ケンプテストとは何か|腰椎伸展回旋で何をみているのか
ケンプテストは、腰椎を伸展、側屈、回旋させて症状の変化をみる誘発テストです。
伸展回旋テストと呼ばれることもあり、一般的には立位または座位で腰椎を伸展し、同側へ側屈と回旋を加え、腰痛、殿部痛、下肢への放散症状が誘発されるかを確認します。
ただし、陽性所見の定義は一定していません。腰部の局所痛を陽性とする説明もあれば、殿部や下肢への放散症状まで含めて陽性とする説明もあります。
そのため、ケンプテストは名称のわりに、何を陽性とみなすのかが文献や教科書で揺れている検査です。教科書的には、腰椎の椎間関節痛や神経根症状をみる検査として説明されます。
たしかに、腰椎を伸展、側屈、回旋させることで、椎間関節、椎間孔、椎間板後方、周囲の靱帯や軟部組織には同時に負荷が加わります。しかし、この検査で負荷されるのは一つの組織ではありません。局所の腰痛が出たから椎間関節、下肢症状が出たから神経根、と単純には切り分けられません。
椎間関節痛を特定する検査としての根拠は強くなく、身体所見と変性所見の対応も限定的です。
ケンプテストに関する研究
この研究では、ケンプテストの陽性所見によって椎間関節痛を診断する力は低いとされています。
統合解析でも、50%を超えた診断精度指標は陰性的中率のみで、56.8%と59.9%にとどまりました。
つまり、陰性所見は椎間関節痛の可能性を少し下げる材料にはなりますが、陽性所見を椎間関節痛の証拠として扱うことはできません。
ケンプテストは、椎間関節痛を特定する検査ではなく、腰椎伸展・側屈・回旋で症状がどう変化するかをみる誘発テストとして扱うのが妥当です。
The diagnostic accuracy of the Kemp's test: a systematic review
Stuber K, Lerede C, Kristmanson K, Bruno P
この論文では、腰椎椎間関節が慢性腰痛の原因になり得る一方で、問診や身体診察だけでは椎間関節由来の痛みを確定できないと述べられています。
また、X線、MRI、CT、SPECTなどの画像検査は広く行われていますが、臨床症状や身体所見と脊椎の変性所見の対応は十分ではありません。
椎間関節の変性、関節症、関節裂隙の狭小化、骨棘、滑膜炎様の所見がみられても、それだけで今ある痛みの主因と判断することはできません。
この点は、ケンプテストの解釈にも直結します。
ケンプテストで腰痛や殿部痛が誘発され、画像で椎間関節変性がみられたとしても、その二つをそのまま結びつけて「椎間関節痛」と断定することはできません。
椎間関節由来の痛みをより強く疑う場合でも、論文では診断的ブロックが重要な手段として扱われています。
ただし、診断的ブロックにも偽陽性の問題があり、単回ブロックだけで確定的に扱うことには注意が必要です。
したがって、ケンプテストは椎間関節痛を決める検査ではなく、腰椎伸展・側屈・回旋で症状が変化するかを確認する誘発テストとして扱う必要があります。
Facet joint syndrome: from diagnosis to interventional management
Perolat R, Kastler A, Nicot B, Pellat JM, Tahon F, Attye A, Heck O, Boubagra K, Grand S, Krainik A
ケンプテストと画像所見は一致するのか
この研究では、椎間板変性、椎間板膨隆、椎間関節変性などの画像所見が、無症状者にも高頻度でみられることが示されています。
椎間板変性は20歳で37%、80歳で96%、椎間板膨隆は20歳で30%、80歳で84%、椎間関節変性は60歳で50%、80歳で83%にみられています。
そのため、ケンプテストで症状が誘発され、画像で変性所見が確認されても、それだけで椎間関節や椎間板を今ある痛みの主因とは判断できません。
画像所見は、患者様の症状、神経学的所見、動作での変化、重篤な病態の除外と合わせて読む必要があります。
Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations
Brinjikji W, Luetmer PH, Comstock B, Bresnahan BW, Chen LE, Deyo RA, Halabi S, Turner JA, Avins AL, James K, Wald JT, Kallmes DF, Jarvik JG
▶︎画像診断と痛みの関係|MRIやレントゲンの所見は本当に原因なのか
ケンプテストを末梢神経の視点から再検討する
ケンプテストは、神経根や末梢神経を単独で選び分ける検査ではありません。
それでも末梢神経の視点が必要なのは、誘発される腰痛、殿部痛、下肢症状が、腰椎由来の症状だけでなく、脊髄神経後枝やその皮神経の分布と重なってみえることがあるためです。
腰椎を伸展、側屈、回旋させると、多裂筋や脊柱起立筋群の収縮により、脊髄神経後枝や周囲組織に圧迫性の負荷が加わる可能性があります。
反対方向への側屈や回旋では、同じ神経系に伸張性のストレスが加わる可能性もあります。
腰部から殿部上外側の症状であれば、椎間関節や上位腰椎だけでなく、上殿皮神経や中殿皮神経を含む殿皮神経障害も鑑別に入ります。
そのため、末梢神経の分布、圧痛や接触での変化、持続姿勢、歩行、座位、前屈や股関節動作との関係を追加して考える必要があります。
ケンプテストは症状の出方を確認する材料にはなりますが、神経根障害、椎間関節痛、末梢神経障害のいずれかを単独で確定する検査としては扱えません。
結論
ケンプテストは、腰椎伸展、側屈、回旋で症状がどう変化するかを確認する誘発テストです。
椎間関節痛や神経根症状を疑う場面で用いられますが、陽性所見だけで椎間関節や神経根を特定することはできません。
研究上も診断精度は高くなく、画像で変性所見があっても、それだけで今ある痛みの主因とは判断できません。
ケンプテストで誘発される症状には、椎間関節、椎間孔周囲、神経根、脊髄神経後枝、多裂筋や脊柱起立筋群、上殿皮神経や中殿皮神経などが関与している可能性があります。
そのため、ケンプテストは原因を決める検査ではなく、どの方向への負荷で症状が変化するのかを確認し、次に何を疑うかを考える材料として位置づけるのが妥当です。
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