視床下部とは何か|慢性疼痛と自律神経の調節機構から紐解く

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視床下部とは何か|恒常性維持を統合する重要な皮質下構造の解剖生理学

視床下部は、間脳の腹側に位置し、視床の下方に隣接する極めて小さな灰白質構造であり、体内環境を一定に保つホメオスタシス調整に重要な役割を果たす中枢とされてきました。

自律神経系の総合的な制御や、下垂体を介したホルモン系の調整、体温調節、摂食や概日リズム、睡眠覚醒リズムの管理など、生存に直結する機能を網羅的に担っています。

一部領域では血液脳関門が特殊な構造をしており、末梢からの血流情報などをダイレクトに感知する独自の機構を持ち、全身の器官へ向けて適切な指令を出力しています。

情動やストレスの処理を行う回路とも密接な双方向性の結びつきを持ち、生体が直面する環境変化に対して、身体の反応を迅速に最適化する役割は中枢神経系において非常に重要です。

視床下部の脳内ネットワークにおける役割|慢性疼痛におけるホメオスタシス機能変化

視床下部は、デフォルトモードネットワークやサリエンスネットワークといった大規模回路と皮質下で協調し、ストレスへの対抗や恒常性維持に関与する皮質下構造の一つとして位置づけされています。

持続的な侵害入力に伴い、視床下部から下垂体、副腎へと至るホルモン分泌システム(HPA軸)の制御異常や、ストレス管理機能の調整異常が報告されており、これにより一部の慢性疼痛状態ではサリエンスネットワークの過剰駆動や自律神経活動の不安定化につながる可能性が示唆されています。

一部の予測処理モデルの観点からは、視床下部に関連するネットワークの機能変化は、予測と実際の信号との間に生じる予測エラーの確信度を不適切に高める要因になると考えられています。

ここでいう確信度とは、脳が予測と実際のズレをどれほど重要と判断するかという指標を意味します。

このエラーによって不適切な判定が下されることが、身体の反応として慢性的な不快感を維持する一因となり得ると考えられています。

慢性疼痛時における視床下部の変化と画像研究の限界

機能画像研究から得られた客観的な知見を紹介します。

この論文では、線維筋痛症患者様24名を対象としたfMRI(機能的磁気共鳴画像法)解析により、自律神経や内分泌系を司る視床下部内側部と、視床および扁桃体(大脳辺縁系)との間の機能的・効果的結合性が著しく低下していることを明らかにしています。

また、12週間の太極拳介入後にこれらの結合性が回復し臨床症状が改善したことから、間脳と大辺縁系を結ぶ神経ネットワークの相互作用の失調が、線維筋痛症の病態に深く関与している可能性を示しています。

Altered functional connectivity between hypothalamus and limbic system in fibromyalgia
Jian Kong, Yiting Huang, Jiao Liu, Siyi Yu, Cheng Ming, Helen Chen, Georgia Wilson, William F. Harvey.

この論文では、慢性疼痛患者様が様々なストレスに対して症状を悪化させる「ストレス不耐性」の病態背景について、生体恒常性を司る視床下部を起点とした2つの主要なストレス応答システム(視床下部—下垂体—副腎軸(HPA軸)および自律神経系)の機能不全が深く関与していることを提示しています。

具体的には、慢性疼痛患者様において、ベースライン時の一過性な高コルチゾール血症や交感神経の緊張状態に続き、長期的なストレス曝露の結果としてHPA軸や自律神経系が疲弊し、ストレスに対する応答性が著しく低下する「低反応性(鈍麻)」が生じていることを指摘しています。

さらに、これらのストレス応答システムの調節には、カテコールアミン代謝酵素や糖質コルチコイド受容体に関わる遺伝子多型、およびDNAメチル化などのエピジェネティクス(後天的遺伝子制御)による変調が中枢のコントロールセンターである視床下部の機能失調の根底に存在し、持続的な痛みや疲労といったストレス不耐性の症状を形成している可能性を包括的に説明しています。

The Biology of Stress Intolerance in Patients with Chronic Pain State of the Art and Future Directions
Arne Wyns, Jolien Hendrix, Astrid Lahousse, Elke De Bruyne, Jo Nijs, Lode Godderis, and Andrea Polli

結論|慢性疼痛における視床下部の臨床的な位置づけと末梢神経へのアプローチ

視床下部周辺の客観的な画像変化は、それ単体で痛みの主因を断定する根拠にはなりません。

慢性疼痛時における視床下部関連ネットワークの機能異常は、持続的な自律神経の緊張を招き、結果として脳内の脅威予測の暴走を反映している可能性があります。

アプローチにおいて、過剰な侵害入力負荷を軽減することは、過活動に陥ったストレス管理システムやホルモン分泌系への過剰な入力を減らす意図として重要と考えられます。

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