ゲンスレンテストとは何か|整形外科的テストを吟味する

整形外科的テストDNM
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ゲンスレンテストとは何か|仙腸関節周囲の疼痛誘発テスト

ゲンスレンテストは、整形外科医 Frederick Julius Gaenslen の名前に由来する整形外科的テストです。

一般的には背臥位でベッド端に位置し、検査側の下肢をベッド外へ下ろして股関節を伸展方向へ誘導します。

反対側の股関節と膝関節は屈曲し、膝を胸に近づけるように保持します。

この肢位により骨盤帯に前後方向のねじれストレスが加わり、仙腸関節周囲、殿部、鼠径部、股関節前面などに、痛みや痺れなどの症状が再現されるかをみます。

一般的にはベッド外へ下ろした伸展側を検査側として扱いますが、実際には屈曲側と伸展側の両方に負荷が加わります。

ゲンスレンテスト陽性だけで仙腸関節を特定したとは言えず、骨盤帯、股関節前面、鼠径部、殿部にかけての複合的な負荷で症状が再現されたと読む必要があります。

仙腸関節痛と画像所見はどこまで一致するのか

この論文では、症候性の仙腸関節変性をCTで判断できるかが検討されています。

仙腸関節痛と診断された群と、慢性腰痛や腰部手術歴のない対照群を比較した結果、仙腸関節変性の程度に明確な差はありませんでした。

また、片側に痛みがある場合でも、痛みのある側と反対側のCT所見に明確な差は示されませんでした。

このことから、CTで仙腸関節変性がみられても、それだけで今ある痛みの原因とは判断できません。

ゲンスレンテスト陽性と画像所見をそのまま結びつけて、「仙腸関節が原因」と断定するのは言いすぎです。

Is CT indicated in diagnosing sacroiliac joint degeneration?

J. Bäcklund, E. Clewett Dahl, M. Skorpil

この論文は、徒手療法で仙腸関節の位置が変わるのかを検討しています。

結果として、徒手療法後に症状や検査所見が変化しても、仙骨と腸骨の位置変化は確認されませんでした。

この結果は、徒手療法の効果を「仙腸関節の位置を戻した」「骨盤の歪みを矯正した」と説明することの限界を示しています。

ゲンスレンテスト陽性が徒手療法後に変化したとしても、それを関節位置の変化として説明するのではなく、疼痛感受性、神経系の反応や変化として読む方が妥当です。

Manipulation does not alter the position of the sacroiliac joint.

Tullberg T, Blomberg S, Branth B, Johnsson R

▶︎骨盤の歪みとは何か

▶︎画像診断と痛みの関係とは

ゲンスレンテストの診断精度をどう読むか

ゲンスレンテスト単独を主役にした質の高い研究は多くありません。

この論文では、仙腸関節ブロックを基準として、仙腸関節障害に対する徒手検査の診断精度を検討しています。

ゲンスレンテスト単独では、感度61.5%、特異度33.3%と報告されています。この数値では、ゲンスレンテスト陽性を仙腸関節痛の根拠として扱うことはできません。

とくに特異度33.3%という結果は、仙腸関節痛ではないケースでも陽性になりやすいことを示しています。

Accuracy of the Diagnostic Tests of Sacroiliac Joint Dysfunction

Nejati P, et al.

このシステマティックレビューでは、仙腸関節の疼痛誘発テスト群が、仙腸関節痛をどこまで判別できるかを検討しています。

仙腸関節痛の有病率を20%と仮定した場合、疼痛誘発テスト群が陽性でも、仙腸関節痛を正しく同定できる確率は35%にとどまるとされています。

一方で、陰性の場合は仙腸関節痛である確率が8%まで下がると計算されています。

これは有病率20%を前提にした推定ですが、陽性所見で仙腸関節痛を確定する力は弱く、陰性所見で可能性を下げる方向に使う方が臨床的です。

したがって、ゲンスレンテストを含む仙腸関節疼痛誘発テスト群は、仙腸関節痛を決める検査ではなく、骨盤帯への負荷で症状が再現されるかを確認し、可能性を調整する検査群として扱う必要があります。

Diagnostic Accuracy of Clusters of Pain Provocation Tests for Detecting Sacroiliac Joint Pain: A Systematic Review With Meta-analysis

Tania Saueressig, Mark J. Stanton, Matthew J. Hopper, Michael J. Hancock, James H. McAuley

ゲンスレンテストを末梢神経の視点から再検討する

ゲンスレンテストを末梢神経の視点からみると、屈曲側と伸展側で負荷のかかり方を分けて考える必要があります。

股関節の屈曲側では、殿部中央から仙腸関節周囲に症状が出ることがあります。この場合、仙腸関節だけでなく、中殿皮神経を含む殿部の皮神経分布も考える必要があります。

また、殿部痛や大腿後面症状、殿筋群の出力変化がみられる場合は、坐骨神経だけでなく、上殿神経や下殿神経の関与も含めて考える必要があります。

一方で、ベッド外へ下ろした伸展側では、股関節前面から鼠径部前面にかけて伸張性の負荷が加わります。

このとき、大腿神経、外側大腿皮神経、腸骨鼠径神経、陰部大腿神経、閉鎖神経など、鼠径部周囲を通過する末梢神経にも伸張性のストレスが加わる可能性があります。

▶︎殿皮神経障害とは何か

▶︎坐骨神経とは

▶︎大腿神経とは

結論|ゲンスレンテストの臨床的な位置づけ

ゲンスレンテストは、仙腸関節周囲を含む骨盤帯の疼痛誘発テストとしては使えますが、単独で原因と考えられる組織を確定することはできません。

画像所見と今ある痛みの関連は強くなく、診断精度研究でも単独テストの限界が示されています。

また、疼痛誘発テスト群としてみても、陽性所見だけで仙腸関節痛を確定できるわけではありません。

そのため、ゲンスレンテストは仙腸関節痛や骨盤の歪みを証明する検査ではなく、屈曲側の殿部神経、伸展側の鼠径部周囲の末梢神経、股関節前面組織を含めて、骨盤帯周囲の症状を整理する手がかりとして位置づけるのが適切です。

▶︎ 整形外科的テストを吟味するとは何か


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