ることで考慮すべき神経枝は変わります。
さらに、立位保持、歩行、サイクリング、股関節伸展、鼠径部や上前腸骨棘周囲への圧迫で、痛みやしびれがどう変化するのかを確認することで、考慮すべき部位は絞られます。
結論
外側大腿皮神経絞扼障害は、大腿外側痛やしびれを腰椎由来の神経根症や股関節由来の痛みだけで理解していては捉えきれない病態です。
画像所見があることと、症状の原因がそこにあることは同義ではありません。
だからこそ、構造の変性だけで判断せず、外側大腿皮神経の前枝・後枝を含む皮神経の分布と動作での変化をあわせて評価する必要があります。
そこを評価に入れるかどうかで、大腿外側痛・しびれの見方は変わります。
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